古くは「スシ」「ゲイシャ」「ニンジャ」。最近では「スードク」。海を渡って世界で使われていると言われる日本語がありますが、最近ではどの国でどんな単語が用いられているのでしょうか。世界80カ国以上の現地在住日本人ライターやカメラマンの集団「海外書き人クラブ」がリレー形式で担当する連載「世界のニホンゴ調査団」。第3回は「海外書き人クラブ」メンバー、ボッティング大田朋子がイギリスからリポートします。
新聞のビジネス欄などでよく目にする言葉

記念すべき第1回はオーストラリアから「Soba(そば)」のレポートでしたが、オージーのそばレシピを見ながら「イギリスでもそれアルアル~!」とうなずいてしまいました。
イギリスでも、この数年、健康志向の人の間でそばってすごく人気があるんです。でもその食べ方といえば、アボカドディップと和えたり、そばサラダにしたり、巻き寿司のシャリの代わりに使われたり……という感じで……。
海外のそばアレンジレシピ、なんて集めれば面白そうですよねえ~!
なんて、少し話がそれましたが、今回はイギリスで新聞や雑誌を読んでいると見かける「tycoon」を取り上げたいと思います。ビジネス欄でよく出てくる単語なんですよね、この「tycoon」。読み方は「タイクーン」。“タイフーン(台風)”じゃないですよ!

英語化した日本語の語源は江戸時代
「タイクーン」とだけ聞いても、これが日本語だと気が付かない人もいるかもしれません。でもれっきとした日本語起源の単語なんですよ!
「大君」と漢字にすると、納得してもらえるでしょうか?
江戸時代に、外国人が徳川幕府の将軍のことを「大君」と呼んでいたらしいですが、それが英語化した……というか、はっきりいって私に限って言うと日本では聞いたことがなかったくらいです。
イギリスで何度か耳にしたので意味を調べたら、日本語語源だとわかった次第で。正確にいうと、「大君=Taikun」からスペルが変わって「tycoon」となりました。
意味は、「実力者やリーダー」。特に、ビジネス界での実力者や重要人物のことを指します。“business tycoon(ビジネス界の大物)”や“property tycoon(財界の大物)”のように使われます。

英語辞書にだって載っている!
ケンブリッジ英英辞典で「Tycoon」を調べてみましょう。
Tycoon
a person who has succeeded in business or industry and has become very rich and powerful「ビジネスや産業界で大成功をおさめ、非常にお金持ちで影響力がある人物」
「VIP(very important person の略)」と同じような意味ですが、日本から生まれたTycoonよりも英語のVIPの方がかえって親しみを感じたりして、なんだか面白いですよね。
始まりは日本を題材にしたベストセラー小説!?
イギリス人と話をしていると、「ダイミョー(大名)」や「ショーグン(将軍)」「ゲイシャ」といった単語をちりばめて話す人が少なくないんですよね。
日本人のわたしを相手にしているから余計こういった単語をちりばめてくる傾向は否めませんが、ベストセラーになった『Shōgun』(邦題『将軍』)や『Memoirs of a Geisha』(邦題『さゆり』)、『Gai-jin』(ガイジン)といった、日本の歴史や文化を題材にした小説の影響がいかに強いかがわかります。

まとめ

「タイクーン」が英語の文章に使われているのを見るとなんだか変な感じもしますが、「VIP」が“ヴイアイピー”や“ビップ”と日本語のコンテンツで違和感なく使われていることを思うと、お互いさまなのかもしれません。
日本では使われなくなった言葉が海を渡ってかわいがられているのって、なんだかうれしいですよね。
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