NASAのリケジョが大活躍!映画『ドリーム』の内容と見どころをご紹介

(C)2016Twentieth Century Fox

2017年9月29日(金)より、全国で公開されるセオドア・メルフィ監督の映画『ドリーム』。アメリカ初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」を支えた3人の黒人女性を描いたこの映画のおすすめポイントを、映画ライター中島もえがイラストを交えてご紹介します。英語で映画を語れる便利なフレーズも紹介しますよ。

『ドリーム』ってどんなストーリー?

米国がソ連とのし烈な宇宙開発競争を繰り広げていた1961年。キャサリン・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)の3人は、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちで構成される計算手グループのメンバーとしてNASAのラングレー研究所に勤務していました。

しかし、この時代は人種差別がまだ色濃く残っており、NASAでも人種差別は顕著なのでした。白人と黒人の使うトイレは分けられ、出世のチャンスもありません。天才的な数学者のキャサリンは、黒人女性として初めて宇宙特別研究本部のメンバーに抜擢されますが、白人男性だけの職場環境である上に、その建物には有色人種用のトイレすらなく、彼女は苦労することになります。また、エンジニアを志すメアリーは、トレーニングプログラムに参加するためには白人専用の大学に行く必要があると理不尽な条件を突き付けられます。計算手グループの管理職への昇格を 希望 しているドロシーもその 希望 を却下されてしまいます。

そんな逆境にもめげず、3人は自分たちの夢に向かって、ひたむきに仕事や人生に 取り組み ます。

米国の宇宙開発史に実在した3人の黒人女性にスポットライトを当てた本作。自分たちの前に立ちはだかるいくつものハードルを乗り越えて、NASAの有人宇宙飛行計画に多大な貢献をし、新しい時代の扉を開く彼女たちの姿が力強く描かれています。

原作本が気になる方はこちら
Hidden Figures: The Untold Story of the African American Women Who Helped Win the Space Race
 
日本語版もありますよ♪

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この映画のここが見どころ

みんなが元気になれる!

この映画は、バス、飲食店、トイレなどあらゆるものが白人用と有色人種用に分かれている、そんな人種差別のある時代に計算手としてNASAに就職した黒人女性たちを描いています。

彼女たちは、女性である上に黒人という二重の差別を受け、理不尽で悔しい思いをさせられる場面に何度も遭遇しますが、 とにかく明るく前向き です。自分たちの境遇に卑屈になったり、「こんなひどい目に遭った!」「何で私ばっかり!」と感情的に叫んだりするのではなく、 冷静に苦難を乗り越える方法を考え、自分の夢を実現することから逃げようとしません 。「仕事も家庭も充実させたい。何も諦めたくない」という彼女たちのパワフルな生き方はとてもすてきで、仕事をすることや生きることに 希望 を持たせてくれます。

「有人宇宙飛行を成功させたい」「最終的にはロケットを月まで飛ばしたい」という夢にまい進する彼女たちにとっては、差別なんてたいした障害ではなかったのかもしれません。彼女たちを見ていたら、些細なことで愚痴ってしまう自分が恥ずかしくなりました。

人種差別や男女差別を扱っている作品は、やたらと悲惨で暴力的な描写が多いものですが、この作品にはそういうところがないので、「暗い映画はちょっと……」という人にもオススメです。誰でも楽しめて最後は元気になれると思います。

リケジョに萌える

(C)2016Twentieth Century Fox

「理系のバリキャリ」女性というと、「頭はいいけれど可愛げがなくて、仕事のために女を捨ててそう」なんてイメージが浮かんで来るかもしれませんが(私だけ?)、この映画に登場する女性たちはとってもチャーミング!彼女たちのユーモアあふれる会話からも、それが伝わってきます。友人同士で過ごす気楽な場でも、真剣な仕事の場でも彼女たちは常にその状況を楽しむ余裕を持っています。

逆境に立たされているときでも、上司や 同僚 に憎たらしい口をきいて食って掛かるのではなく、クスッと笑えるウィットに富んだ皮肉や、スッと納得できてしまう説得力のある発言でその場を乗り切ります。

仕事を頑張っている彼女たちは、プライベートだって充実させています。職場から離れれば、優しい母親として子どもたちと過ごしたり、妻や恋人として夫や好きな男性と過ごしたり……仕事が大変だからプライベートは諦めるなんて考えはないのです。職場でのキリッとした美しさとプライベートでのほんわかした可愛らしさのギャップに萌えます。

そして 彼女たちのファッションも、この映画の見どころの一つ です。60年代初期のアメリカ南部のファッションがベースになっているそうですが、カラフルでシックなデザインの彼女たちの服装には、男性に合わせてモノトーンのカッチリした服を着るのではなく「自分らしい、自分に似合ったものを着ますから」という心意気が現れています。

あなたの知らないNASA

(C)2016Twentieth Century Fox

この作品には、NASAについて「へー、そうだったんだ!」と驚かされることがたくさん盛り込まれています。

まず、「人間コンピューター」と呼ばれる人たちが、 ロケットの軌跡や再突入の角度など複雑な計算を「人力」 で行っていた ことに驚きました。デジタルのスーパーコンピューターが登場する前の時代のことなので当然と言えば当然なのですが、人間がやっていたとは!キャサリンが黒板にチョークでスラスラと複雑な数式を書いて計算するシーンには圧倒されます。

作中、IBMのコンピューターが導入されるシーンがあるのですが、今私たちが使っているパソコンとは全く違う 形状 で、これまた驚かされます。一部屋丸ごとコンピューターという感じです。

このコンピューターが導入された時に、ドロシーがある印象的なアクションを起こすのですが、私はそれにとても心を打たれました。

また、 当時NASAの中で人種差別や男女差別があった ということにも、少し驚きました。NASAのような宇宙規模で物事を考えるような職場には、そんなことを気にするような人間はいないでしょ?というイメージがあったので、意外でした。

この他にも、当時のNASA内部(研究施設や事務室、コンピュータールーム、トイレなど)の様子や、米国とソ連の宇宙開発競争が激化していく中で職員たちがピリピリしている雰囲気を知ることができ、ちょっとした見学気分を味わえます。

宇宙飛行士が密かにイイ男

(C)2016Twentieth Century Fox

主役の女性たちの存在感があり過ぎてうっかり見落としてしまいそうになりますが、この映画の舞台はNASAですから、宇宙飛行士もちゃんと登場します。そしてこの 宇宙飛行士のジョン・グレンが、女性に優しいさわやかな好青年 なので、ちょっとしか出てきませんが要チェックです。

「女性であれば肌の色など関係ない」という感じで、この人がある意味一番差別や偏見を持たずにキャサリンたちに接していました。ジョン・グレンを演じたグレン・パウエルは『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』という作品で、女の子が大好きなおバカ大学生の役を演じています。今回はその役とは打って変わって知性的なジェントルマンを演じていますが、彼の「女性大好き」オーラは健在でした。

他にも、キャサリンが配属された宇宙特別研究本部の上長、アル・ハリソン(ケビン・コスナー)や、キャサリンの恋人、ジム・ジョンソン(マハーシャラ・アリ)といったすてきな男性たちが脇を固めています。

この映画は、困難を乗り越えて自分の才能を発揮する女性たちを描いた「お仕事ドラマ」としても、米国の人種差別や宇宙開発史を描いた「社会派ドラマ」「宇宙ドラマ」としても、見応えがある作品です。

この映画を語るときに使える英語フレーズ

This was based on a true story.

この映画は実を基にしてます。

『ドリーム』の内容を説明するときに使えますよ。
What was normal then would be very different from now.以前は普通だったことも、今から見るとずいぶん違います。
白人と黒人のトイレが異なる、複雑な計算を人力で行うなど、今では考えられない昔の「普通」を語るときに使える表現ですね。

こちらは「1000時間ヒアリングマラソン」の映画コーナーからの 抜粋 です。映画を英語音声で聞き取れるようになるための練習や、ネイティブスピーカー同士の映画を見た感想なども「1000時間ヒアリングマラソン」に教材として収録されているので、興味があるかたはぜひ!

次はどんな映画を見ようかな~♪

映画情報

『ドリーム』は2017年9月29日(金)から全で公開です!

www.foxmovies-jp.com
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文・イラスト:中島もえ
イラストレーター・編集者・ライター。面白い映画を探して試写会を渡り歩く。映画鑑賞のほか、動物園や水族館、美術館めぐりが趣味。野菜作りも好きで、東京・三鷹の菜園インストラクターの資格を 取得WebsiteInstagram

構成・編集:Natsue Tanaka(GOTCHA!エディター/ライター)

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