編集部注:この絵は記事とは関係ありません。
「英語多読ニュース」(3月27日号)。今回取り上げるのは、調査で本来は別の色だったことが分かった、ゴッホの絵画に関するニュースです。
19世紀のオランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。今では世界中の美術館に彼の作品が収蔵され、知らない人はいない画家の一人です。そして、彼の生涯についてはさまざまなところで語られていますが、死後130年近くたった今年、また新たな事実が発見されたそうです。
今回明らかになったのは、1890年の作品「オーヴェルのオワーズ川」に描かれた、「コーヒーの染みのような色」の空についてでした。
A Van Gogh watercolour that appears to show a midday scene of the French countryside under a dreary sky is something markedly more exciting, conservators at Tate Britain have discovered.“markedly more exciting”な発見とは、いったいどんなものなのでしょう。陰鬱(いんうつ)な空の下、フランスの田舎での日中風景を描いたと思われるファン・ゴッホの水彩画は、見た目以上にずっと刺激的なものであると、テート・ブリテン(イギリス、ロンドンにある美術館)の保存修復管理者たちが発見した。
The true colour of Van Gogh’s sky and river in The Oise at Auvers is not a coffee- stain brown but a vivid pink, ...www.theguardian.com「オーヴェルのオワーズ川」のファン・ゴッホの空と川の本来の色は、コーヒーの染みのような茶色ではなく、鮮やかなピンクなのだ。
上の記事で、問題となる絵画の今の色と、デジタル技術で「修復」した本来の色を比較することができます。見てみると、本来の色では確かに、空と川は夕方の鮮やかなサーモンピンクになっています。
もともとの色がピンクであることは、ファン・ゴッホ本人の手紙からも裏付けられるとのこと。
The discovery fits in with observations Van Gogh was making in letters from around the time, including one in which he wrote “… I have seen the whole sky coloured pink and bright orange.”しかし、そんな鮮やかな色がなぜくすんだ茶色になってしまったのでしょうか?この発見は、当時、ファン・ゴッホが書いた手紙にある描写にも合致する。一通の手紙で彼は次のように書いている。「…空全体がピンクや明るいオレンジ色に染まるのを見ました」。
The paint has faded because Van Gogh, virtually penniless his entire life, used a cheap pigment of pink paint.死後に作品の値段が高騰したゴッホですが、生前はとても貧しかったことで有名です。さすがに顔料の経年変化を 予測 することなど、できなかったに違いありません変色した顔料から、元の色を解析・表現できる現代技術に 感謝 です。生涯を通じてほぼ一文なしだったファン・ゴッホは、ピンク色に安い顔料を使ったため色があせてしまったのだ。
ところでゴッホは、37歳で亡くなる直前の数カ月しかオーヴェルという村に滞在していませんでしたが、その間、彼は1日1枚絵を描いたそうです。この画家の生前の謎は、まだまだどこかに残されているかもしれませんね。
文:山本高裕(GOTCHA! 編集部)
高校の英語教師を経て、今は編集者として、ときに写真家として活動中。好きな絵画はテート・ブリテンに作品が多数収蔵されている、ロマン主義の画家、ウィリアム・ターナーです。