挿入された節の構造を問う問題【難問クイズで学ぶ文法知識⑨】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第9回は提示された英文と最も近い文法現象を選択する問題です。

クイズ

I spoke of my desire of finding a friend—of my thirst for a more intimate sympathy with a fellow mind than had ever fallen to my lot; and expressed my conviction that a man could boast of little happiness who did not enjoy this blessing.

“I agree with you,” replied the stranger; “we are unfashioned creatures, but half made up, if one wiser, better, dearer than ourselves—such a friend ought to be—do not lend his aid to perfectionate our weak and faulty natures.

―Mary Shelley: Frankenstein

文脈:SF小説の先駆的作品とも言われるメアリー・シェリーの傑作『フランケンシュタイン』から。抜粋したのは冒頭近くで、物語の最初の語り手であるロバート・ウォルトンが北極海で助けた男(=ヴィクター・フランケンシュタイン)とのやり取りを姉に向けた手紙の中で描いているシーンです。

下線部と最も近い文法現象が起こっているのは次の(1)~(4)の下線部のうちどれ?

(1) Reputation is certainly important, but more important is his opinion.
(2) I bought a new camera. And a very expensive camera it was.
(3) Is the room completely empty? - It should be.
(4) This group is active. I look forward to their presentation.

単語・語句

  • thirst for…:「…に対する渇望、強い望み」
  • intimate:「親密な」
  • fall to one’s lot:「(偶然)…に起こる、…に手に入る」
  • perfectionate:「(補って)完璧にする」
  • faulty:「欠陥のある」

ヒント

下線部分と前の部分との関係はどういうものだろう?

つまずきポイント

such a friendを1つの名詞句のカタマリとみなしてしまいやすい。

まずは語り手のセリフから見ていきましょう。Iを主語として、spoke…とexpressed…という動詞句が; andで並列されている形です。前半では、ダッシュ(―)以下のof my thirst for … my lotがof my desire of finding a friendをより詳しく言い換えていること、また、関係代名詞のような形で用いられたthan節がポイントになります。後半では、my conviction「私の信念」の内容を説明している同格のthat節内で、最後のwho…this blessingという関係代名詞が節の主語であるa manを修飾している点、this blessingが「親しい友人がいるということ」を指している点を見落とさないようにしましょう。

前半

後半

続いて、フランケンシュタインの応答です。特に問題になるのはwe are unfashioned creatures以下の構造です。まず、but half made upの箇所ですが、この部分は形容詞句として前のunfashioned creatures「形の定まっていない生き物」を後置修飾し、全体として「中途半端にしか出来上がっていない形の定まっていない生き物」と言うくらいの意味になっています。butはonlyとほぼ同義の副詞であり、「しかし」を意味する等位接続詞と誤読しないように注意しましょう。

続いてif節です。節全体の核となる構造がone…ourselves (S) do not lend (V) his aid (O)であるという点については問題ないでしょう。その途中にダッシュ(―)で囲まれた節が挿入されており、それが問題の下線部に当たります。such a friendと続いているので、これを「そのような友人」を意味する1つの名詞句とみなし、such a friend (S) ought to be (V) … (C)の補語(C)が繰り返しを避けるために省略された形ではないかと考えた方もいるかもしれません。しかし、その場合、下の例文のように、節の前に接続詞のasなどが置かれるのが自然であり、ダッシュ(―)で囲まれた挿入節とはいえ、裸のままの節となっているのは少し違和感が残ります。

もう一度、下線部の直前の箇所と下線部の関係をよく考えてみましょう。そうすると、直前でフランケンシュタインが言っている、one wiser, better, dearer than ourselves「私たち自身よりも賢明で優れていて、愛すべき人」という語句にa friendという言葉は出てきておらず、この語句と「友人が欲しい」と言っていた語り手の発言のつながりが少し見えにくいことが分かります。そこで下線部部分はこのone…ourselvesがa friendとどうつながるのかを説明するために追加された節だと考えてはどうでしょうか。つまり、「私たち自身よりも賢明で優れていて、愛すべき人」と言った上で、「だって、そういうものでしょう、友達とは」と補足していると言う感じですね。そう考えると、suchはone wiser, better, dearer than ourselvesを受けて「そのような人物」という意味で用いられた代名詞であるということになり、直前の表現を受ける語であるために節の先頭に出ているものの、本来の位置はought to beの後ろで節の補語(C)に当たると解釈することができます。

このように少し説明不足で誤解を招きそうな言葉を使用した後に、前置の構造を使って補足説明をするパターンはさほど稀なものではなく、これは自然な解釈と言えます。したがって、選択肢の中から補語(C)の前置が起こっているものを選べば正解ということになります。それぞれの選択肢の下線部を確認すると、(1)はCVSの倒置、(2)はCSVの前置、(3)は補語(C)の省略、(4)は何の変哲もないSVCの文であるため、正解は(2)です。

正解 (2)

訳例

私は友人が欲しいということ、これまでの人生で経験したのよりももっと親密なシンパシーを感じられる仲間を強く欲しているということを話し、そういう友人に恵まれない人はまず幸せではないはずだと言いました。

その男はこう答えました。「あなたの言う通りです。私たちは、自分よりも賢くて優れていて、愛しい人物―友人とはそういう人物であるべきでしょう―そういう人が弱くて欠けているところを補うよう力を貸してくれなければ、中途半端にしか出来上がってない形の定まらない生き物なのです」

前回までのクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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