ダース・ベイダーがAIになり、ブルース・ウィリスもAIになる【多読ニュース】

「英語多読ニュース」。今回は、AI技術により俳優が「永遠の命」を得るというニュースを取り上げます。

ダース・ベイダーの声は永遠に今のままに?

皆さんはダース・ベイダーの声を担当している俳優さんをご存じでしょうか。ジェームズ・アール・ジョーンズというアメリカの俳優で、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)から40年以上にわたり、誰もが知る悪役の声を務めてきました。そんな彼が御年91歳で引退することに。

でも、彼の声は引退しません。AIが彼の声を学習して引き継ぐのだそうです。

Jones, who is 91, has been actively working with Lucasfilm and Ukrainian company Respeecher on using AI to take his Darth Vader voice and keep it alive through machine learning, according to the Vanity Fair report. Respeecher's tech was used in the Disney Plus show Obi-Wan Kenobi to help re-create Jones' Darth Vader voice and in The Book of Boba Fett to re-create a young Like Skywalker's voice.

「ヴァニティ・フェア」 の記事によると、91歳のジョーンズは、ルーカスフィルムおよびウクライナの企業リスピーチャー と積極的に協力しており、AIを使用してダース・ベイダーの声を録り、機械学習を通じてその声を生かし続けます。リスピーチャーの技術はディズニープラスの番組「オビ=ワン・ケノービ」で、ジョーンズのダース・ベイダーの声を再現するのに使用され、「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」では、若い頃のルーク・スカイウォーカーの声を再現するのに使用されました。

ダース・ベイダーの声が変わらないことを喜ぶ人もいる一方、そうではない人もいるでしょう。

While there’s something to be said about preserving Vader’s voice, Disney’s decision to use an AI to do so is likely to add fuel to disagreements over how such technology should be used in creative fields. For instance, Getty Images recently banned AI-generated art over copyright concerns. With Jones, there's the possibility we could hear him voice Vader long after he passes away.

ベイダーの声を保存することについてはいろいろな意見があるだろうが、そのためにAIを使用するというディズニーの決定は、同様のテクノロジーをクリエイティブ分野でどのように使用すべきかについて、意見の対立が大きくなる可能性があります。例えばゲッティ・イメージズは先日、著作権問題を理由にAIが生成したアートを禁止しました。ジョーンズの場合、彼の死後もベイダーの声が聞ける可能性があるわけです。

デジタルで再生した俳優が銀幕を飾る

先の記事が出た数日後、似たようなニュースが出ました。2022年3月に失語症のために俳優を引退する発表をしたブルース・ウィリスは、自身の「顔」を複製する権利をディープフェイク技術を扱うアメリカ企業ディープケイクに売却しました。どういうことかというと、AIの技術により複製されたウィリスが今後、デジタルでスクリーンに復帰する可能性があるのです。

While movies have used deepfake technology to create digital versions of actors before, Bruce Willis has become one of the first actors to formally sell the rights to his own AI-generated recreation in perpetuity. The actor has partnered with Deepcake, a company specializing in artificial intelligence that will create Willis’ digital twin, who will appear in films after his retirement due to the cognitive disorder, which affects a person’s ability to communicate.

以前にもディープフェイク技術を使用して俳優のデジタル版を作成した映画はありました。しかしブルース・ウィリスは、彼自身をAIが生成する権利を永久に正式に販売した最初の俳優の1人となりました。ウィリスは、彼のデジタルツインを作成することになる人工知能を専門とする企業ディープケイクと提携しました。これによってウィリスは、人のコミュニケーション能力に影響を与える認知障害により引退した後も、映画に出演することになります。

(追記)別のニュースでは、ウィリスのエージェントが権利を販売したことを否定したとのことです。

The Hollywood Reporter clarified that Willis did not sell his likeness rights to Deepcake. Rather, Deepcake says it "hired" a digital twin of the star. Willis or his estate will need to sign off on future use of his likeness.

『ハリウッド・リポーター』が明らかにしたところによると、ウィリスは自身の肖像権をディープケイクに販売していないとのこと。そうではなく、ディープケイクによれば、彼のデジタルツインを「雇った」のであり、ウィリスまたは彼の管理団体は、彼の肖像を将来的に使用することにおいては契約を結ぶ必要がある。

日本のアニメで昔懐かしい声といえば、例えば古いところではルパン三世の声を長年担当し、1995年に他界した山田康雄さん。山田さんの声はその後、彼の物まねが有名だった栗田貫一さんが担当しました。ドラえもんは一定世代より上の人にとっては、いまだに大山のぶ代さんの声だったりします。AIの技術を使えば、もしかしたらそんな声も「複製」できるようになるかもしれません。

また、ディープフェイク技術を使えば、今は大半の場合、代役がモーションキャプチャーで演じる必要があるものの、そのうちAIだけで動きもその人らしく再現できるようになるかもしれません。例えば、先日亡くなったばかりのアントニオ猪木さんが、ジャイアント馬場さんとリアルにプロレスの試合をする、なんていうことも、技術的にはできるようになったりするのかもしれません。ただ、故人や遺族の意思とは関係なくなんでも可能になってしまうのは、さまざまな倫理に反することでしょう。今後、何かしらの規制が生まれてくる可能性は高いですね。

山本高裕
文:山本高裕

高校の英語教師を経て、今は編集者として、ときに写真家として活動中。どちらかというと、赤い鼻を押したら自分のコピーができるコピーロボット(『パーマン』に出てきた!)が欲しいです。

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