文の構造を取り違えないように注意!コンマの前後関係に着目する問題【難問クイズで学ぶ文法知識⑮】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第15回はコンマの前後関係がカギとなる問題です。

クイズ

History as the course of events was conceived by Acton as progress towards liberty, history as the record of those events as progress towards the understanding of liberty: the two processes advanced side by side.

-E.H. Carr What Is History?

文脈:以前にも取り上げたE.H.カーの What Is History?からです。歴史を「進歩、前進」としてみなす思想について論じている章からの抜粋で、イギリスの歴史家ジョン・アクトンの考え方を紹介しています。

下線部のhistoryは何に当たる?

(1) 主語
(2) 目的語
(3) 補語
(4) いずれでもない

単語・語句

  • conceive A as B:「AをBだと思う、考える」
  • side by side:「(横に)並んで、一緒に」

ヒント

コンマ(,)の前と後ろがどういう関係になっているかに注意しよう。

つまずきポイント

後半の特殊な構造に気づかないと、大きく構造を取り違えてしまうかも。

まずは、前半部を見ていきましょう。主語はHistoryでそれをas the course of events「出来事の経緯としての」という前置詞句が修飾し、その後にwas conceivedという述語動詞が出てくる形です。述語動詞の部分は、was conceived by Acton as progress…となっていることから、conceived A as Bが受動態となり、A was conceived as B「AはBだと考えられた」という構造になったものであることをしっかりと捉えましょう。by Actonは能動態であれば主語の位置にくる情報で「考えた」主体を表現しています。つまり、前半部の意味は「出来事の経緯としての歴史はアクトンによって自由に向けての進歩であると考えられた」というものになります。

続いて、後半のコンマ(,)の後に目を向けましょう。コンマ(,)の直後にhistoryという名詞があり、その後には動詞的な働きをするものがないため、historyはコンマ(,)の前にあるlibertyやprogressといった名詞と並列されているのではないか、と考えてしまいがちです。しかし、ここで、少し視野を広げ、history as the record of those eventsというところまでを一塊として考えると、この形が前半部の主語であるHistory as the course of eventsに非常に似ているということに気づくのではないかと思います。もし、history as the record of those eventsが前半の主語と対になっているのだとすれば、その後に続く形も前半と対になっていると考えるのが自然です。

ところが、後ろにはwas conceivedのような動詞に相当する形が見当たりません。では、前半と後半が全体で対になっているという考え方は成り立たないのでしょうか。ここで、英語において類似した構造の節が並列される場合、後ろの節で共通要素が省略されることがあるというルールを思い出すことができたかどうかがポイントです。

このルールを今回の問題文に当てはめるならば、後半でも前半と共通するwas conceived by Actonという表現が用いられているために、その部分が以下のように省略されているのではないかと解釈することが可能です。

そうすると、as the record… as progress~のようにasの従える前置詞句が2つ連続するというやや違和感のある形も、後ろのas progress…はconceived asのasであると判断できるため、納得することができます。よって、コンマ(,)以下の後半は、history as the record of those events was conceived by Acton as progress towards the understanding of liberty「それらの出来事の記録としての歴史はアクトンによって自由の理解にむけての進歩だと考えられた」という完全な形から、was conceived by Actonが省略されたものということだと解釈でき、下線部のhistoryはwas conceivedの主語に当たるというのが正解ということになります。なお、下の訳例では日本語の通りのよさを重視し、語順を保ちつつ能動態に相当する訳し方をしています。

正解 (1)

出来事の経過としての歴史をアクトンは自由に向けて進歩のだと考え、そういった出来事の記録としての歴史を自由の理解に向けての進歩だと考えた。これら二つのプロセスは並んで進行していくものだった。

前回までのクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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