構文を意識して読解しよう!空欄の前後関係に着目する問題【難問クイズで学ぶ文法知識⑭】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第14回は空欄の前後関係がカギとなる穴埋め問題です。

クイズ

So intently does the film concentrate on this human and vulnerable side of Napoleon, ( ) it attributes two of his most consequential actions—his return to France from Egypt in 1799, and his escape from exile in 1815—entirely to the love story, rather than to the political calculations which were actually uppermost in his mind.

― “Why We’re Still So Obsessed With Napoleon” TIME

文脈:なぜ人々が今なおナポレオンに魅力を感じ続けるのかについて述べた記事からの抜粋です。1行目のthe filmはリドリー・スコット監督による2023年のナポレオンの伝記映画のことを指していて、問題文の直前の箇所ではこの作品がナポレオンの人間的な側面、特にジョゼフィーヌ・ド・ボアルネとの恋愛に焦点を当てたものだということが説明されています。

空欄に入るのは?

(1) which
(2) that
(3) if
(4) where

単語・語句

  • vulnerable:「弱い、傷つきやすい」
  • attribute A to B:「Aの原因をBに帰す」
  • exile:「追放、追放された状態(ここではエルバ島に追放されていたことを指す)」
  • calculation:「打算」

ヒント

文の出だしの形に加え、空欄の前と後が意味的にどのような関係になっているかを理解することもポイントです。

つまずきポイント

コンマ(,)があることから、thatはダメと思い込んでしまうと間違えるかも。

まずは、出だしの部分ですが、So intensely「非常に強烈に」という副詞句の後に、does the film concentrateと、does SVという疑問文のような語順が続きます。このようにso+副詞やso+形容詞が文頭に出た場合、後に続く節の形は助動詞と主語が倒置する疑問文と同様の形になるということをしっかりと確認しましょう。

So rapidly did he talk
So compelling was her story

また、このような出だしで始まった文は多くの場合、後ろにthat節が続き、so+副詞/形容詞とthat節が呼応して因果関係を表すso… that~構文「非常に…なので、~」となっていることが多い、というのも大きなポイントです。

So rapidly did he talk that nobody could catch his words.
「彼はあまりに速く話したので、誰も彼の言葉を聞き取れなかった」

So compelling was her story that we all believed it.
「彼女の話はあまりに説得力があったので、私たちはみなそれを信じた」

以上のような文法、構文の知識があれば、空欄のところに入るのはthatではないかと最初から予想してこの英文を読めるはずです。後は、空欄の後の内容が前半の「この映画がナポレオンの人間的で弱い部分をあまりに重点的に描いている」ことの結果として成り立つものになっていれば、この解釈が正しいと自信を持って判断できるでしょう。

それでは、空欄以降の部分に目を向けてみましょう。長い目的語や前置詞句が入っていて少し複雑です。it (S) attributes (V)という節の骨格をつかむと同時に、attribute A to B「Aの原因をBに帰する、AをBに起因するものとみなす」という語句の知識を生かして後ろにA to Bの形がくるのではないかと予想できたかどうか。attributeが動詞で使用されている場合、たいていはこの形だと考えて問題ありません。こうした予想があると、ダッシュ(―)で挟まれた挿入語句などにも惑わされずに、

attributes
two of his most consequential actions(=A)
entirely to
the love story (=B)

という構造をつかめるでしょう。ダッシュで挟まれた挿入部分はtwo of his most consequential actions「彼の行動の中でも最も重大な結果をもたらすこととなった2つ」を具体的に説明したものとなっています。さらに、the love storyの後に続く、rather than to…の箇所は、to the love storyとto the political calculations…をA rather than B「BではなくA」という形でrather thanが並列させる形になっています。

to the love story (=A)
rather than
to the political calculations…(=B)

まとめると、空欄部分で言われている内容は「その映画がナポレオンの行動の中でも最も重大な行動の2つの原因を政治的打算ではなく恋愛に帰している」となり、これは上で見た「この映画がナポレオンの人間的で弱い部分をあまりに重点的に描いている」という前半部の結果として自然に受け入れることができるため、やはり、空欄にthatを入れて意味上も何ら問題ないと判断できます。

なお、関係代名詞の場合、非制限用法と呼ばれるコンマ(,)が付くパターンはwhoやwhichでのみ可能で現代英語ではthatはこの用法では使わないとされています。

(〇) I invited John, who is part of my team as well.
(×) I invited John, that is part of my team as well.

しかし、今回の空欄に入るthatは関係代名詞ではなくsoと呼応してso…that構文を形成する副詞節のthatであるため、前にコンマ(,)あっても大きくは影響しません。

正解 (2)

この映画はナポレオンの人間的で傷つきやすい一面を重点的に描くあまり、彼の2つの最も重大な行動、すなわち、1799年のエジプトからフランスへの帰還と1815年のエルバ島からの脱出の要因を完全に恋物語によるものであるとし、実際には彼の頭の中で最優先事項だった政治的な打算によるものとはしていない。

前回までのクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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