今月の1本
『L.A. コールドケース』(原題:City of Lies)をご紹介します。
※動画が見られない場合はYouTubeのページでご覧ください。
ロサンゼルス市警の元刑事ラッセル・プール(ジョニー・デップ)は、彼にとって最大の事件、90年代の伝説的なヒップホップラッパーである“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”殺人事件を解決できずにいた。事件発生から18年たってもなお犯人は特定されず、謎に満ちていた。一方、独自に事件を追う記者、ジャック・ジャクソン(フォレスト・ウィテカー)はなぜラッセルがこの事件に執着しているのか、そこから捜査が進まない原因を突き止めようとする。さらにラッセルはノトーリアスの事件への警察官の関与を疑い始める。そして、ラッセルとジャックは複雑に絡む事件の真相に迫っていくが……。
伝説的な2人のラッパー射殺事件の闇に迫る
この10年ほどの間に、有名ラッパーを扱った映画が何本か撮られている。そのどれもに登場し悪名をとどろかせているのがシュグ・ナイトだ。ヒップホップレーベル「デス・ロウ・レコード」の設立者であり、実質的にはギャングスターと言えるだろう。
90年代にアメリカを震撼させた、ヒップホップ界の2大スターである“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”が射殺された事件は、結局犯人は見つからず未解決のままだが、この2件に関与していると根強くうわさされているのがシュグ・ナイトである。本作は、この2件のコールドケース(未解決犯罪)となった事件の解決に全力を注いだ刑事の実話を基にしている。
1997年に起こったノトーリアス・B.I.G.の暗殺事件。その担当刑事はロサンゼルス市警察署のラッセル・プール(ジョニー・デップ)だった。18年後のある日、彼の元に当時の回顧記事を担当する記者、ジャック・ジャクソン(フォレスト・ウィテカー)が訪れる。ラッセルはこの事件に執着するあまり、警察署内からも疎まれ辞職していた。ラッセルは当時、ノトーリアス・B.I.G.の暗殺事件にロス市警の警察官たちが関与していたことを疑い、捜査の核心に迫っていた。それなのに未解決で終わってしまった理由を、ラッセルはジャックに語っていく。この事件には複数の人物が関わっている。動機は金であったり、ヒップホップ界への傾倒であったりするのだが、なぜこれだけ関係者の名前が挙がりながらも犯人逮捕に至らなかったか。そこには絶望的なまでに巨大な闇が関与していた。本作でジョニー・デップは真面目な刑事であったが、真相に近づきながらも阻まれて絶望した男を演じる。彼は孤独な世捨て人のように暮らしているが、熱心な記者であるジャックに対して徐々に信頼を寄せていく。職業倫理とはなんなのか、正義の組織の歯車がなぜ狂っていくのか、見つめ直さずにいられない映画だ。
『L.A. コールドケース』(原題:City of Lies)
Cast & Staff
監督:ブラッド・ファーマン/出演:ジョニー・デップ、フォレスト・ウィテカー、トビー・ハス、デイトン・キャリー他/公開中/配給:キノフィルムズ
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※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年9月号に掲載した記事を再編集したものです。
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