料理界の秘密兵器?海外で注目されている umeboshi の新たな魅力【世界のニホンゴ調査団】

古くは「スシ」「ゲイシャ」「ニンジャ」。最近では「スードク」。海を渡って世界で使われていると言われる日本語がありますが、最近ではどの国でどんな単語が用いられているのでしょうか。世界90カ国以上の現地在住日本人ライターやカメラマンの集団「海外書き人クラブ」がリレー形式で担当する連載「世界のニホンゴ調査団」。第19回は、オーストラリア在住の池野茜が、海外で注目されている「umeboshi」についてレポートします。

料理学校に通う同居人から聞いた、梅干しの海外人気

オーストラリアで購入できる梅干し

私はシェアハウスに住んでいて、同居人の一人は料理学校の学生です。彼女の学校ではたまにグループ単位の料理コンテストを開催するため、グループの仲間を家に呼んで試作品を作ることもあります。私がオーストラリアで最初に梅干しを目にしたのも、試作品を作っているところに立ち会ったときでした。

同居人(台湾人):Do you want to try this umeboshi dumpling?

梅干し餃子を試食してみない?

私:Umeboshi? Not plum? Why do you know that?

梅干し? プラムじゃなくて? なんで知ってるの?

チームメイト(オーストラリア人):Not plum. I saw it on TV, MasterChef.

プラムじゃないよ。テレビ番組「MasterChef」で見たんだ。

日本で梅干しを plum と訳すこともありますが、オーストラリアでは plum と umeboshi は基本的に別物です。

「MasterChef」は英 BBC 発祥の料理番組

「MasterChef」は、1990年に第1シリーズが放送された英BBCの料理番組。コンペティション形式でアマチュアシェフたちが料理の腕を競い、最後まで勝ち残った人が「MasterChef」の称号を獲得します。各国で「MasterChef」の名を冠した番組が放送されている、世界的人気番組です(※日本では未放送)。

特にオーストラリアでの人気は高く、Wikipediaによると2009年のオーストラリア版第1シーズンの最終回は335万人が視聴(※オーストラリアの人口は約2499万人)。現在も「MasterChef Australia」の放送日になると、SNSのトレンドワードに番組名が浮上します。

同居人のチームメートは研究熱心で、勉強の一環としてイギリス版「MasterChef」もインターネットで見ていたそうです。そのため、オーストラリア在住にもかかわらず、イギリス版の放送を見て梅干しを知ったとのことでした。

「ヴィーガン料理の秘密兵器」として紹介された梅干し

「MasterChef」で梅干しが紹介された週はGoogleでの検索数が跳ね上がっています(放送日は18日)

イギリス版「MasterChef」で梅干しが登場したのは、2019年2月放送開始の第15シリーズ・エピソード18です。動物由来の食品を一切使わない「ヴィーガン料理」がお題の回で、パルメザンチーズの代用品として使用されたのが梅干しでした。

この回が放送されるとイギリスで大きな反響を呼び、umeboshi の Google 検索数は急上昇。この放送後、グルメ雑誌でも取り上げられ、ヴィーガンフードとしての梅干しの魅力が紹介されました。

However, it has also recently been hailed as a secret weapon in vegan cooking because it provides the salty, sour and umami flavours that non-vegans get from ingredients like parmesan, anchovies or fish sauce, but is completely plant-based.

しかし、最近ではヴィーガン料理の秘密兵器として認められています。パルメザンやアンチョビ、魚醤などの食材から非ヴィーガンが得る塩味や酸味、うまみを提供しますが、完全に植物由来だからです。

This means it can be added to vegan sauces and marinades, Thai curries and stir-fries for added oomph.

これは、パンチを効かせるためにヴィーガンソースやマリネの漬け汁、タイカレー、炒め物に梅干しを足せることを意味します。

※出典:『BBC Good Food Magazine』June 2019

この記事で紹介されている梅干しのような、動物由来の食品に代わる植物由来の食品の市場は世界で大きく成長しています。アメリカの非営利組織、The Good Food Institute によると、2017年4月末から2019年4月末までの2年間でこれらの食品の売上は31パーセント増加し、約45億ドルの市場規模になりました。この2年間のアメリカにおける食品全体の売上増加率は4パーセントだったことからも、ヴィーガン市場の急成長ぶりがうかがえます。

YouTube では「日本の酸っぱい食べ物」として世界中で注目

テレビ番組だけでなく、YouTubeでも梅干しは注目を集めています。

例えば、アメリカの2人組ユーチューバーによるYouTubeチャンネル、Good Mythical Morning。このチャンネルで2016年3月に公開された動画に梅干しが登場しました。2人が酸っぱい食べ物にチャレンジして採点する企画で、2019年10月31日時点で1140万回再生されています。キンカンやレモンなどを抑えて、最も酸っぱい食べ物に梅干しが選ばれました。

海外ユーチューバーの「梅干しを食べてみた」系の動画は他にも多数あり、よく見ると Good Mythical Morning より先に公開された動画も少なくありません。調べた限りでは一番古い動画は12年前に公開されたイタリア語の動画でした。他にもフランス語やスペイン語といったメジャー言語からボスニア語やフィンランド語といったマイナー言語まで、YouTube上ではさまざまな言語の梅干しに関係する動画が公開されています。

世界的に有名なブラジル人歌手が歌う曲「Umeboshi」

YouTubeの梅干し動画で特に目立っていたのが、ポルトガル語の動画。特にブラジルのユーチューバーによる梅干し動画の数は、英語と日本語に次ぐ多さでした。

ブラジルに梅干しをもたらしたのは日本人移民です。しかし、一説によるとブラジルで梅干しが広まるきっかけを作ったのは日本人ではなく、台湾人だそうです。温暖なブラジルでの梅の栽培に日本人が四苦八苦していたところ、1960年代に台湾人がプランテーションでの栽培に成功したのがきっかけだと言われています。

Gilberto Gil - “Umeboshi” - Cidade Do Salvador - YouTube

世界的に有名なブラジル人歌手・ジルベルト・ジルが歌う曲「Umeboshi」

また、梅干しが広まったきっかけかは定かではありませんが、1974年にブラジル人歌手のジルベルト・ジルによって「Umeboshi」という歌が発表されています。彼は現在77歳で、2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪の開会式でパフォーマンスをした、ブラジルを代表するアーティストです。彼が梅干しを歌った理由は不明ですが、3分45秒の曲に umeboshi が7回登場します。

まとめ

半世紀前には海外で知られるようになった梅干し。YouTubeで酸っぱい日本の食べ物として知名度を上げ、現在はヴィーガンフードとして評価を高めています。2017年12月時点で日本のヴィーガン率は1パーセントですが、日本でヴィーガンフードとしての梅干しがはやる日はそう遠くないかもしれません。

連載「世界のニホンゴ調査団」

池野 茜
池野 茜

文・写真:海外書き人クラブ・池野 茜

https://www.kaigaikakibito.com/blog/

boocoで読める!アルクの新刊、続々登場

語学アプリ「booco」なら、アルクのベストセラー書籍200タイトル以上が、学習し放題!

「キクタン」などアルクの人気書籍800冊以上が音声対応。「読む」に対応した書籍では、本文と音声をスマホで手軽に利用できるほか、一部の書籍では、学習定着をサポートするクイズ機能で日々の復習や力試しも可能です。さらに、Plusプランに加入すれば200冊以上の書籍が学習し放題に!

boocoの「読む」機能では、次のような使い方ができます。

① 学習したいページを見ながら音声を再生できる
② 文字サイズや画面の明るさを調整できる
③ 書籍内検索ができる
※ これらの機能には一部の書籍が対応しています。

▼「booco」の無料ダウンロードはこちらから

2026 08
NEW BOOK
おすすめ新刊
Realize 英文法MASTERY[基礎~必修レベル]
Realize 英文法MASTERY[基礎~必修レベル] 詳しく見る
キクタン【Basic】4000語レベル

キクタン【Basic】4000語レベル

電子書籍で読むならbooco!