日本企業とグローバル企業の戦略の立て方の違いとは?グローバルビジネス・コンサルタントに聞く【英語音声付き】Vol. 1

100社以上の大手日系・外資系企業で、異文化ビジネス研修や講演活動を行っているグローバルビジネス・コンサルタントのジョン・リンチさん。日本型とグローバル型のビジネスの強みや、それらをどのように融合できるのかなど、お話をお伺いしました。第1回は、日本企業がグローバル化を目指す場合に知っておきたいことについて、英語音声付きで紹介します。

※本記事はENGLISH JOURNAL2021年9月号に掲載した内容を再編集したものです。

step1 インタビュー音声の情報を確認しよう

形式:1対1のインタビュー
難易度:level3 ★★★☆☆
速さ:標準
話し方の特徴:イギリス英語。1文1文が短めで簡潔。ビジネスコンテンツに慣れている人には非常にわかりやすい説明。

step2 インタビューの背景を確認しよう

ジョン・リンチさんは、イギリス出身のグローバルビジネス・コンサルタントです。日本のビジネスの強みと、グローバルビジネスの価値観を合わせた独自のビジネス理論を広めるために、2010年にコンサルティング会社、J-Globalを設立。以来、100社以上の大手日系・外資系企業で、異文化ビジネス研修や講演活動を行っています。

今回のインタビューでは、日本型、グローバル型、それぞれのビジネスのやり方の強みと、それらをどのように融合できるのか、独自の着眼点である「三つのF」とは何か、グローバルビジネスで求められる英語力とは、さらに、オンライン会議の円滑な進め方について、具体的に教えてくださいます。

step3 音声を通して聞いてみよう

まずは、約2分のインタビュー音声を通しで聞いてみましょう。

step4 数パートに区切ってスクリプトを見ながら内容を理解しよう

EJ: Japanese companies often ❶seem to have a very fixed ❷mindset, so what sort of things do you do to help them if they ❸are about to make a change?

Jon Lynch: What we would ❹typically do if we have a ❺change project for a Japanese company, usually people will come to us and say, “We have a new ❻strategic direction,” or, “We have a new three-year plan that requires us to do more global work,” or, “The ❼leadership is changing,” or ❽for some reason, maybe, “The ❾competitors are getting too strong and we need to ❿innovate more.” Whatever it may be . . . Also, sometimes, “The industry is changing, and we have to develop something new.”

So, this happens. What we’ll do is, ⓫first of all, we’ll say, well, “Do you have a strategy?” And they say, “Yes, we do.” And then we say, “Please show us.” And they say, “Ah, it’s not ⓬written down.”

EJ:日本の企業はよく、とても凝り固まった考え方をするように思えますが、彼らが変わろうとしているとき、彼らを手助けするためにあなた方はどんなことをするのですか?

ジョン・リンチ:私たちが通常どうするかと言いますと、日本企業で変革プロジェクトがある場合、たいていは担当者が私たちの所に来て言います、「新たな戦略の方針がある」「よりグローバルな仕事に力を入れなければいけない新たな3年計画がある」「上層部が変わる」、ほかにはなんらかの理由、例えば「競合他社があまりに強力になってきているので、わが社はより革新しなければならない」だとか。それがなんであれ……さらには、時として、「業界が変わっているから、何か新しいものを開発しなくてはいけない」だとかね。

とにかく、こういうことがあります。私たちが何をするかというと、第一に、ええと、「何か戦略がありますか?」と聞きます。すると彼らは、「はい、あります」と言います。そして私たちは「見せてください」と言う。すると彼らは、「ああ、文書化はされていません」と言います。

❶seem to do ~のように見える、~のように思われる ❷mindset 考え方、思考態度 ❸be about to do ~しようとしている ❹typically 典型的に、通常は ❺change project 変革プロジェクト ❻strategic 戦略的な、戦略の ❼leadership 指導者、首脳部、リーダー ❽for some reason なんらかの理由で ❾competitor 競争相手、競合会社 ❿innovate 革新する ⓫first of all 第一に、始めに ⓬write down ~ ~を書き留める

So, Japanese companies don’t need a clear written strategy because everybody is ❶flexibly working together and doing “kaizen” and ❷bottom-up work. And so they don’t need to be told exactly, “Where are we going?” and, “What are the ❸milestones?” ’Cause they’ll get there ❹somehow. But non-Japanese people need to know, “Where are we going?” otherwise, they’ll go in a different direction or they’ll be lost.

So, what we do is, we’ll create that strategic document. So a Japanese company, typically they’ll say, “This is our strategy, but it’s just a kind of ‘chuki keikaku.’” It’s just like a ❺midterm plan with ❻financial goals, but it doesn’t tell each department how to ❼collaborate or exactly what each department’s goals are gonna be, or each department makes their own plan, but they don’t share.

つまり、日本企業は明確に文書化された戦略は必要ない、なぜなら全員が柔軟に協力して働き、改善したりボトムアップで仕事をしたりしているからです。そのため「われわれはどこに向かっているのか?」や「道しるべは何か?」など、はっきりと告げられる必要がないんですね。なぜなら、彼らはどうにかしてそこに到達しますから。ですが、日本人でない人々は「われわれはどこに向かっているのか?」を知る必要があって、そうでないと、違う方向に進むか、進むべき方向を見失ってしまうからです。

ですから、私たちが何をするかと言うと、その戦略の資料を作ります。日本企業は典型的に、「これがわが社の戦略ですが、通常の中期計画みたいなものです」と言います。それは財務目標を定めた中期計画のようなものなのですが、各部署にどのように協力して働くのか、もしくは各部署の明確な目標はどうなるのかを告げたりはしませんし、各部署が独自に計画を立てたとしても、それを共有しなかったりします。

❶flexibly 柔軟に ❷bottom-up (組織の意思決定などが)ボトムアップの、下位から上位への ❸milestone 道しるべ、節目 ❹somehow どうにかして、ともかく ❺midterm 中期の、中間の ❻financial goal 財務目標 ❼collaborate 協力する

So, once we have a strategic document, then we’ll do some ❶workshops, like with some managers — “Where are we now? What’s the goal?” Do ❷gap analysis. “How do we make this change? How do we change our mindset?” Maybe they have a ❸company philosophy — “These are our ❹values.” But those values are what made them great in the past, and they maybe need to change the values a little bit. So then we need to add some new ones — keep the good old ones, but add some new ones, that kind of thing. And so then we can make a plan on how to do workshops and activities to make people think about the good parts of the old values and also the good parts of the new values and how we change our ❺behaviours.

そうして、いざ戦略の資料ができたら、管理職数人と研修を行います――「私たちは今どこにいるのか?ゴールはどこか?」 ギャップ分析をするのですね。「どうやってこの変更を遂行するか?どうやってわれわれの考え方を変えるか?」 彼らに企業哲学があるかもしれません――「これがわが社の価値観だ」。ですがその価値観は、かつてその会社を繁栄させたもので、その価値観は少し変える必要があるかもしれない。そうすると、いくつか新しいものを加える必要が出てきます――従来のよいものは残しつつ、新しいものを付け加えるというようなことです。そうすることで、従来の価値観のよい点や、また、新しい価値観のよい点、どうやって自分たちの行動を変えるのかについて社員に考えさせるための研修や活動をどのように行うかを私たちは計画することができます。

❶workshop セミナー、研修会、ワークショップ ❷gap analysis ギャップ分析 ❸company philosophy 企業哲学、企業理念 ❹values 価値観 ★この意味では通例、複数系。 ❺behaviour 行動様式、態度 ★イギリス式つづり。アメリカ式はbehavior。

step5 もう一度音声を通して聞いてみよう

最後にもう一度通しで聞いて、内容を理解できるか確認してみましょう。

ジョン・リンチさんのオンラインコーチングもチェック!

ジョン・リンチさんがCEOを務めるJ-Globalが、世界で活躍するビジネスパーソンを育てる「J-グローバル 異文化ビジネススクール」を開校しました。興味のある方はぜひ無料オンラインコーチングを受けてみてはいかがでしょうか。

インタビューの続きは2月6日(月)公開予定です。次回は「グローバル企業が大切にしたい3つのF」についてお話を伺います。

Jon Lynch(ジョン・リンチ)
Jon Lynch(ジョン・リンチ)

ビジネスコンサルタント。1969年6月19日、イギリス生まれ。株式会社J-Global CEO、グローバルビジネス・コンサルタント。1990年にイギリスのブリストル大学を卒業し、来日。株式会社リンクグローバルソリューションで国際ビジネス・コミュニケーションスキルの指導を行う。1995年には東京理科大学でライティング、プレゼンテーションの講師を務め、2010年に株式会社J-Globalを設立。以来、100社以上の大手日系・外資系企業で、日本とグローバルのビジネス、それぞれの強みのベストミックスである「J-Global 型ビジネス」を広める研修や講演活動を行っている。

インタビュー:大井明子 翻訳:春日聡子 写真:山本高裕(編集部)

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