「カメレオン的」な性格がいい?!世界中の人と仲良くなるコツ【クリスタル・ケイさんインタビュー後編】

1999年に歌手デビュー、2013~15年にニューヨークで活動し、2019年にアーティスト活動20周年を迎えたクリスタル・ケイ(Crystal Kay)さん。日本語や英語の楽曲を歌い、2021年4月にカバーアルバム『I SING』をリリースしました。ブロードウェイミュージカル『PIPPIN』日本語版への出演や、ニューヨークでの体験、自身のアイデンティティーの変化、人と仲良くなる方法などをお聞きしました。

▼インタビュー前編はこちら

自分のためではなく人のために歌う

ニューヨークから日本に戻らなくてはいけない時期になり、何か形に残したいと考えたときに「ライブがしたい」と思い立ちました。

日本と違ってライブを一から準備してくれるスタッフの方がいるわけでもなく、基本的にすべて自分でセッティングしました。お客さんが来てくれるかもわからなかったので小さな会場にしましたが、Instagramで宣伝したら すぐに チケットはソールドアウトになりました。それで「もう1日やらないか」というオファーを頂き、合計2日間のアコースティックライブが実現しました。

アメリカでの初ライブだったので、まるで初心に帰ったような感覚で準備を進めました。向こうで作ったオリジナルの楽曲や日本での自身の曲、それとカバー曲を入れるなど、悩みながら40分ほどのセットリストを組みました。

その準備のかいがあったのか、ほとんどアメリカ人だったお客さんたちからも好評を得ることができました。「車で6時間かけて今日は来ました」「10年以上も待っていました」なんてうれしいことを言ってくれる人もいて、すごくいいライブでした。お客さんだけじゃなく私自身も本当に楽しくて、「なんだ、やればできるじゃん。もっと前からやってみればよかった」と自分に自信をつけることができたのです。その自信を日本に持って帰ってこられたことは、大きな成果です。

20代後半の不安や壁は、私だけでなくきっと誰もが通る道なんだということも、ニューヨークに行くことで感じられました。そして、迷いを感じている多くの人の気持ちを代弁する歌、「私もみんなと同じだよ」ということを伝える歌い方にシフトすることができたのです。 今までは自分のためだったのが「人のために歌おう」と感じられた瞬間があったことが、私にとって最も大きなターニングポイント といえます。

当初の目標としてきたアメリカでのデビューはかないませんでしたが、 自分と向き合い、自信を持てるようになり、アイデンティティーを確立できた旅だった と思います。日本に帰ってきてからの活動や歌への向き合い方にも、それは大きく 影響 しています。

friendly & welcomingな心で人と向き合う

何事にもオープンマインドでいることが、人に好かれる・人と仲良くなるためには大切 だと思います。

日本だけじゃなく世界にはいろいろな方がいて、さまざまな考え方や物事の見方があります。そういった人たちと何かについてディスカッションするとき、 人の話を否定するのではなく「そういう考え方・見方もあるんだな」と素直に 受け取る 姿勢は大切 で、それが相手にも伝わります。それによって自分の世界も広げることができますし、相手ともより深く通じ合えるはずです。

オープンな心構えを持っている人は周りから好かれるでしょうし、そこにすてきなスマイルも加われば勝ち、といえるのではないでしょうか。 頭を固くせずに、丸く柔らかくして心をオープンにすること、friendly & welcoming(友好的で相手を歓迎する)であることが大事 だと思います。

私自身はもともとの性格として「カメレオン的」というか、周りの人に合わせ上手なところがあるかもしれません。相手の話に興味を示し、「うんうん、それで?」というように合わせる姿勢を持つことで、どんなトピックでも会話が途切れず、話が広がっていきます。向こうにも「もっと話したい」と思ってもらえるし、お互いに楽しく会話のキャッチボールが続くことで、相手との仲がより深まると思います。

国境も時代も越えて人をつなぐ音楽

音楽はボーダーレスで、国境を越えて人と人とをつなぐ力がある と思います。話す言語が異なっていても、感情や伝えたいと思う気持ちがエネルギーとなって伝わるでしょう。同じ人間なのだから、そのエネルギーによって人をつなぐことができますし、世界もつなぐことができます。

今回、時代にとどまらない名曲を集めたカバーアルバムを制作したということもあるのですが、歌は時代も越えると思います。最近の若い子たちが1980年代のレコードや楽曲を掘り出して聞いたり、シティポップ 1 を聞いたりして、それが一周回って一つのブームになっていますよね。 音楽家がカバーやサンプリングをすることで、時代を越えて名曲が歌われ、次の世代に受け継がれていく* のです。そうやって時代と時代をつないでいく――それが歌の魅力といえます。

クリスタル・ケイさんから読者の方への英語メッセージ

This is really cool doing an interview in both English and Japanese, and I think it’s really great that there’s a (1)platform for people wanting to learn and explore more in English in this like (2) conversational level . So thank you for having me. I hope you guys love my cover album. It’s my very first cover album. It’s my baby. We all put in a lot of love and fun and care in making this album, so please enjoy (it) and good luck with your English.
英語と日本語でインタビューを受けたことは本当に楽しくて、英語を学びたい、もっと会話がうまくできるようなレベルまで深めたいと思う人たちの機会があることはとても素晴らしいと思います。呼んでくださってありがとうございます。皆さんが私のカバーアルバムを気に入っていただけるとうれしいです。本当に初めてのカバーアルバムです。私の子どもなのです。私たちはこのアルバムを制作する際にたくさんの愛、楽しさ、思いやる気持ちを詰め込んだので、ぜひ楽しんでください、そして英語(学習)も頑張ってくださいね。

(1) platform 機会/(2) conversational  話し上手な、対話の

※本インタビュー記事(前後編)は、『ENGLISH JOURNAL』2021年6月号特集の内容を再構成し、追加の内容を加えたものです。

※クリスタル・ケイさんのインタビューは日本語と英語で行いました。英語インタビューは、 『ENGLISH JOURNAL』 2021年7月号(2021年6月5日発売)に掲載予定です。

Cover Album『I SING』">1st Cover Album『I SING』

クリスタル・ケイさん本人がアーティスト活動20周年を経て特別な機会にリリースしたかったと話す、キャリア初のカバーアルバム。その楽曲 候補 は国内外と多岐にわたったが、誰もが口ずさめる、平成初期から令和にかけての幅広い邦楽のヒット曲を、ファン アンケート を基に選曲。(発売中/ユニバーサルミュージック)

I SING
  • アーティスト: Crystal Kay
  • 発売日: 2021/04/21
  • メディア: CD
 

『ENGLISH JOURNAL』6月号は「モテ英語」特集!

創刊50周年を迎えた英語学習誌『ENGLISH JOURNAL』。6月号の特集では、「『モテ英語』のルール10」をお届けします。「“あざとい”くらいが今っぽい!」とは?

取材・文:知夏七未/スタイリスト:NARUMI OKAMURA/ヘアスタイリスト:HAYATO TAKEDA(PUENTE Inc.)/衣装:ラルフ ローレン コレクション、IF8/トップ写真・記事中写真の撮影:山本高裕(編集部)
*1 :編集部注:歌詞やサウンドに都会的な雰囲気を含む、1970~80年代の日本で流行したポップス
Crystal Kay(クリスタル・ケイ) 1986年生まれ、神奈川県出身。1999年「Eternal Memories」でデビュー。「Boyfriend -part II-」「恋におちたら」などのヒット曲で大ブレーク。2015年にCrystal Kay feat. 安室奈美恵 「REVOLUTION」、「何度でも」(フジテレビ系木曜劇場「オトナ女子」挿入歌)を含むロングヒットアルバム『Shine』をリリース。2019年にアーティスト活動20周年を迎え、トニー賞4部門受賞のブロードウェイミュージカル『PIPPIN』の日本語版に出演し、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。今年4月、キャリア初となる待望のカバーアルバム『I SING』をリリース。 公式サイト

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部 「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

『ENGLISH JOURNAL BOOK 2』発売。テーマは「テクノロジー」

現在、ChatGPTをはじめとする生成AIが驚異的な成長を見せていますが、EJは、PCの黎明れいめい期からITの隆盛期まで、その進化を伝えてきました。EJに掲載されたパイオニアたちの言葉を通して、テクノロジーの歴史と現在、そして、未来に目を向けましょう。

日本人インタビューにはメディアアーティストの落合陽一さんが登場し、デジタルの時代に生きる英語学習者にメッセージを届けます。伝説の作家カート・ヴォネガットのスピーチ(柴田元幸訳)、ノーベル生理学・医学賞受賞のカタリン・カリコ、そして、『GRIT グリット やり抜く力』のアンジェラ・ダックワースとインタビューも充実。どうぞお聴き逃しなく!

【特集】PC、IT、そして、ChatGPT・・・パイオニアたちの英語で見聞する、テクノロジーの現在・過去・未来
【国境なきニッポン人】落合陽一(メディアアーティスト)
【スピーチ&インタビュー】カート・ヴォネガット(作家/柴田元幸訳)、ケヴィン・ケリー(『WIRED』創刊編集長、未来学者)、レイ・カーツワイル(発明家、思想家、未来学者)、ジミー・ウェールズ(ウィキペディア創設者)、アンジェラ・ダックワース(心理学者、大学教授)、【エッセイ】佐藤良明

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