秋の季節、日本では「読書の秋」「食欲の秋」といったフレーズをよく耳にします。これらは「○○の秋」という日本独特の文化的な表現です。秋にぴったりの活動や体験を楽しむことを強調するためのものですが、このコンセプトは英語ではどう表現されるのでしょうか?
目次
「○○の秋」とは何か?
「○○の秋」というフレーズは、秋の季節に特有の活動や体験を強調するためのものです。このフレーズの中の「○○」はさまざまなものを指し示すことができます。例えば:
読書の秋 (autumn of reading / Autumn is for reading.)
食欲の秋 (autumn of appetite / Autumn is for enjoying food.)
スポーツの秋 (autumn of sports/ Autumn is for sports.)
芸術の秋 (autumn of art / Autumn is for appreciateing art.)
恋の秋 (autumn of romance/ Autumn is for romance.)
これらのフレーズは、日本の人々が秋の季節に特別に楽しむものや体験を表現するために使われます。英語も併記しましたが、残念ながら、英語に「○○の秋」という直接的な表現は存在しません。上の英語を使っても、日本の文化になじみのない人たちには理解されない可能性が高いです。
英語での表現方法は?
「○○の秋」(autumn of ~)だけでは通じないかもしれませんが、英語で説明することは可能です。例として、以下のように説明することができます。
In Japan, fall is often associated with specific activities and pleasures, such as reading, eating, and participating in sports. Phrases like “autumn of reading” and “autumn of appetite” emphasize the delights of indulging in these activities during the fall season.
日本で、秋はよく、読書や食事、スポーツを楽しむといった特定の活動や楽しみと結び付けられます。「読書の秋」や「食欲の秋」といったフレーズは、秋の季節にそういった活動を満喫する喜びを強調するものです。
ところで、「秋」を意味する英語はautumnとfallの2種類があります。autumnは主にイギリス英語で、fallはアメリカ英語です。ただし、アメリカ英語でも、autumnはより詩的で正式な響きを持つ言葉として使われています。エッセイ、詩、美しい景色や感情を伝えたい場合など、感情的な重みや深みを持たせたい文脈で好まれることがよくあります。一方、fallは日常的な会話やカジュアルな文脈でよく使われます。
そのようなわけで、この記事ではautumnを使って表現しています。
「○○の秋」を用いた英語例文
「○○の秋」という特有の文化を理解している人に対して、という前提はありますが、「○○の秋」を含む英文をいくつか紹介しておきます。
The colorful fall leaves always inspire me to get out my paintbrush. So, for me, it’s the “autumn of art.”
秋の紅葉で、私はいつも絵筆を持ちたくなるインスピレーションを受ける。だから、私にとっては「芸術の秋」だ。
Since it’s now the “autumn of reading,” I plan to tackle my ever-growing reading list.
今は「読書の秋」で、どんどん増えていく読書リストに取り組むつもりだ。
Celebrating the “autumn of sports,” I’ve signed up for a half marathon next month.
「スポーツの秋」を祝して、来月のハーフマラソンに参加することにした。
Autumn is for art. I’m thinking of visiting all the major art galleries in Tokyo.
芸術の秋だ。私は東京の主要な美術館を全て巡るつもりだ。
Given that it’s the “autumn of sports,” is there a new activity or sport you’d like to try?
「スポーツの秋」だし、試してみたい新しいアクティビティやスポーツはある?
Autumn is for reading! Any books you’re hoping to dive into?
読書の秋だね!読みたい本はある?
日本の文化「○○の秋」を紹介する英語エッセイ
英語圏の人に日本の「○○の秋」をお勧めする英語エッセイを書いてもらいました。日本の文化に関心を持つ人がいれば、ぜひご紹介ください。
Embracing Japan’s “○○の秋”: A Season of Specific Joys
Autumn, globally recognized as a season of change and reflection, takes on a unique hue in the cultural landscape of Japan. The season here is not only associated with harvest festivals – and now – Halloween, as in the West, but with a variety of activities that can be placed in the the expression “○○の秋” – literally translating to “autumn of ○○.” This concept allows every individual to fill in the blank with their own personal passion or pursuit.
秋は変化と内省の季節として世界的に認識されていますが、日本の文化的景観においては独特の色合いを帯びています。日本の秋は収穫の祭りや――今は――西欧と同じハロウィーンといったものだけでなく、「○○の秋」という表現に当てはまるさまざまな活動とも関連付けられます――文字通り「autumn of ○○」と翻訳されます。このコンセプトにより、個人がそれぞれの情熱や追求を、空白の部分に当てはめることができるのです。
The tradition emerged from the country’s profound connection to nature and its shifting seasons. Historically, “読書の秋” (autumn of reading) and “芸術の秋” (autumn of arts) are popular sayings, implying that fall is an ideal time for deep reading or immersing oneself in art. However, the beauty of “○○の秋” is its fluidity. It could be “スポーツの秋” for a sports enthusiast or “音楽の秋” for someone who finds solace in music.
この伝統は、自然と季節の移り変わりとの深いつながりから生まれました。歴史的には、「読書の秋」や「芸術の秋」がよく使われ、秋が読書や芸術に没頭するのに理想的な季節であることを意味しています。しかし、「○○の秋」の良さはその流動性にあります。「スポーツの秋」でもよく、「音楽の秋」でもよいのです。
An underlying attractive feature of this “fill-in-the-blank” concept is the encouragement to be introspective. It’s a nudge from society to ask ourselves, what our passions are or might be. It inspires us to rekindle past hobbies or jump into new interests.
この「空白を埋める」コンセプトの根底にある魅力は、内省的であることを奨励することにあります。自分の情熱は何だろうかと自問するよう、社会が私たちを後押ししてくれるのです。これによって私たちは、昔の趣味を再燃させたり、新しい興味に飛び込んだりするのです。
This concept also reinforces the importance of mindfulness. In the age of digital distractions and fast-paced lifestyles, “○○の秋” reminds us to take a moment, slow ourselves down, and immerse ourselves in a singular pursuit or passion. It celebrates the philosophy that every season offers a new beginning or, in this case, a new or renewed focus.
このコンセプトは、マインドフルネスの重要性も強調しています。デジタルが氾濫し、目まぐるしく変化するライフスタイルの時代にあって、「○○の秋」という言葉により、私たちはひとときをゆっくりと過ごし、ひとつの追求や情熱に没頭することを思い出します。どの季節も、新たな始まりを、つまりここでは新しい、または再認識した集中を与えてくれる、という哲学を称えています。
Non-Japanese people experiencing their first autumn in the country are highly encouraged to give this concept a try! Can you come up with your own “○○の秋”? Maybe it’s “旅行の秋” (autumn of travel) as you explore the fall foliage in Kyoto or “料理の秋” (autumn of cooking) while trying your hand at some seasonal Japanese dishes.
日本での秋を初体験する外国の方々には、このコンセプトを試してみることを強くお勧めします。自分なりの「○○の秋」を見つけられますか?京都の紅葉を巡るなら「旅行の秋」、季節の日本料理に挑戦するなら「料理の秋」かもしれませんね。
In essence, “○○の秋” is more than a phrase; it’s a mindset. It’s an invitation to align one’s actions with the season’s rhythm. So, as autumn begins blanketing much of Japan in a tapestry of reds, oranges and yellows, let’s ask ourselves, “What will be my “○○の秋” this year?”
要するに、「○○の秋」は単なるフレーズではなく、マインドセットなのです。季節のリズムに合わせて行動しようという誘いです。だから、秋が深まり、日本を赤、オレンジ、黄色のタペストリーで包み込む頃、ご自身に問い掛けてみましょう。「今年、私の『○○の秋』はなんだろう?」
まとめ
「○○の秋」は日本の独特な文化的表現であり、それを英語で直接的に表現するのは難しいかもしれません。ただ、その背景や意味を英語で説明することで、英語圏の人々にもこの考え方を理解してもらうことができるでしょう。
トップ写真:Weiqi Xiong from Unsplash 本文写真:Ken Cheung from Unsplash
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