今年、2023年のWord of the Yearは「authentic」「rizz」「hallucinate」

今年、日本の流行語大賞に選ばれたのは、プロ野球の阪神タイガースが優勝する際に飛び交ったことば「アレ(A.R.E.)」でした。それでは英語は?Merriam-Webster、Oxford、Cambridge Dictionaryが選んだ「Word of the Year」を、それぞれ見ていきましょう。

Merriam-Websterが選んだ今年の単語は「authentic」

参考:Word of the Year 2023(https://www.merriam-webster.com/wordplay/word-of-the-year)

Merriam-Websterは、2023年の「Word of the Year」に「authentic」(本物の、正真正銘の)を選出しました。この単語は、AI、セレブリティー文化、アイデンティティー、ソーシャルメディアに関するストーリーや会話により、大幅な検索回数の増加を見せました。

Amidst the rise of AI and celebrity culture, the public craves authentic interactions, leading to a surge in discussions about what it means to be truly genuine in today’s digital world.
AIやセレブリティー文化の台頭に伴い、一般の人々は本物の交流を求めており、現代のデジタル世界における真の本質的な存在とは何かについての議論が急増しています。

他に注目された単語として、「rizz」(インターネットスラングで「ロマンティックな魅力」を意味する)、「deepfake」(誤認を招くように改ざんされた画像や録音)、「coronation」(新しい英国の君主、チャールズ三世の戴冠たいかん式)、「dystopian」(ディストピア的な、すなわち暗い将来を描く)を挙げました。

また、「EGOT」(エミー賞、グラミー賞、オスカー賞、トニー賞の頭文字で、その全て受賞したことを指す言葉)、「X」(Elon MuskによるTwitterの再ブランディングに関連して注目された)、「implode」(水中での圧力により内側から破裂すること)、「doppelgänger」(他人に非常に似ている人)、「covenant」(フォーマルで厳粛な合意または約束を意味する)、「indict」(法的に罪を問うこと)、「elemental」(基本的な要素を指す。ピクサーの映画『Elemental』(邦題は『マイ・エレメント』のタイトルに使用された)、「kibbutz」(イスラエルの共同農場や集落)、「deadname」(性転換後に使用されなくなった出生時の名前)も、2023年によく調べられた語として挙げられました。

Oxford Languagesは「rizz」を選出

参考:Oxford Word of the Year 2023(https://languages.oup.com/word-of-the-year/2023/)

2023年のオックスフォードの「Word of the Year」は「rizz」に決定しました。この単語は、個人の魅力や他者を引き付ける能力を意味し、「charisma」(カリスマ)の中間部分から派生した言葉です。この単語が使用される頻度は2023年に大幅に増加しました。

Ever since he started his new job, John has been showing off his rizz with confidence, charming everyone in the office with his charismatic style.
新しい仕事を初めてから、ジョンは自信を持って自分のrizzを発揮し、カリスマ的なスタイルで職場の人々を魅了しています。

また、「rizz」は動詞としても使用され、「rizz up」(誰かを魅了する)というフレーズで使われることがあります。

After watching TikTok videos on rizzing up, she revamped her profile, drawing more attention.
TikTokのrizz upに関する動画を見た後、彼女はプロフィールを改善し、より多くの注目を集めた。

また、最終候補として選ばれた他の単語には、「prompt」(AIプログラムやアルゴリズムに与えられる指示)、「situationship」(友達以上恋人未満の関係を指す)、そして「Swiftie」(歌手テイラー・スウィフトの熱心なファン)があります。

さらに、「beige flag」(パートナーや潜在的なパートナーが退屈であることを示す特徴)、「de-influencing」(特定の商品の購入を控えるよう人々に奨励する行為)、「heat dome」(特定の地域に停滞した高気圧が、熱い空気を閉じ込める気象配置)、および「parasocial」(ファンやフォロワーが一方的に有名人と親密な関係を感じることを指す)がショートリストに選出されました。

Cambridge Dictionaryが選んだのは「hallucinate」

参考:Cambridge Dictionary names ‘Hallucinate’ Word of the Year 2023(https://www.cam.ac.uk/research/news/cambridge-dictionary-names-hallucinate-word-of-the-year-2023)

Cambridge Dictionaryは、2023年の「Word of the Year」として「hallucinate」を選出しました。この選出は、AIに関連する多くのアップデートの一部として行われました。

「hallucinate」の従来の定義は、「存在しないものを見たり、聞いたり、感じたりすること」で、通常は健康状態や薬物の影響によるものです。しかし、AIツール、特に大規模な言語モデル(LLMs)を使用するツールは、しばしば偽の情報や誤解を招く情報を「hallucinate」するとされています。このため、Cambridge Dictionaryは、AIが人間らしい言葉を生成する際に「偽の情報を生産する」ことを示す新しい定義を加えました。

The AI system, despite its advanced language capabilities, hallucinated and produced false information.
高度な言語能力を持つにも関わらず、AIシステムは誤情報を生成した。

また、Cambridge Dictionaryは、2023年に6000以上の新しい単語、フレーズ、意味を追加しました。これには「prompt engineering」(AIから望ましい出力を得るために、指示や命令を設計、最適化するスキル)、「large language model」(非常に巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された言語モデル)「GenAI」(生成AI、generative AIのこと)、「train」(機械学習において、データを供給しシステムやプロセスのコンピューター表現を作成または改善すること)、「black box」(AIが持つ「判断の根拠が分からない」という性質のこと)などのAIおよびコンピューティングに関連する単語が含まれています。

さらに、「shadowban」(ソーシャルメディア企業がユーザーの投稿の可視性を制限する行為、特にユーザー自身がそれを知らない場合)、「vibe check」(誰かの気持ちや場所の雰囲気を感じ取る行為)、「water neutral」(製品に使った量と同じ量の水を自然に還元する活動)、「pick up what someone is putting down」(誰かの言葉、音楽などから意味を理解すること)、「Affrilachian」(アメリカ東部のアパラチア地域出身または居住するアフリカ系アメリカ人)、「range anxiety」(電気自動車が目的地までのバッテリー充電量が不足することへの不安)、「UBI」(universal basic incomeの略で、政府または他の組織によって定期的に全員または成人全員に与えられる一定額のお金)なども追加されました。

山本高裕
文:山本高裕(ENGLISH JOURNAL編集部)

高校の英語教師を経て、今は編集者として、ときに写真家として活動中。

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