英会話は、簡単なフレーズでも相手と仲良くなれる!日本にある法人向けの高級アパートメントで外国人滞在客のコンシェルジュをしているKayo(重盛佳世)さんが、楽しいエピソードとイラストと共に、幅広く使える英語フレーズを紹介します。国内の企業で活躍後、40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、英会話本を出版したKayoさんのとっておきのコツがいっぱい。第2回は「ルールやマナーを伝える」です。
ごみの分別をしてもらえない!
日本人の生活で、私たちにとっては「当たり前」のことでも、海外の人からするとスゴイことっていっぱいあるんです。
例えば、室内外、どこに行っても 清潔でごみが落ちていない こと、きちんと 順番を守る こと、 交通機関が時間通り に運行すること、 落とし物が見つかる ことなど。
また、自然に相手を思いやる気持ちや行動は日本ならではで、そのマナーは世界でも高い評価を得ています。
ビジネスに携わる外国人が滞在するアパートメントで私が働き出したころ、当時の 一番大きな問題が、滞在者の「ごみの捨て方」 でした。
ごみ に関して は各フロアに「ごみ庫」があり、24時間、いつでも 捨てる ことができます。ごみ庫には、この地区の分別ルールにより、 7種類 のごみ箱が設置されています。 ちなみに 、その7種類はこちらの通り。
可燃ごみ:Combustible Waste [Burnable Waste]それぞれのごみ箱には、これらの日本語と英語を表記したプレートが貼られていました。不燃ごみ:Incombustible Waste [Non- Burnable Waste]
新聞・雑誌・段ボール:Newspapers / Magazines / Cardboard
ペットボトル:PET Plastic Bottles
瓶:Bottles
缶:Cans
スプレー缶/カセットボンベ:Spray Cans / Cassette Gas Cylinders
この7種類のごみの分別は、日本では普通でも、他の国でここまできちんと分別している場合は 少ない もの。いくら海外のエリートであれ、これには頭を悩ませていたらしく、分別をきちんとできる人はあまりいませんでした。
ごみの再仕分けが本来の業務の妨げに
滞在者のごみの捨て方がルールに沿っていないため、私たちコンシェルジュが朝と夕方の2回、ごみ庫を巡視して、ぐちゃぐちゃに捨てられたごみを分別していました。
あるときは「不燃ごみ」用のごみ箱に残飯入りのコンビニ弁当のケースや空き缶、ペットボトル、女性の生理用品などが一緒になって捨てられており、それらを分別しながら情けなくなりました。
他にも、ごみの分別が面倒な滞在者がさまざまなごみを1袋にまとめ、それをごみ庫の入ったところに放置していたことも。
これらのごみの分別にかなりの時間を費やしていました。
私たちコンシェルジュの仕事は、朝出勤して、指定の場所を巡視して、最後にごみ庫のチェックをしてから、フロントデスクに入ります。でも、ごみ庫がひどいときには、その 分別で時間を取られ、メインのフロント業務に就くまでに30分以上もかかった りしていました。
一目瞭然のルール提示方法を実行
当時、滞在者にごみの捨て方を通知する方法としては、各部屋に置かれた『入居マニュアル』の中に、家電などの説明書と一緒に、「ごみの分別に ご協力 ください」として、地域の区役所が発行している英語版のごみ分別資料が挟まれているだけでした。そして、ごみ庫の各ごみ箱に「可燃ごみ」「不燃ごみ」「瓶」「缶」などとプレートが貼られているだけ。
これだけの通知と掲示で7種類のごみの分別を海外の人にお願いするのは、無理があると思いました。
とにかく、自分の仕事の中で、あの ごみの分別 作業 をなくしたい !そして、その分早くフロントデスクに就いて、朝、出掛けていく人たちに気持ち良いあいさつをして、送り出してあげたい!と思った私は、会社側に次のような提案をし、実行しました。
作戦1
まず、ごみ庫の各ごみ箱に付いていたプレートの表記に、 具体的な イラストを加えました。例えば、「可燃ごみ」といってもさまざまなので、「生ごみ、プラスチック、ゴム・革製品、子どものおむつ」などのイラストを。また、「不燃ごみ」には「ハンガー・傘、壊れたガラス・瀬戸物、電池、カミソリ」など。
そして、それぞれの捨て方で注意してもらいたいことも表記しました。
作戦2
各部屋に設置されている『入居マニュアル』の中のごみの捨て方のページに、ごみ庫の表記と同じイラスト付きの表を加えました。
さらに、各部屋の、使用頻度の高いキッチンの大きなごみ箱のふたに、「可燃ごみ」のイラスト入りのPOPを貼り付けました。
このように、 そもそも ごみの分別は、ごみ庫ではなく、「ごみが出る場所」=「部屋の中」で分からなければ意味がない!と考えて、各部屋で分かるようにしたのです。
滞在者のごみの捨て方が変わった!
上記の変更をすると、どうでしょう!今までとはうそのように、 ごみ庫での分別が徹底されていった のです。
やはり、それまでの情報提示の仕方が親切ではなく、滞在者も理解できなかったのでしょう。また、分別ごみの具体例を、イラストを使って表現することにより、理解されやすくなったと思います。まさに「百聞は一見に如かず」(Seeing is believing.)です。
この大幅な 改善 の後には、今まで目立たなかったものも見えてきました。
例えば、「ペットボトル」用のごみ箱に、洗剤やシャンプー、食品などの「プラスチックの空ボトル」が入っていたり、「段ボール」用のごみ箱に、靴や洋服、菓子などの「空箱」が入っていたり・・・。
分別しようという気持ちは分かるのですが、残念ながら違っているのです。そんなときには、プラスアルファの表記をするようになりました。
分かりづらい点は丁寧かつシンプルに説明
プラスアルファとして、「ペットボトル」のところには、次のように注記しました。
PET PLASTIC BOTTLES ONLY! (Bottles with PET recycling mark .)「段ボール」のところには、次のように示しました。(PETのリサイクルマークの付いた)ペットボトルのみ!
Please place “plastic items” in Combustible Waste!
「プラスチック製品」は「可燃ごみ」に入れてください!
Please place empty containers ( for food, clothing, etc.) in Combustible Waste!そうやって、一つ一つ丁寧に知らせていったおかげで、今ではごみ庫で分別する時間も格段に減り、 すぐに フロントデスクに就いて、出勤する方々に笑顔であいさつできる ようになりました。(食べ物や衣類など)空箱は「可燃ごみ」に入れてください!
そもそも 、日本にやって来る外国人は、日本が好きな人がほとんどですから、日本で行われているマナーやルールはできる限り守ろうとしてくれると思います。ただ、 こちら側の告知 不足 のために、決まりなどを理解できず破ってしまう ことも多々あります。
私の仕事でも、滞在者のミスばかりに着目するのではなく、私たちが相手の立場になって ご理解 いただけるよう努力せねばと、いろいろ試行錯誤しています。
ごみ捨てにまつわる英語表現
ごみを「 捨てる 」という言い方をまとめて確認しておきましょう。
一般的な「 捨てる 」は、 throw away です。
Please throw away the rubbish there.カジュアルな感じで、 put も使われます。そこのごみを捨てておいてください。
Can you put this in the bin?「放る・放り 捨てる 」という乱暴な感じの場合は、 chuck が使われます。これはスラングです。これ、ごみ箱に捨ててくれない?
He chucked the can over the fence.「ごみを出す・ 捨てる 」は、 put out 、 take out を使います。彼はその缶を塀の向こうへ放り捨てた。
I put out a lot of rubbish yesterday.「処分する・ 処理する 」は、 dispose of 。フォーマルな表現です。昨日、大量のごみを捨てました。
She disposed of her shoes and bags.ついでに、 「不法投棄する」は、 dump と言います。彼女は靴やバッグを処分した。
The company dumped rubbish illegally.「ごみ」を表す単語にもいろいろあるので、まとめておきましょう。その会社はごみを不法投棄した。
garbage :アメリカ英語。特にキッチンの小さな生ごみ。trash :アメリカ英語。生ごみ以外のごみ。
rubbish :イギリス英語。生ごみも大きいごみも含む。
litter :イギリス英語。紙ごみ、菓子の包み、たばこの吸い殻など、道路に捨ててあるようなごみ。
waste : 廃棄 物。「可燃ごみ」を表すcombustible waste、burnable wasteなどでも使う。
ルールを伝える際のお役立ちフレーズ
海外の人がルールを知らずに禁止されていることをしているのを見掛けたときには、こちらから教えてあげたいものです。
郷に入れば郷に従え(When in Rome, do as the Romans do.)ということわざがあるように、日本にいるのだから、日本のルールを守ってほしい!そんなときのシンプルで便利な声掛けフレーズを紹介します。
駅のホームやタクシー乗り場、チケット売り場、レジなどで、列の割り込みをされたときはこう言えます。
Excuse me. No cutting in!美術館や他の施設内、寺や神社の境内などで、展示品を触っている人がいたら、こう伝えてみましょう。ちょっと、割り込みは駄目ですよ!
Don’t touch the exhibits!寺や神社、宿泊所などで、畳の部屋に靴を履いたまま上がろうとしている人を見掛けたら、この表現が使えます。展示品に手を触れては駄目ですよ!
No shoes, please!新幹線の座席や美術館、映画館など、携帯電話が禁止されている場所で通話している人がいたら、声を掛けてみてください。土足厳禁ですよ!
Please don’t talk on the train.これらの例のように、注意するときには、 「名詞」には no を、 「動詞」にはdon’t を付ければ伝わります。車内での通話はお控えください。
先日、ニューヨーク支社勤務の経験がある、英語がペラペラの友人と話をしていたときのことです。「外国人に注意するときに、どんな英語表現を使うか?」という話になりました。
友人に、「『 土足厳禁 』はどう言う?」と尋ねてみたところ、「土足ってどういう英語だっけ?」と詰まってしまいました。そこで私が、「 No shoes.で伝わる んだよ!」と言ったら、「確かに~!」と納得していました。
そうなのです。英語は難しく考え過ぎてしまうと、言葉が詰まって、なかなか話せなくなってしまいます。そのため、自分が知っている範囲で伝えればいいのです(自分の英語力が完璧になったら話そう、と思っていたら、いつになっても話せません)。
極端に言ってしまえば、単語だけでも伝わります。要は相手に伝えようという思いがあれば、相手も理解してくれます。
ただ、今回のように相手のマナーを注意するときには、 no やdon’tだけだと強い表現になってしまうので、 最初にExcuse me, と言ったり、 最初か終わりにplease を付け加えることをおすすめします。
そして、相手がやめてくれたら、次の一言を返すと、相手も気持ちよく受け取ってくれます!
Thank you for your understanding.ご理解 ありがとうございます。
Kayoさんの本
▼「道案内」や「外国人とのちょっとしたコミュニケーション」ができるようになる一冊。中学レベルの短いフレーズでOK!「日常のあるあるシーン」から英語を楽しく学べます。オリンピック・パラリンピックを前に、ぜひ!
- 作者: 重盛 佳世
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/04/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
文・2点目イラスト:Kayo(重盛佳世/しげもり かよ)
40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、現地での生活に引かれて、その後も滞在を繰り返す。その間、語学学校での学習を自分流にまとめた英会話本「 アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』 」シリーズを出しながら、 同時に 現地のガイドブック作りにも励み、電子書籍で出版。現在は執筆の傍ら、日本で外国人向けアパートメントのコンシェルジュとしても活躍中。