アジア系ヘイトクライムに立ち向かうアーティスト、ジェネイ・アイコの『Sailing Soul(s)』

「今聴いてほしいアーティスト」と関連楽曲を、音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと併せて渡辺志保さんが解説します。

今月のアルバム

Jhene Aikoの『Sailing Soul(s)』を紹介します。

Sailing Soul(s) [Clean]
  • 発売日: 2021/03/19
  • メディア: MP3 ダウンロード
 
アフリカ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたジェネイ・アイコは、子どもの頃からキャリアをスタートし、2003年にソロデビューする予定だったものの見送られ、2011年にカニエ・ウェスト、ドレイクなどが参加した『Sailing Soul(s)』でデビュー。今年3月、本作に新しい楽曲が追加されたバージョンが再リリースされた。

ヘイトクライムに声を上げる日本の血を引くアーティスト

写真:Abaca Press/ロイター

近ごろ、情報が 更新 されるにつれ胸を痛めているニュースが、アメリカでアジア系の人々に対する「ヘイトクライム」が急増しているという件だ。ヘイトクライムとは、人種、民族、宗教、性的指向など、特定の属性を持つ人々に対する偏見や憎悪によって引き起こされる犯罪行為のこと。今年の3月ごろから盛んにニュースで取り上げられるようになり、その緊張感の高まりが決定的になったのが、アメリカ、アトランタで起こった銃撃事件だ。犯人( ちなみに 白人男性である)は三つのマッサージ店を襲い、8名が命を奪われた。うち6名はアジア系の女性であった。

現在、インターネット上では「Stop AAPI Hate」というスローガンが飛び交っている。AAPIという呼称は聞き慣れない かもしれない が、Asian Americans and Pacific Islandersの略で、日本はもちろん、中国、台湾、韓国からインドやインドネシア、フィリピンなど、アジア系を広くまとめた呼び方だ。

今回の事件や運動を受けて、もちろんアーティストらも声を上げている。例えば、Instagramに「Hate Is Virus 」と書かれた画像をアップしたジェネイ・アイコは、日本の血を引いた女性シンガーだ。今年のグラミー賞にも多数ノミネートされたり、ディズニー映画の主題歌を歌うことになったりと大きな躍進を続けている彼女は、日系アメリカ人としてカリフォルニア州コンプトン(全米でも有数の犯罪地区として知られる)に生きた祖父、グランパ・テディについて語っている。弁護士として活躍していたテディは黒人女性の妻を迎え、1992年のLA暴動の最中も危険に身をさらしながら市井の人々の正義を守るために尽力したという。

そしてアイコもまた、彼の遺志を継いで平等な人権のために結束し合わなければならないと語る。人種の分断によるゆがみが露呈しているアメリカだが、愛と正義がヘイトに打ち勝つ日は、いったいいつやって来るのだろうか。

アジア系ルーツを持つアーティストの曲4選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。アジア系へのヘイトクライムが問題になっている今、聞いておきたい!

  1. Lockdown by Anderson .Paak
  2. do it right (feat. Amine) by REI AMI
  3. Your Man by Joji
  4. Joyce Wrice Ft. UMI- That’s On You (Japanese Remix) by Joyce Wrice

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「EJ’s Playlist」では、これまで『ENGLISH JOURNAL』の連載「EJ Culture Music」で取り上げてきた楽曲を音楽配信サービスで公開中です。こちらのプレイリストは、Apple Musicでもお楽しみいただけます。次のURLからご利用ください。 https://umj.lnk.to/EJplaylist

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年6月号に掲載した記事を再編集したものです。

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渡辺志保 音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。

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