英語の「動詞」:苦手を得意に変える問題5選【大竹保幹の英文法パラダイス】

新連載「大竹保幹の英文法パラダイス」。現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。第1回は「動詞」から!

パラダイスの住人を目指そう!

英文法は好きですか?それとも嫌いですか?

初めの頃は楽しく覚えられていた英文法も、学習が進むにつれて手のひらを返すように細かい規則やら例外を突き付けてきます。知るべき内容が多すぎて英語の勉強に嫌気がさしてしまった、なんてことは誰にだってあるのではないでしょうか。

でも、待ってください。英文法はいろいろあるから楽しいんです!

たくさんある決まりは、自分の思いを少しでも正確に相手に伝えるためのもの。英文法には魅力がたくさん詰まっているのです。

ここ「英文法パラダイス」では、毎回みなさんの文法知識を試すかのように、さまざまな英文が現れます。その多くは正誤の判断を迷ってしまいそうな要素を含んでいますので、どこが変なのか、あるいはなぜ正しいのかをじっくりと考えてみてください。なかなか難しいものもありますが、正面から向き合い続ければ必ず英文法と仲良くなることができます

みなさんもいつかはこのパラダイスの住人になれるかもしれませんよ。

パラダイス行き切符を手に入れる問題

次の(1) ~ (5) の英文について、正しいかどうかを判断してください。
正しい:〇  間違っている:×  ちょっと怪しい:△

(1) I have got up at four o’clock.

(2) Now, my brother is living in London.

(3) We are lucky! The school bus is stopping at the gate.

(4) You said that the sun went around the earth.

(5) If he will help us, we’ll be able to complete this project.

これらの英文を見て、何がテーマになっているか分かりましたか? もしかしたら動詞がテーマなのかも、と思った人は正解が多いかもしれませんね。

そう、今回試されているのは「動詞の形」です。

英語ではその出来事がいつ起こったのか、それがまだ続いているのか、それともすっかり完了しているのかをすべて動詞を使って表現します。私たちが文を作る根本的な理由が「誰が何をしたのか」を伝えることだとしたら、英語において動詞がいかに重要な役割を担っているかということがよく分かりますね。

それでは、早速一つ一つの英文について、じっくりと見ていくことにしましょう。

解答と解説

(1)

答え:〇 I have got up at four o’clock.

ぱっと見た印象では「間違いなんじゃないか」とさえ思ってしまいますが、この英文は正しい英文です。でも、もちろん「私は4時に起きました」という意味ではありません。単純に「~した」ということを表すには過去形を用いますので、その場合はI got up at four o’clock today. とするのがよいでしょう。「いつ」それを行ったのかを伝えるのが過去形の役割です。

改めてこの英文を見てみると、動詞が「have + 過去分詞」の形をしています。これは現在完了形ですね。過去形と違い、現在完了形にとって「いつ」はあまり重要ではなく、それが現時点で「完了しているのか」「続いているのか」それとも「経験したことなのか」を伝えます。話の流れでさまざまな意味に解釈されるので少しやっかいなのですが、普通はjust(ちょうど)、already(すでに)、for years(何年間も)などの副詞と共に使われるのであまり迷うことはありません。

「~したことがある」という現在完了形

この英文の場合はどうでしょうか。at four o’clock(4時に)とあるので、「今起きたよ(完了)」でも「何日間も起き続けてるよ(継続)」でもありません。となると、「起きたことあるよ(経験)」を表しているのだなと考えることになります。

I have got up at four o’clock.
俺、4時に起きたことあるよ。

早起き自慢なのでしょうね。小さい頃に一度くらいは言ったことがあるやつです。

では、次の英文はどうでしょうか?

I have finished my homework at midnight.

「真夜中に宿題を終わらせたことがあるんだぜ」って、そんな自慢されても困ります。宿題が終わったのかどうかはきちんと伝えてください。

(2)

答え:〇 Now, my brother is living in London.

know(知っている)、have(持っている)、live(住んでいる)は動詞ですが、talk(話す)、run(走る)、sing(歌う)などとは少し違う性質があります。talkやrunはその動作の始まりと終わりがかなり意識的に行われますが、knowは一度誰かのことを知ったらずっと知っているでしょうし、ある場所に住むことになったら基本的にはliveの状態が継続されます。英文法ではtalk、run、singなどを「動作動詞」、know、have、liveなどを「状態動詞」と分類しています。

have(持っている)は何かを手に持っている「動作」じゃないかって?

いえいえ、haveは「所有している」ことを表す語なので、手から放してもずっと自分のものです。実際に手で持つのはholdという語を使います。力持ちでなくてもI have a car. と言って大丈夫なのはhaveが状態動詞だからなのですね。

状態動詞は、その状態がずっと続くのが当たり前のことなので進行形(be + V-ing)とはあまり相性が良くありません。I am knowing your name.(今だけは君の名前を知ってるよ)というのはちょっと想像しにくいですよね。だから基本的には「状態動詞は進行形にしない」と覚えてもらってかまいません。

「一時性」を強調する進行形

しかし、この決まりをあえて破ってまで進行形で使うこともあるというのは知っておいてください。つまり、「一時性」の強調です。

Now, my brother is living in London.
今、うちの弟はロンドンに住んでいます。

例えば、弟が大学生だとして、今までは東京の実家で一緒に暮らしていたけれども、現在は短期留学などで一時的にロンドンに住んでいる、という状況にはこの表現がぴったりです。My brother lives in London. と違って、近いうちに日本に戻ってくることが分かりますね。

(3)

答え:△ We are lucky. The school bus is stopping at the gate.

時間ギリギリに到着したのでしょうか。「ラッキー!まだスクールバスが門のところで止まっているよ」と言いたいのでしょうが、このままでは少しだけ違った意味の英文になってしまいます。

stopは「止まる」という動作を表す動詞なので進行形にしても何の問題もないのですが、それが表す意味は「止まっている」にはなりません。これには進行形が表す意味をよく知る必要があります。

「まだ完全に終わっていない」ことを意味する進行形

進行形はある動作をしている最中であることを伝えます。「何かをしている途中だ」というのは言い換えると、「まだ完全に終わっていない」ということでもあります。つまり、進行形は継続や未完了の動作に使われるということです。なるほど、たしかにI am eating a hamburger. なら間違いなく「ハンバーガーを食べている途中」ですから、食べ切っていないことが分かります。

では、stopはどうでしょうか。この動詞はeatなどとは違って動作が一瞬で完了してしまいますよね。die(死ぬ)という語も動作自体は瞬間的なことです。こういった動詞が進行形で使われると、「止まろうとしているんだけどもまだ完全には止まっていない」状態を表すことになるので、「~しつつある」という意味になるのです。 

The school bus is stopping at the gate.
スクールバスが門のところに止まりつつあるよ。

確かに、門に止まりかけているのが見えるのならバスには間に合うでしょうし、実際ラッキーなのかもしれません。ただ、「停車中だよ」と伝えたいのであれば、こんな風に言わなくてはいけません。

The school bus is (standing) at the gate.
スクールバスが門のところで停車しているよ。

予約したタクシーなどであればThe taxi is waiting.なんて言ってもいいですね。

(4)

答え:〇 You said that the sun went around the earth.

「時制の一致」という言葉を聞いたことがありますか?簡単に言えば、say(言う)やthink(思う)などが過去形で使われているならば、一緒に使われるthat節内も同じように過去形に整えるという規則です。例えば、Naoto says that he can come.(ナオトは来られると言ってるよ)という文を過去の話にするなら、Naoto said that he could come.(ナオトは来られると言ってたよ)のようにsayとcan comeを同時に過去形に変化させることになります。

「時制の一致」の例外

ところが、この「時制の一致」にも例外があるのでした。それは「普遍の真理」というもので、誰もが常識的に知っていることや科学的に証明されていることはthat節内であっても現在形のまま変化することはありません

Yuri said that water boils at 100℃.
水は100℃で沸騰するのよとユリは言った。

これはいついかなるときでも、常に成立することだからです。実はこれと同じ原則が普遍の真理以外にも使われることがあります。

Naoto said that he plays basketball every day.
(毎日バスケしてるんだとナオトは言った)

ナオトの発言こそ過去ではありますが、バスケをする習慣が今でも続いているのだと伝えたいときはthat節内の時制を無理に過去形にする必要なんてないということなのです。

回りくどくなりましたが、(4)の英文はぱっと見た感じでは何となく科学的な内容のようですが、時制を一致させているので普遍の真理なんかではありません。「君は太陽が地球の周りを回っていると言ったじゃないか」と相手の言い間違いをとがめている発言なのでした。

気を付けなくてはいけないのは、普遍の真理かどうかは本人が何を信じているかによるということです。

You said that the sun goes around the earth.

過去形を使い忘れてうっかりこんなことを言ったら、ギョッとされてしまいますね。

(5)

答え:〇 If he will help us, we’ll be able to complete this project.

when(~のとき)やif(もし~なら)など「時や条件」を表す節内は未来のことであっても現在形を使うのだと徹底的に叩き込まれたみなさんは、(5)の英文に少しびっくりするかもしれません。でも、この英文は文法的にも意味的にも正しいものなのです。

まずは基本の決まりを確認しましょう。

If it rains tomorrow, the game will be put off.
もし明日が雨だったら、試合は延期になります。

「もし明日が雨だったら」の部分が、試合が延期になる「条件」を表しています。試合の延期はこれからのことなのでwillが使われていますが、if節内は例の決まりにより現在形です。これは、主節のwillのおかげでif節の中にまでわざわざwillを使わなくても未来の話だと分かるから、という理屈で説明されたりします。

主語の「意志」を表現するwill

では、(5)の英文のようにあえてif節内にwillを使うということは、どういうことなのでしょう。実はそこには、willが持つ「意志」を表現したいという思いが込められているのです。

If he will help us, we’ll be able to complete this project.
彼が手伝ってくれるのなら、このプロジェクトを完成させることができるでしょうね。

もちろん、この英文はIf he helps usとしても間違いではありません。しかしここにあえてwillがあることで主語heの意志を表し、「手伝おうとしてくれるなら」というニュアンスを生み出すことができるわけですね。なかなか高度な英文法でした。

まとめ

いかがでしたか?

今回はほとんどが英文として文法的に成立しているものだらけでした。英文法には守らなくてはいけないルールがたくさんありますが、案外自由なところもあったりするのです。ということは、「通じればいい」くらいの気持ちで適当に英語を使ってしまうと、意図していないところで変な誤解を生んでしまうこともあるということです。

動詞は基本的にはどの英文にも使われます。動詞の形一つで英文の意味が大きく変わってしまうわけですから、英語を使うときには特に慎重に扱わなくてはいけませんね。

大竹保幹
大竹保幹

明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立多摩高等学校教諭。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。著書に『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』『まんがでわかる「have」の本』(いずれもアルク)『APPLAUSE LOGIC AND EXPRESSION Ⅰ~Ⅲ』(開隆堂出版)など。

本文写真:Joe Yates, Paul Szewczyk from Unsplash

大竹保幹さんの本

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』では、「仮定法」をはじめとする、子どもが抱きそうな疑問・質問に対して、ある程度答えられるように英文法の基礎を学ぶことができます。英語を学ぶ面白さに触れられる雑学的な小話も随所にあり、楽しみながら英文法を復習できます。

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