若手登用を進める上でも重要なマネジメント(管理職)研修。大企業なら研修会社に一括依頼できるかもしれませんが、大きな 予算 を確保できない企業ではどんな研修ができるでしょうか?異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタント、ロッシェル・カップさんに、コストは低いが効果は高い方法を教えてもらいましょう。
コストが低く効果的な管理職研修の方法は?
私は、いわゆる中小企業の人事部で働いています。
最近、人材育成の観点から、若手の管理職登用を進めることになりました。しかし、これまで社員向け研修をほぼまったく行ってきておらず、いきなり20~30代の社員を管理職に登用するという状況になってしまっています。以前は研修がなくても、社員をもっとゆっくりと管理職に移行させていたので、大きな混乱はありませんでした。しかし今は、新たに管理職になった社員やその部下となった社員から戸惑いの声も上がっています。
あまり余裕のない中小企業でも実践できる方策はありますでしょうか?
カップさんからの回答
まずここで強調しておきたいことは、部下を持った経験のない社員を管理職ポストに新たに配置する際の教育の必要性を、質問者の方が十分意識しているということです。これは非常に重要なことです。
確かに、何の教育もなしにいきなり管理職になるのは大変なだけでなく、仕事で大きな失敗につながる危険性も高いですよね。ご 指摘 の通り、部下を困らせてしまう状況を作り出してしまうでしょう。だからといって、高いお金を払ってコースに参加するという選択肢は中小企業にとって難しいのもよく分かります。
しかし幸運なことに、お金をそれほど使わずにできるマネジメント・トレーニング方法は実際に存在します。幾つか紹介しましょう。
書籍で学ぶ
マネジメント方法やリーダーシップに関する良い本は山ほどあります。読書は、手頃な値段で学習できる非常に 有効 な方法です。
役立つ本が世の中には無数にあります。自社の社風に合うものを選ぶのが理想的ですが、特に私がおすすめしたいのは、古典といえるクーゼスとポズナー著 『リーダーシップ・チャレンジ』 と 『信頼のリーダーシップ』 です。また、手前みそですが、私の 『ソフト・マネジメントスキル―こころをつかむ部下指導法』 と 『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』 も推薦したいです。
しかし人事部の担当者としては、社員に本を渡して「読め!」と言うだけでは足りません。この方法を最大限に生かしたいのなら、本を読み終えた後、本の内容について他の人とディスカッションをする機会を設けましょう。そうすることで、自分だけでは気付かなかった新たな発見が得られるはずです。
もう一つのアイデアとして、会社で最近管理職になった人、あるいは全ての管理職が参加する「ブッククラブ(読書会)」活動を始めるのもおすすめです。方法は、毎月、参加者が興味を持てる1冊を指定して、各自で読んでもらいます。どの本を選ぶかは、人事部か社長が決めるといいでしょう。そして月末に、読んだ人たちで集まって本についてディスカッションをしてもらいます。これを毎月、継続して行うのです。本の購入費は会社持ちにするのがいいでしょう。
動画で学ぶ
良質な無料の学習教材の一つとしてよく挙げられる、TED Talks(TEDトーク)の動画。 Ted.com にはリーダーシップ関連の動画も多くそろっており、そのほとんどに日本語字幕が付けられています。例えば、 「What it takes to be a great leader」 や 「How great leaders inspire action」 は特におすすめです。
TED動画の内容は特に質が良いですが、それ以外にもインターネットで探せばさまざまな動画が出てきます。自社のニーズに合うものをきっと見つけられるでしょう。
動画も本のように、ただ「見てください」と言うのではなく、見た人を集めてディスカッションをしてもらうとより良い効果が期待できます。この際、「ブッククラブ」ならぬ「動画クラブ」を立ち上げてみてはいかがでしょうか。
オンラインコースで学ぶ
最近、インターネットがあれば学べるオンラインコースが増えてきています。オンラインコースの特長は、本や動画と同じように、どこにいても使えるという点です。コースの形にまとまっているので、深くテーマを掘り下げられるという利点もあります。
検索すればさまざまなコースを見つけることができます。例えば、Udemyには 「上司1年生~はじめての部下を持った時、上司がするべきこと」 という管理職向けコースがあり、日経ビジネススクールには 「実践リーダーシップ入門」 というコースがあります。私も 「チームの成果を高めるサーバントリーダーシップ」 というオンラインコースを作りました。
メンターリングを行う
「メンター(mentor)」は「特に仕事上の場面で信用のおける助言者または教師」と定義されています。また、「メンティー(mentee)」は「メンターのアドバイスや指導を受ける人」を指します。このメンターとメンティーの関係は、日本で言うところの先輩と後輩の関係に似ています。先輩と後輩の関係と同様、メンターとメンティーの関係は自然に発生することがよくあります。しかし、この関係が生み出す利益に注目する多くのアメリカ企業は、「メンターリング(mentoring)」のプログラムを正式に作り、 実施 しています。
会社でメンターリング・プログラムを 実施する ためには、新しい管理職と経験の長い管理職のペアを組むことから始めます。そして、その2人が定期的(例えば月2回)に会うようセッティングし、経験の長い管理職が経験の 少ない 管理職にアドバイスをします。
協力 する">他の会社と 協力 する
自社だけで研修会社に依頼してトレーニングセミナーを行うのが経済的に難しくても、他の会社(同じ地域の、あるいは同じ業界の)となら可能かもしれません。例えば、1つの研修を依頼する際に、同じ研修を受けたい5社と 協力 して各社から数人ずつの社員に研修を受けさせるようにすれば、研修費用を5社で分けて支払うことができ、経済的です。こういったことに 協力 的な研修会社は多いので、研修を依頼したいと思っている他社と 協力 することで、自社だけでは不可能なことも実現できる 可能性 が高まります。
こういったアイデアを使って、新しい管理職をぜひ積極的にサポートしてください!
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。
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