人気のインフルエンサーや著名人などは過去に投稿した発言や行動が問題視されて、炎上する事件がたびたび発生します。『ハリー・ポッター』シリーズで知られるイギリスの作家J.K.ローリングは昨年、「反トランスジェンダー的」な発言をしたとSNSなどで話題になりました。今回は関連の表現、cancel cultureを取り上げます。
今回のニュースな英語
cancel culture今回取り上げるニュースな英語は、「cancel culture」です。「キャンセル」も「カルチャー」もどちらも日本語にもなっているなじみ深い単語ですが、でも「キャンセル・カルチャー」っていったいなんなのでしょうか?
キャンセル・カルチャーとは?
「cancel culture」というフレーズは、ここ数年でかなり目にするようになりました。マッコーリー英英辞典では、2019年の単語に選ばれています。
www.macquariedictionary.com.auそして最近も、再び話題になりました。というのも7月7日、J.K.ローリングさんを含む著名人153人が連名で署名した公開書簡が、雑誌ハーパーズ・バザーに掲載されたからです。
harpers.orgA Letter on Justice and Open Debate上記のタイトルの手紙で、内容は、昨今は間違いを犯したり炎上したりすると、いとも簡単に切り捨てられてしまう(芸能人なら番組から下ろされる、会社幹部なら職を追われるなど)ために、自由主義社会にとって必要不可欠である、情報やアイデアの自由な交換が難しくなっている、と訴えています。公平性とオープンな議論についての書簡
公開書簡の中で、「cancel culture」という表現は直接的には使われていませんが、多くのメディアは、「cancel culture」を批判したものとしてこの手紙を紹介しています。
では、「cancel culture」とは一体何なのでしょうか?
著名人などが ソーシャルメディア(SNS)で炎上したり、過去の問題発言や行動が掘り起こされたりしたとき、その人物を排除しようとする動き を指しています。それまでは好きだったもの・人だけど、もう好きじゃない、キャンセルする、という意味です。対象は人だけに限らず、企業であったり、ブランドであったり。いわば、「ボイコット」です。
どんなふうに使われている?
アメリカの大手日刊紙USAトゥデイは7月17日、こんなタイトルの記事を掲載しました。
Twitter's cancel culture: A force for good or a digital witchhunt? The answer is complicated.www.usatoday.comツイッターのキャンセル・カルチャー:善を促進する力か、はたまたデジタルの魔女狩りか?答えは複雑。
USAトゥデイはその中で、#MeToo運動(性被害を告白・共有したり告発したりする動き)や#Oscarssowhite(アカデミー賞で白人ばかりが優遇される現状を否定する動き)などの例を挙げ、これまでキャンセル・カルチャーがツイッター上で重要な対話を生み出したことは否定できない、としています。とはいえ、言論の自由があるので、自分の意見は言えるべきだ、という声も記事の中で紹介されています。さらに、
But the strength of cancel culture can also ravage careers and lives.と述べて、USAトゥデイは、度が過ぎるキャンセル・カルチャーを警告しています。また、ツイッター・ユーザーが正確な情報や背景を知らずに、まるで裁判官や陪審員のような役をしてしまう危険性がある、とも同紙は 指摘 しています。しかしキャンセル・カルチャーの力は、人のキャリアや命を奪う 可能性 さえある。
まとめ
これまで、「cancel culture」により「キャンセル」されたものには、著名人に限らず、会社、ブランドなどがありました。コメディアンの差別的な発言が 原因 で、その人が司会をしていた番組が文字どおりキャンセル(放送打ち切り)されたケースもありました。
「cancel culture」の意味は、炎上発言などを きっかけ に、SNSなどで「You are cancelled.」(あんたなんかもう用無し)と切り捨てられるところから来ています。「ボイコット」と覚えておけば、わかりやすいかもしれません。
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文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
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