英語の「Kombucha」とは何でしょう?日本の昆布茶ではありません!

世界80カ国以上の現地在住日本人ライターやカメラマンの集団「海外書き人クラブ」がリレー形式で担当する連載「世界のニホンゴ調査団」が帰ってきました!第17回は、オーストラリア在住の池野茜がレポートします。オーストラリアで耳にする「kombucha(コンブチャ)」の正体は?

スーパーの特別な場所に昆布茶?

私がオーストラリアで生活を始めたのは今年の4月。引っ越して最初に買い出しに行ったスーパーで目についた日本語が「コンブチャ」でした。何でこんなところに昆布茶があるんだろう・・・?

オーストラリアのスーパーで見たコンブチャ(写真中央左)。

コンブチャがあったのは、スーパーを一通り見終わった客がレジへ向かう通路。ドリンク売り場とは別の場所に、念押しのように置かれていたことから、「豆腐ブームのあとは昆布茶がヘルシーな和食として海外で流行ってるんだ~」と思っていました。

しかし、昆布茶とコンブチャは似て非なるものだったのです。英語を練習するためのあるイベントで出会った、20代半ばのオージーの女性と話していたときに、そのことが判明しました。

私:Why is kombucha so popular in Australia?
なんで昆布茶はオーストラリアであんなに人気なの?

女性:Kombucha is healthy though it is a sparkling drink…?
コンブチャは炭酸飲料だけど健康的だから・・・?(考えながら)

私:Sparkling?
炭酸?

女性:Yes. Haven't you ever tried it?
うん。飲んだことないの?

私:No!
飲んだことないよ!

コンブチャは発酵飲料だった

オーガニック食品など、健康食品と一緒に並んでいたコンブチャ。

炭酸の昆布茶とはどういうことなのかと思い、インターネット辞書を使って調べたところ、Merriam-Websterにはこのようにありました。

Definition of kombucha: a gelatinous mass of symbiotic bacteria (as Acetobacter xylinum) and yeasts (as of the genera Brettanomyces and Saccharomyces) grown to produce a fermented beverage held to confer health benefits

コンブチャの定義:共生細菌(アセトバクターキシリナム)と酵母菌(ブレタノマイセス属およびサッカロマイセス属)からなるゼラチン質の塊で、健康促進効果のある発酵飲料を生産するために培養される

説明にはまだ続きがあります。

also: a somewhat effervescent beverage prepared by fermenting kombucha with black or green tea and sugar

または:コンブチャを紅茶または緑茶と砂糖で発酵させて調製した、微炭酸の飲料

つまり、砂糖とお茶で、ゼラチン状の塊である「コンブチャ」を発酵させた飲み物がコンブチャの正体だったのです。ちなみに、発酵茶のコンブチャは日本では「紅茶キノコ」として知られています

さらにThe American Heritage Dictionaryで調べると、かっこ書きで次のようにあります。

Probably from Japanese kombucha, tea made from kombu (the Japanese word perhaps being used by English speakers to designate fermented tea due to confusion or because the thick gelatinous film produced by the kombucha culture was thought to resemble seaweed)

恐らく昆布(コンブチャの培養によって作られた厚いゼラチン状のフィルムが海藻に似ていると考えられたか混同したかの理由で、英語話者が発酵茶を指すために使用した日本語)で作られたお茶を指す日本語の「昆布茶」が由来。

要するに、 ゼラチン状の塊を意味するコンブチャ と海藻の昆布が一緒くたになった結果として、 紅茶キノコを英語でkombuchaと呼ぶ ようになったそうです。さらに英語版Wikipediaには、1944年に飲み物ではなくゼラチン状の塊を表す単語として用いられたのが、英語で「kombucha」の単語が使われた最初だと記されています。

世界の炭酸飲料市場を席巻するコンブチャ

自動販売機にもコンブチャ。

発酵飲料のコンブチャが誕生したのは、紀元前220年頃の中国東北部。原材料の砂糖と紅茶の不足で大戦中は人気を落としますが、1960年代には「ヨーグルトと同じで腸にいい」とスイスで人気を博しました。

アメリカで広く知られるようになったのは1990年代。スイス同様に健康効果が注目されたことがきっかけでした。本格的にコンブチャが知られるようになったのが2010年。コンブチャには「アルコール飲料」と表記すべき量のアルコールが含まれているとして、米政府がコンブチャメーカーに警告を出しました。それに対してメーカーが反発することで「コンブチャって何?」と再び注目を浴びることに。

さらに、同時期にモデルやセレブが美容のためにコンブチャを愛飲していることを告白し、一気に人気が爆発しました。アメリカにおける2016年から2018年の3年間の売上は炭酸飲料が0.5%減なのに対し、コンブチャが174%増という調査結果もあります。

こうしたコンブチャフィーバーを受け、2016年11月にはペプシ・コーラで知られるペプシコ社がアメリカで、2018年9月にはコカ・コーラ社がオーストラリアで著名なコンブチャブランドの製造元を買収。炭酸飲料市場をこれまで席巻し続けた2社が獲得に乗り出したことからも、コンブチャの存在の大きさがうかがえます。

コンブチャ人気は日常生活でも明らか

街中で意識してコンブチャを探してみたところ、想像以上にコンブチャが海外では一般的な飲み物だと実感しました。

下2段はほとんどコンブチャ。

まずびっくりしたのがこのスーパー。4段あるドリンク棚のうち下2段は、下段左の青いラベルのボトルを除いてすべてコンブチャです。日本のスーパーで一種類のドリンクがこれだけ広いスペースを占めている場面はそうありません。

街中のショップには「コンブチャサーバー」も。

自動販売機など、街中でコンブチャを見る機会は多くあったなか、特に驚いたのが「コンブチャサーバー」。最初にコンブチャとボトルをセットで買えば、2回目以降は同じボトルにコンブチャを詰め替えて飲めます。

気になるコンブチャの味は?

オリジナル味はビン、ほかの2種類はペットボトルです。

コンブチャがどんな味なのか確かめるべく、買って飲んでみました。わたしが街中でよく見かけたRemedy社のコンブチャ3種類を購入。左からジンジャーレモン味、オリジナル味、アップルクリスプ味です。

どのフレーバーも見た目や匂いに大きな違いはありませんが、やはり炭酸です。

これは個人の感想ですが、3種類に共通なのは酸味の強さ。味も昆布茶とはまったく異なります。アップルクリスプが一番飲みやすかったですが、好き嫌いは分かれるでしょう。

価格はやや高いものの、近頃は日本でも購入できるコンブチャ。ぜひ飲んで、世界のトレンド最先端を味わってみてはいかがでしょうか?

池野 茜
文・写真:池野 茜

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トップ写真:Tyler Nix from Unsplash

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