半年でTOEIC 500点以上アップ!英語の達人になるには○○すればいい

GOTCHA!新書『「英語で電話会議」の教科書』の著者、小熊弥生さんのインタビュー【前編】をお届けします。通訳者で英語学習サービスも手掛ける小熊さん。通訳者になると決めてから、半年でTOEICのスコアを280点から805点に上げ、さらに、通訳をこなす高い英語力を身に付けた学習法とはどんなものだったのでしょうか?

通訳者を目指した理由は?

――最初に、なぜ英語を勉強したのか、また、なぜ通訳者になろうと思ったのかを教えていただけますか?

所持金6円からスタート

実は、お金がなかったというのが出発点です。

短大を卒業間近の20歳のとき、卒業旅行でハワイに行ったのですが、親から緊急の連絡がありました。短大から、卒業試験の結果が良くなくて卒業が危ういと言われたという連絡でした。そこで、急きょ帰国しなければいけなくなり、17万円の航空券を買う羽目になりました。

無事卒業はできたのですが、帰国後、航空券代に加えて家賃の6万円を払ったら、所持金が6円に。お金を稼がなくてはならないというかなり困った状態に陥りました。

処理 や体重管理であきらめた仕事も">苦手な事務 処理 や体重管理であきらめた仕事も

自分にどんな仕事ができるかと考えたのですが、当時は、短大を出た多くの女性がOLになる時代でした。でも、私は事務 処理 が苦手だったので、OLになったらきっと職場でいじめられて生きていけないだろうと思いました。命がかかっていますから、いくらお金が必要でも、OLは無理だろうと。

当時から人前で話すのは得意で、学生時代にはビジネス系の展示会などでコンパニオンのアルバイトをし、英語も定型のやりとりが中心ですが使っていました。また、そのアルバイトとは別に、外国人と英語で話すときには、日本語で話すときよりも自分の意見を言うことができて、それが快感でした。

J-WAVEのジョン・カビラ氏のようにラジオのパーソナリティーを務めることにも憧れて、コンパニオンの仕事からそういう道に進めたらとも考えていました。でも、コンパニオンの仕事には体重制限があって、それに引っかかって、コンパニオンの仕事を続けられなくなってしまったんです。それで、ラジオのパーソナリティーの仕事もあきらめました。

自分にできそうな仕事を徹底調査

就職相談窓口に行きましたが、私には特別なスキルがないことが分かりました。そこで、図書館で自分が目指せそうな職業を調べました。

当時、私が得意なことは3つありました。

1つ目は、人の相談に乗ることです。ただ、当時はまだ産業カウンセラーの仕事が確立していなくて、それで生計を立てることはできなかったので、これを仕事にするのはあきらめました。

2つ目は、問題解決です。コンサルタントになりたいなと思ったのですが、調べたところ、なるのは大変だし、高い学歴が必要でした。なる方法としては、外資系企業などのアシスタント(秘書)として働き始めて、コンサルタントを目指すというのが一般的でした。実は、アシスタントの就職試験を受けて、採用通知をもらったんです。でも、アシスタントからコンサルタントになるまでの道のりが遠過ぎるし、学歴の問題が付きまといます。そのため、アシスタントとして就職することはありませんでした。

「これしかない!」と通訳者を志す

最後に残った3つ目の特技は、コツコツと努力することです。図書館で見つけたある本に、通訳者は「女性でも学歴が高くなくても努力次第で年収2000万円も可能」と書かれていたのを発見し、「これしかない!」と即決。通訳者になる決意をしました。

「あなたには無理」と言われたが、あきらめない

早速、ある通訳スクールを訪ねて「通訳者になりたい」と相談すると、「20歳の時点でまともに英語ができないのでは、通訳者になるのは無理。通訳コーディネーターを目指した方がいい。通訳者は、バイリンガルの人が5~10年の多大な努力をして、それでも目指す2000人のうち1人がやっとなれる職業」とアドバイスされました。私にはなれる見込みがないと言われてしまったんです。

それでも、あきらめずに通スクールに入りました。

通訳者になるためにどんな勉強を?

――英語を上げ、通訳者になるために、どんな勉強をしたのですか?

英語の聞き取りも内容理解もできない

通訳者になるのは無理と言われてもあきらめなかった私は、通訳スクールの一番下の英語クラスに入りました。でも、一番下のレベルなのに、英語を聞いても何を言っているのか聞き取れませんでした。ニュース番組の音声などが使われていましたが、単語が聞き取れたとしても、全体の内容が 把握 できません。ましてや、その音声をシャドーイングしたり日本語に訳したりすることなど、到底できませんでした。

アルバイトを3つ掛け持ち

授業だけでも大変なのに、お金がないので、スクールに通いながらアルバイトを3つ掛け持ちしていました。パーティーコンパニオン、ホテルのラウンジコンパニオン、それに、当時できたばかりの高齢者介護ホテルの深夜の見回りをしていました。コンパニオンをしていたのは、時給が良かったからです。深夜の見回りは大変でしたが、同じ職場で働く看護師さんたちのプロ意識を目にすることができて、いい社会勉強になりました。

留学を目指して身銭を切る

「通訳者になるには留学するしかない」と思い、留学準備をするためにトフルゼミナールに通うことにしました。通うには多額のお金が必要です。3つのアルバイトで貯めた46万円を、20歳の夏、トフルゼミナールに現金で一括前払いしました。

トフルゼミナールの授業は、朝9時から正午まで。相変わらずアルバイトをしながら通っていたので、ほとんど眠れず、予習と復習の時間も取れません。普通だったら、授業に通うことをあきらめたり、通っても授業中に寝てしまったりする状況ですよね。ただ、私には、「自分で稼いだ大金を払って授業を受けている」という意識が強くありました。

「身銭を切った」という初めての経験から、「火事場のばか力」が発揮されたんですね。睡眠時間も学習時間も取れない状況でどうしたら英語が身に付くのかを考えて、授業中に全て吸収するしかないと思いました。

のちにこの体験を本に書いて出版したときに、当時のクラスメートから「あのときの君は本当に頑張っていたよね」と言われましたから、やっぱりすごい「ばか力」を出していたのだと思います(笑)。

英語をブツブツつぶやき、半年で280点から805点に

「授業中に全て吸収する」と決意すると、授業にとても集中するようになり、結果として学んだことをどんどん吸収できました。周りの人には迷惑だったと思いますが、授業中は、聞こえてくる英語を、先生が話す英語も含めて、全てブツブツと口に出していました。たぶん、さぞかし不気味だったでしょうね。

でも、このように聞こえる英語を全部言っていたおかげで、TOEIC(R) テストのスコアが、280点から半年で805点になったんです。自力でつかみ取ったという実感がありました。

脳科学的にも、学ぶには「状態」が重要

最短距離で英語力を身に付けるには、「火事場のばか力」の集中力と吸収力がものをいいます。

後から知ったのですが、脳科学的にも、What や How(「何を」「どうやって」)は実は二の次なんです。英語学習者は「何を」「どうやって」学べばいいのかを知りたがりますよね。でもそれよりも、本当は、人の state (状態)が、学んだことが身に付く かどうか の鍵なんです。

例えば、背中を丸めた姿勢で学ぶより、背筋をきちんとS曲線になるように伸ばしていると、神経伝達も迅速に行われます。また、集中して学んだことは、脳の奥にしっかりと書き込まれます。「人に教えるつもりで学ぶ」のも大切です。

こういったことは、自己啓発コーチのアンソニー・ロビンズ氏やビジネスコンサルタントのブライアン・トレーシー氏、『金持ち父さん 貧乏父さん』のロバート・キヨサキ氏が言っています。これらの方法論は、最短で英語力をアップさせるにも 有効 なのです。

留学はやめて、英語講師になる

英語力は上がりましたが、通訳者になるには「英語の達人」になる必要がありますよね。

せっかく TOEIC 805点が取れたのだからと、このスコアでできる英語を使う仕事を、求人情報で調べました。すると、語学学校の英語講師の求人がありました。

応募してみると、面接ではいきなりその場で模擬授業をやってくださいと言われました。やってみたところ、授業で先生が使う英語が自分の口から出てきたんです。通訳スクールで授業中にブツブツ英語をつぶやいていた成果が出たんですね。初めての模擬授業を堂々とこなし、未経験なのに、なんと主任講師として採用されました。

後で採用担当者から聞いた話では、模擬授業で「学習者に寄り添っていた」のが高評価だったみたいです。分からないと言う生徒役の人のところに行って、かがんで、どこがどう分からないのか尋ねたのは、今でもはっきりと覚えています。自分が英語ができないところからスタートしたので、学習者の気持ちが分かって、学習者の視点に立って教えるという姿勢を示せたのだと思います。

その講師の職への応募者の中には、留学経験者や帰国子女の方もいました。それでも私が主任講師の仕事を勝ち取れたのは、通訳スクールでとことん「集中」する勉強法を実践していたおかげだと思います。

お金がなかったこともあり、多額の費用がかかる留学はやめて、英語講師として働くことにしました。

教えることで、自分の英語力がアップ

講師として担当した授業は、英会話や、TOEICや英検などの試験対策、受験英語対策など、幅広かったです。準備は大変でしたが、英語を教えることが自分の英語の勉強にもなりました。

自分のためだけに勉強すると、勉強したことの6割くらいしか身に付かないとされています。でも、学んだことを人に教えると、8、9割は身に付けることができます。吸収が大幅に上がるんですね。

脳科学的には、受け身で勉強したことは、放っておくと、48時間後には8割が脳から消えてしまいます。それを永遠に繰り返すのは効率が悪いですよね。でも、学んだことを教えると、消えずに蓄積されます。ものすごいスピードで吸収できるので、短期間でマスターできるんです。

英語を教えるに当たっては、トフルゼミナールで、今で言う4技能やアカデミックな英語(論理的なライティングやスピーキング)など、多方面から英語を学んでいたこともとても役立ちました。

「完コピ」の威力と、加速成長

私の就職試験での模擬授業で証明されたように、英語の「完コピ」も徹底して行うと、英語で英語の授業ができるようになるほど英語が身に付くのです。

私は、英語に限らず何でも習得するのが速いと人からはよく言われます。世界チャンピオンの人に習っている空手も、始めて3カ月で、まだ初心者なのに、「黒帯の人に言うようなことをあなたには伝えてしまう」とその師匠から言われました。集中した姿勢で学ぶので、吸収率が高く、人から貴重な教えを引き出せるみたいです。「滝行(たきぎょう)」も、通常は習得するのに1年かかるそうですが、私は3カ月で習得してしまいました。加速成長できるんですね。

経営する会社も、1年半で 売上 が7倍になり、急成長しました。ダイエットでも、昨年、エステティックサロンの全国大会にエントリーし、13キロやせて、第4位として表彰されたんですよ。100人くらい出場者がいる大会だったんですけど。自分を競争にさらした方がやる気になると思って参加しました。英語力をアップさせたときと同じように、どうしたらやせられるかを考え、集中してやり遂げましたので、体重維持もできています。

 

次回、11月28日公開予定のインタビュー後編では、通訳という仕事の醍醐味や、英語を使って夢をかなえる方法などをお伝えします。お楽しみに!

小熊弥生さんの新刊

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文:小熊弥生  https://ameblo.jp/interpreteryayo/
株式会社ブリッジインターナショナル代表。TOEIC 280点から、独自の勉強法で半年後にTOEIC 805点を 取得 。短大卒業から3年半で通訳者デビュー。現在は自身の経験をベースにした英語学習サービスを 展開 。ひとりひとりの目的に合った効果的な学習プログラム作りを指南し、のべ1000人以上の英語力アップに貢献している。

マインドブレークスルー英語 :著者がTOEIC 280点から各国首脳の同時通訳を担当するまでに実践した英語勉強法を伝授。リスニング力とスピーキング力アップに特化したプログラムです。

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