
気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に真魚八重子さんが解説します。
今月の1本
『パブリック 図書館の奇跡』(原題:The Public)をご紹介します。
図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)が、常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる―「今夜は帰らない、ここを占拠する」。大寒波の 影響 で路上の凍死者が続出しているのに、緊急シェルターが満杯というのがその理由だった。ホームレスたちの苦境を察したスチュアートは、出入り口を封鎖して彼らと行動を共にする。それは平和的なデモだったが、イメージアップをもくろむ検察官の 主張 などによって、スチュアートは心に問題を抱えた容疑者に仕立てられてしまう・・・。
図書館を占拠したホームレスたちと図書館員の行動が奇跡を起こす
『セント・エルモス・ファイアー』(1985)や『ブレックファスト・クラブ』(1985)などの出演作で知られるエミリオ・エステベスが、製作・監督・脚本・主演を務めた作品。貧困や更生の問題をハートウォーミングに描いている。
アメリカ、オハイオ州シンシナティにある公共図書館で働く、おとなしくて真面目なスチュアート(エミリオ・エステベス)。その日も出勤すると、屋根のある場所を求めるホームレスたちがトイレで朝の身支度をしている。この冬は大寒波でホームレスの路上死が増えており、彼らはスチュアートに、今夜図書館を占拠すると告げる。それは政府が 手配 する緊急シェルターの数が足りていないことへのデモ行為・・・となるはずだった。
ホームレスたちの危機感を理解したスチュアートはその晩、立てこもった彼らと行動を共にする。だがホームレスたちによるデモは、政治的なイメージアップをもくろむ検察官によって利用され、スチュアートが人質を取って立てこもった危険人物であると認定されてしまう。メディアも真実を追求しようとせず、面白おかしくセンセーショナルな報道が先走る。やがて警察の機動隊が出動し、追い詰められたスチュアートとホームレスたちは最後の手段に出る。
エステベスの、控えめな中年男を演じる抑えた芝居が、なんとも味があり好印象を残す。スチュアートと関わる女性も2人登場するのだが、片方は恋人で、もう1人はあくまで親しい 同僚 でありながら、同じだけの存在感が配分されている。恋愛に重きを置かない設定が、物珍しく心地よい。
本作ではホームレスになる理由として、現在成立している社会の 仕組み になじめずに逸脱してしまう者はどうしても現れるし、必ずしも誰もがルールに順応できるわけではないことを示唆する。たまたまルールに乗れた人々が回す経済の中で、そこから漏れてしまう存在に対する意識を喚起させる映画だ。
『パブリック 図書館の奇跡』(原題:The Public)

Staff ">Cast & Staff
製作・監督・脚本・主演:エミリオ・エステベス/出演:アレック・ボールドウィン、テイラー・シリングほか/ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開中/配給:ロングライド
ライター&コラムニスト。著書に『あたしたちの未来はきっと』(タバブックス)、『インナー・シティ・ブルース』(スペースシャワーブックス)、『文化系のためのヒップホップ入門3』(アルテスパブリッシング)など。
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年9月号に掲載した記事を再編集したものです。
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