英語が納得できなくても丸暗記で大丈夫か、という人へのアドバイス

英語がイヤでも、苦手でも、とにかく、ひたすらたくさん勉強すればできる!と信じていませんか?そんなあなたにおすすめなのが、連載「イングリッシュ・ドクター 西澤ロイの英語お悩み診療所」。第2回は、英語学習によくある病気「ウノミー」の治療法をお教えします。

英語の勉強は英文を丸暗記するしかないの?

文法の解説を聞いても、分かるような分からないような・・・モヤモヤ感しか残らない。「英語はワケが分からない!」と感じてしまう人は少なくないでしょう。

あなただったら、以下の対策のうちどれがよいと思いますか?

【a】勉強量が足りていないだけ。量が質に転化するまで頑張る。

【b】「英語はそういうもの」だから、とことん暗記するしかない。

【c】「英語感覚」をつかむ努力をし、疑問は一つひとつ解消する。

多くの英語学習者の方が【a】か【b】を選んでいるように見受けられます。勉強量を増やすことも、ひたすらに暗記することも、苦しい英語学習になりがち――。

運よく壁を越えられれば何かが見えてくるかもしれませんが、その前に挫折してしまい、英語が嫌になってしまう(前回ご紹介した「エゴイヤ病」を 引き起こす /悪化させる)危険性も非常に高いのです。

英語を「暗記科目」にしてはダメ

英語を「暗記科目」だと思ってしまい、片っから暗記しようとしてしまう人が大勢います。

そのような学び方は、英語が大好きでない限りうまくいかないことが多いのです。これは上達を妨げる「英語病」であり、私は「 ウノミー 」(別名:暗記病)と呼んでいます。英語は本来、言葉で説明できるものではないのですが、「この単語はこういう意味だ」「△△△には用法が3つある」などという日本語での説明をうのみにしてしまうからです。

「暗記も時には必要だ」ということを否定するつもりはありませんが、極力 少ない に越したことはなく、また脳科学的にも中学生以上の大人には丸暗記が向いていないことが分かっています。理屈が分からないことは、記憶にも残りづらい上、学ぶ気力も湧きづらいのです。

英語は「 暗記科目 」ではなく「 納得科目 」――。「なるほど」を積み重ねることが、英語を理解する上では重要なのです。【c】の学び方について、これからお話させてください。

暗記ではなく、理解するためのコツ

1.疑問を大切にする

暗記ばかりになってしまっていると、ちょっとした疑問にフタをしてしまいがちです。疑問点や不明点が生まれるのは、 実は小さくつまずいてしまっている証拠 です。そこをクリアしないことには、納得感は得られません。

まずは、過去に疑問に思っていたことを思い出し、そして解決しようとしてみることをおすすめします(例:「~になりたい」はなぜ want to become ではなく want to be と言うのか?私の ブログ記事 にそれについて書いています。お時間があればご覧ください)。

ウノミーにかかると、「英語はそういうものだ」と思い、疑問を持たなくなってしまいます。また、重度のウノミーになってしまうと、 そもそも 英語に対して疑問が全然湧かなくなってしまうのです。ぜひ「疑問」を大切にして、そして、解消することを心がけましょう。

2.日本語訳ではなく実体をつかむ

私たちはつい、日本語訳を暗記してしまいがちです。例えば water には「水」という意味も「お湯」という意味もある・・・という風に。それは、特に基本単語に対しては、おすすめしづらい覚え方です。

言葉は、何らかの「実体」をさし示す「記号」 のようなもの――。単なる「ラベル」だと思っていただいても良いでしょう。英語の water という言葉が指す実体は、化学的に表現するならば「液体の状態にある H2O」なのです(もし温度がとても低くなり、固体になれば ice <氷>ですね)。つまり「液体の状態にある H2O」を見て、「これを water と呼ぶのだ」と理解するのが望ましいのです。

(なお、専門的で難易度の高いボキャブラリーであれば「実体」をいちいち考えるよりも、日本語訳と対応させてしまった方が早いでしょう。 ただし その場合にも、丸暗記をしてしまうのではなく、単語の知識を「つなげる」工夫が重要です。例えば、派生語、同意語、反意語、関連語などを一緒に覚えたり、語源から理解したりしましょう。詳しい方法が知りたい方は拙著『 頑張らない英単語記憶法 』をご覧ください)

3.コアイメージをつかむ

日本語からは想像しづらい意味を持っている英単語もたくさんあります。例えば if は「もし~ならば」という仮定の意味を持ちます。

I will be home if it rains.雨が降ったら家にいるよ。
また、それだけでなく「~ かどうか 」という意味でも使われます。
I don't know if it's true.それが本当 かどうか 分からない。
このような単語の実体をつかむために、 そのコア(核)にあるイメージを理解すること が大切です。if に関して は「1枚のコイン」を思い浮かべてください。「雨が降ること」や「それが本当であること」がコインの表であり、裏はもちろん「降らないこと」や「本当ではないこと」。if というのは「コインの表」の話をする単語なのです。
I will be home if it rains.

雨が降った ら家にいるよ。
*「雨が降る」という状態が コインの表 であるということを示しています。

I don't know if it's true.

それが本当 かどうか 分からない。
*「それが本当だ」ということが コインの表 であるということを指しています。

なお、基本動詞や前置詞のような、意味がたくさんある単語の場合にはコアイメージをつかむにも、さらにコツがいります。その話は別の回に譲りたいと思います(いま知りたいという場合には拙著『 頑張らない英文法フレーズ 』をご覧ください)。

今回の"処方箋"

英語は「納得科目」です!

英語学習で「なるほど」を積み重ねるために、以下の3つのポイントをまずは意識してみてください。

ウノミ―の“治療”の 手順

1.疑問を大切にする2.日本語訳ではなく実体をつかむ3.コアイメージをつかむ
英語を暗記科目だと思ってしまうのは、本当にもったいないことです。私自身(大学時代のお話ですが)、英語の「考え方」をつかむことで、英語を学ぶことが楽しくなり、上達も加速しました。

英語は、決して小難しいものではありません。ぜひ実体やコアイメージを掴みつつ、そして疑問をしっかりと1つずつ解消することで、着実に「上達の階段」を上っていきましょう。

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