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気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に真魚八重子さんが解説します。
今月の1本
『アフター・ヤン』(原題:After Yang)をご紹介します。
※動画が見られない場合は YouTube のページでご覧ください。
「テクノ」と呼ばれる人型ロボットが一般家庭にまで普及した未来世界。茶葉の販売店を営むジェイク(コリン・ファレル)、妻のカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、中国系の養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)は、つつましくも幸せな日々を送っていた。しかし家庭用ロボットのヤン(ジャスティン・H・ミン)が故障で動かなくなり、本当の兄のように慕っていたミカはふさぎ込んでしまう。修理を模索するジェイクは、ヤンの体内に1日ごとに数秒間の動画を撮影できるパーツが組み込まれていることを発見。そのメモリバンクに保存された映像には、ジェイクの家族に向けられたヤンの温かなまなざし、そしてヤンが巡り会った素性不明の若い女性の姿が記録されていた・・・
AI が普及した近未来、ある一家とロボットの間に結ばれた絆
『ミッドサマー』(2019)など独創的な作品を手掛ける映画会社A24。同社が新たに製作したのが本作だ。監督は長編デビュー作の『コロンバス』(2017)で注目を集めたコゴナダが務め、オリジナルテーマ曲を坂本龍一が提供している。
見た目は人間と区別のつかない人型ロボットが普及した未来。茶葉を取り扱う店を経営するジェイク(コリン・ファレル)と、会社勤めで忙しいカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)の夫婦には、中国系の養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)がいる。夫妻はミカのために、兄のような役割をする中国人型ロボットのヤン(ジャスティン・H・ミン)と同居し、穏やかな生活を送っていた。
しかしある日、ヤンが故障してしまった。修理のために奔走するジェイクだが、ロボットは壊れたら新しい機種を買うのが当たり前になっており、ヤンの修復も難しい。ミカはヤンの不在で落ち込んでしまう。保存メモリだけでもなんとか取り出そうとするジェイクは、ヤンの体内に1日数秒の映像が録画できる特殊なパーツがあったことを知る。
たとえAIロボットであっても、その人に独特の個性を感じて何かしら好意的な感情を持っていたのなら、やはりその死に対しては、喪に服す期間が必要なのではないだろうか。悲しみ、いとおしみ、もはや新たな言葉を交わすことはないと覚悟する。これからは大事な記憶だけと共に生きていくことになるという心の整理をつける時間。
ヤンのメモリに残る映像の何げなさは、逆にそのはかなさが美しくて非常にリアルだ。きっとわれわれも走馬灯のように脳裏に駆け巡るのは、人生の劇的な瞬間ではなく、本当になんでもない日常の断片のような気がする。AIであっても家族や初恋の人を慈しむ気持ちを持っていたら、もはや単に「ロボット」と割り切れるだろうか?
『アフター・ヤン』公式サイト
Cast & Staff 監督:コゴナダ/出演:コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン他/10月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他 全国公開/配給:キノフィルムズ
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※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年11月号に掲載した記事を再編集したものです。
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