自己紹介のコツをつかもう【ひびく英語スピーチ】

連載「ひびく英語スピーチ」の1回目は、自己紹介です。プライベートでもビジネスでも、自分を相手に紹介する機会は多くあります。これを機に、最も身近なスピーチである、自己紹介のコツをつかみましょう。

英語だから簡単!人前で話すこと

人前で話す、しかも英語でとなると、トライする前から諦めてしまいそうですが、実は「英語」でやるから、簡単なのです。その秘密を小坂先生に伺いました。

突然やってくる「ひと言、お願いします」

英語でのパーティーの席で、突然、「何かひと言、お願いします」と言われた。はたまた、英語しか話せない新しい社員を迎える会で、歓迎の言葉をお願いされた。こんな経験はありませんか。こんなことを頼まれた瞬間から、パーティーが苦痛に感じられ、楽しめなくなってしまったり。英語で話す機会がありそうな歓迎会や送別会には顔を出さなくなってしまったり。これでは元も子もありませんね。

英語には自信がないけれど、できるだけ効果的に相手の心にひびく、気の利いたひと言が言いたい。そんな方のために、人前で話すコツをご紹介します。スピーチの経験がなくても、英語を流暢に話せなくても、コツさえつかんでおけば大丈夫です。英語で話す可能性がある大勢の集まりにも、臆することなく参加でき、さらに、ちょっとした英語のスピーチもできるようになります。

人前で英語を話すのは得意?

さて、先ほどのケースを思い起こしてみましょう。

  • パーティーの席で突然 「何かひと言、お願いします」 と言われた。
  • 英語しか話せない新しい社員を迎える会で、歓迎の 言葉をお願いされた。

どちらも、人前で話すこと (=パブリックスピーキング)が前提となっています。日本語でも危ういのに、 なぜ英語で、しかも人前で話すのか。そう疑問に思った方もいることでしょう。でも、ご安心 ください。実は、英語だからこそ、やりやすいのです。

次のことを覚えておいてください。日本に比べ、英語圏では人前に出る機会が多いために、英語にはパブリックスピーキングのための表現が豊富にあるという こと。さらに、日本人同士の付き合いがメインの日本 と比較すると、英語圏では、バックグランドの異なる 相手と人間関係を築く上で、自分について話す機会が 圧倒的に多くなるということ。つまり、人前で話すことを得意にさせてくれるツールや環境が備わっている英語を使って練習をすれば、最短コースで、「パブリック上手」に近付けるのです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、筆者の経験でもありますので、実証済みです。しっかりコツをつかんで、英語で、効果的に人前で話せる自分に近付きましょう!

自己紹介のコツをつかもう

プライベートでもビジネスでも、自分を相手に紹介する機会は数多くあります。これを機に、最も身近なスピーチである、自己紹介のコツをつかみましょう。

まずは自分の名前をはっきりと伝えよう

歓送迎会、新年パーティーなど、自己紹介はあらゆる場面で使える基本的なスピーチです。司会者が紹介してくれる場合もありますが、よほど正式な場でない限り、自分で自分を紹介できるくらいの準備はしておきましょう。

まずは、自分の名前をはっきり言うことをお忘れなく。そして「笑いを取れば大成功、そうでなくても、ほのぼのと」。これを覚えておいてください。ビジネスだろうが、プライベートだろうが、ちょっとしたユーモアは、好かれるための必須アイテム。できれば、いつも使えるパターンを幾つか引き出しにしまっておきたいですね。

自分を覚えてもらうためのエピソードを交えよう

スピーキングの参考書にありがちな、取って付けたような自己紹介では逆効果です。聞いている相手に時間の無駄と思わせるような内容ではいけません。英語が下手でも、流暢でなくても構いません。たった一つでいいので、相手があなたのことを覚えてくれるようなエピソードを織り込んだ自己紹介を、心掛けてください。

では、私の自己紹介を例に見てみましょう。

カナダに出張に行った際、名刺交換の後、相手の名字をうまく読めた私を、その相手は褒めてくれました。「名字をちゃんと発音してくれたのは、あなたが初めてです」と。このあたりのエピソードをヒントに作ってみた自己紹介です。

Hi, everyone! I’m Takashi Kosaka. I’m very happy to see you all. People I meet often guess wrongly that I’m probably from somewhere like Russia, because my last name sounds similar to Cossack. Well, actually, I’m not a Russian nor from somewhere like Russia. My wife loves to eat Russian dishes, though! I’m looking forward to getting to know each other well.

皆さん、こんにちは!小坂貴志と申します。皆さんにお会いできてとてもうれしいです。お会いする方はよく、私がおそらくロシア当たりの出身ではないかと勘違いしますが、それは、私の名字(コサカ)が、コザックに発音が似ているからでしょう。でも、実は、私はロシア人でもなければ、ロシアのような場所の出身でもありません。でも、妻はロシア料理が大好きです!私たちがよりよく知り合えることを楽しみにしています。

「よろしくお願いします」という気持ちを英語で表現するには

おそらく耳にタコができるくらいに聞き知っているかもしれませんね。日本語の「よろしく」に相当する英語表現はない、ということを。ちなみに、「よろしくお願いします」を英語にすれば、Please treat me as you feel is appropriate.となりますが、実際のコミュニケーションでは、こんな表現にお目にかかったことはありません。

会話の場合、日本語で「よろしく」に相当する言葉は

Nice meeting you.

です。これは、通常、握手をしながら冒頭に言うNice to meet you.に呼応する、場を辞すときのあいさつになります。会話の場合にはそうですが、パブリックスピーキングでは、

I’m looking forward to doing

が相当します。

次回は、スピーチの流れについて紹介します。どうぞ、お楽しみに。

小坂貴志(こさかたかし)
小坂貴志(こさかたかし)

東京国際大学言語コミュニケーション学部教授。専門分野は異文化コミュニケーション研究。パブリックスピーキング関連の主な著書に『 ビジネスで使える 英語の1分間スピーチ 』、『 とっさのときに困らない 英語の30秒スピーチ 』(いずれも共著、研究社 刊)がある。

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