『ENGLISH JOURNAL』2020年7月号の「Interview 2」に登場するのは、フラワーアーティストとして活躍されているニコライ・バーグマンさん。新刊『いい我慢~日本で見つけた夢を叶える努力の言葉~』の刊行を記念して、東京・代官山蔦屋書店にてトークライブイベントが2月に開催されました。今回はそのイベントの模様をレポートします!
ニコライ・バーグマンさんってどんな人?
1976年、デンマーク生まれのニコライさんは、2001年に自身のブランド「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」を立ち上げ、2010年に南青山に旗艦店をオープン。北欧と和を融合させたユニークな作品を発表し続け、フラワーデザインはもとより、ファッションやデザインの分野で世界有数の企業と共同デザインプロジェクトを手掛けています。
現在は国内外に14店舗のフラワーブティック、2つのカフェとバーガーショップ、アートギャラリーを 展開 しています。
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自分の夢を叶えるための「いい我慢」
イベントは、新刊『いい我慢~日本で見つけた夢を叶える努力の言葉~』をご担当された、あさ出版の編集者、財津勝幸さんの進行のもと始まりました。
――ニコライさんは19歳で単身来日してから、もう二十数年にもなるそうですが、初めて日本を訪れたときは、どんな印象でしたか?
初めて来たときは、言葉も何もわからない、食べ物も変わっている(笑)という感じで「不思議な国」という印象でした。デンマークと日本は多くのことが違っていて驚きましたが、デンマークに帰って来てから日本のよかった点に気付き、再来日しました。
まずは埼玉県の小さな花屋の一スタッフとして働き始めました。「言葉の壁」もあって初めの2、3年は本当に苦労しましたが、その当時から人との出会いや偶然によって生まれる出来事を大切にしていました。
――本書のタイトルにもなっている日本語の「我慢」とは?
花屋での仕事は月曜日が休みで、火曜日から日曜日はフルタイムで勤務していました。私はそれが本当に大変だと思っていたのですが、実はお店の日本人スタッフの中には一日も休まずに働いている人もいました。そこで一生懸命頑張って働いたことが、 人生でやらなくてはいけない、夢を叶えるための「いい我慢」 だったのだと思います。
日本語では「我慢」という言葉はネガティブな印象を持たれがちですが、そうではなくて、 自分が成長するために必要な「我慢」はもっとポジティブ なものだと私は考えています。
現在では日本でも海外でもやりたいことがいっぱいあって、何でも"Yes, yes"と受けてしまい後で大変な思いをすることがよくあるのですが(笑)、 基本的に" No "と言わない ようにしています。何かオファーを受けたときに、本当は" No "と言うべきところであっても、「やってみたい!」というチャレンジを続けてきて、今があるのだと思います。
DIYでお店の「ストーリー」を生み出す
――ニコライさんは、DIYにこだわりを持っているそうですね?
デンマークでは基本的に家族や友人だけで家も手作りして、どうしてもできないところ――例えば電気設備だけ業者にお願いする、ということをしていました。車が壊れたときもまずは自分で修理して、それで直せなかったら頼むという感じ。
それを見て育ってきたこともあり、南青山にあるフラッグシップストア「Nicolai Bergmann Flowers & Design Flagship Store 」もDIYでお店を作り上げました。インテリアデザインなどをお願いする「お金がない」というのも理由ですが(笑)、自分たちで作り上げたという「気持ちよさ」もあります。シンプルな棚に自身で手を加えてモダンに仕上げたり、カフェの壁にはグリーンをディスプレイしたり、店内では季節の花を楽しめますので、お店にいらしたときはぜひチェックしてみてください!
お金を払って人にお願いしてやってもらうのは簡単ですが、 一から自分の手で作ることでお店やその物に「ストーリー」が生まれます 。「このインテリアはどうなってるんですか?」と人に聞かれた際にも、「ここはこうやって作って、この 作業 が大変だったんですよ」などと詳しく説明することができますから。
ビジネスにはpassionが不可欠
――「アーティスト」として、または「ビジネスマン」としてのニコライさんについて教えてください。
フラワーアーティストとして花に 「passion(情熱)」があったから、それが結果的にビジネスにつながりました 。最初はビジネスに対するパッションは持っていなかったのです(笑)。
「この仕事はお金になるからやろう」という気持ちでは、ビジネスはなかなかうまくいきません。 自分をリニューアルして、常に新しいことをしようという気持ちが大事 なのです。自分のインスピレーションや成長することを止めてしまうと、お店や会社も成長が止まってしまいます。
「フラワーボックス」20周年の歴史
――ニコライさんの代名詞ともいえる、箱の中にお花を敷き詰めた「フラワーボックス」は今年で20周年を迎えますね。
フラワーボックスアレンジメントの生誕20周年を祝して、「The Flower BOX Exhibition Celebrating 20 years with the original Nicolai Bergmann flower box」という展覧会の開催を11月の六本木ヒルズを皮切りに、日本各地で予定しています。
これまでに作ったさまざまなデザインのフラワーボックスやクリエイターとのコラボレーション作品などを展示 して、皆さんがワクワク楽しめるようなイベントを考えています。お花が好きな人も、まだフラワーボックスを知らない人も、ぜひいらしてください!
ニコライさんが作った春のブーケをプレゼント
トーク会が終わった後はカウンターに色とりどりの花々が並べられ、お楽しみのフラワーデモンストレーションが始まりました。この時に作ったブーケはなんと参加者のうち抽選で1名様にプレゼント!編集部はプレス席だったので抽選の対象外でしたが、当たった方が本当にうらやましかったです(笑)。
「いちばん好きな色は紫色や渋めのピンク」「春の季節なのでチューリップ、スイートピー、フリージアを入れてみた」などとお花について説明しながら、ニコライさんはまるでマジシャンのように華麗な手さばきで、どんどんブーケの形にしていきます。
ブーケを作る上で大事なことは、 数日後にどんな形になるか想像しながら作ること だそう。花と花の間に隙間を空けることで風が通るようにして、作っている今はまだつぼみの花が数日後に咲いたときにどう見えるか、それを頭に思い浮かべながら作ります。そうすることで、 常にきれいな状態のブーケを楽しめる とお話されていました。
ニコライさんの公式YouTubeチャンネルでも、季節に合わせたブーケのアレンジメントや、ニコライさんが早朝のフラワーマーケットを訪れた様子などが楽しめますので、ぜひご覧ください。
▼公式YouTubeチャンネルはこちらから!
写真:杉本博一構成・文:須藤瑠美(ENGLISH JOURNAL編集部)
『ENGLISH JOURNAL BOOK 2』発売。テーマは「テクノロジー」
現在、ChatGPTをはじめとする生成AIが驚異的な成長を見せていますが、EJは、PCの黎明期からITの隆盛期まで、その進化を伝えてきました。EJに掲載されたパイオニアたちの言葉を通して、テクノロジーの歴史と現在、そして、未来に目を向けましょう。
日本人インタビューにはメディアアーティストの落合陽一さんが登場し、デジタルの時代に生きる英語学習者にメッセージを届けます。伝説の作家カート・ヴォネガットのスピーチ(柴田元幸訳)、ノーベル生理学・医学賞受賞のカタリン・カリコ、そして、『GRIT グリット やり抜く力』のアンジェラ・ダックワースとインタビューも充実。どうぞお聴き逃しなく!
【特集】PC、IT、そして、ChatGPT・・・パイオニアたちの英語で見聞する、テクノロジーの現在・過去・未来
【国境なきニッポン人】落合陽一(メディアアーティスト)
【スピーチ&インタビュー】カート・ヴォネガット(作家/柴田元幸訳)、ケヴィン・ケリー(『WIRED』創刊編集長、未来学者)、レイ・カーツワイル(発明家、思想家、未来学者)、ジミー・ウェールズ(ウィキペディア創設者)、アンジェラ・ダックワース(心理学者、大学教授)、【エッセイ】佐藤良明