andの機能を正しく理解できないと解けない品詞問題【難問クイズで学ぶ文法知識③】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第3回は英文で使われている単語の品詞とその意味を問う問題です。

クイズ

下の英文を読んでクイズに答えましょう。

For the last fourteen or fifteen hours I had none※—nor had I slept during that time. Salt provisions of the most exciting kind had been my chief, and, indeed, since the loss of the mutton, my only supply of food, with the exception of the sea-biscuit; and these latter were utterly useless to me, as they were too dry and hard to be swallowed in the swollen and parched condition of my throat.

― Edgar Allan Poe: The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket

文脈:「私」は海での冒険にあこがれて捕鯨船に忍び込むが、船の一角に閉じ込められたような状態になってしまう。

※none:no water

下線部 chiefのここでの意味、用法は?

(1)「主な、主要な」を意味する形容詞
(2)「長官の」を意味する形容詞
(3)「主要なもの」を意味する名詞
(4)「(組織などの)長、チーフ」を意味する名詞

単語・語句

問題を解き終わった人、出てきた語句を理解できなかった人は、ここで確認しましょう。

  • salt provisions:塩漬け食品
  • exciting:刺激的な
  • mutton:ヒツジの肉、マトン
  • sea-biscuit:乾パン ※塩気のない堅いビスケットやパン。昔の船員の食料品。
  • utterly:全く、完全に
  • swollen:腫れ上がった
  • parched:(喉が)からからの

ヒント

等位接続詞のandが何と何を結んでいるかに注意しよう。

つまずきポイント

chief に続くandの後ろに、indeedという副詞とsince … という前置詞句が続くため、and以降が別の節になっているのではないかと思ってしまいやすい文です。

第1回、2回の記事では時事英語からの出題が続いたので、今回は少し古典的な文学作品を選んでみました。アメリカの作家エドガー・アラン・ポーの唯一の長編小説『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』からの抜粋です。まずは第1文の構造を確認しましょう。

第1文の構造

(For the last fourteen or fifteen hours)
I (S)
 had (V)
  none (O)

nor (否定語句)
 had (助動詞)
   I (S)
    slept (V) during that time.

ダッシュ(-)以降の後半で、norという否定語句があるために、助動詞hadが前に出て、疑問文と同様の倒置が起きていることに注意が必要です。過去14、15時間にわたって水を口にしておらず、また一睡もしていない、という状況が読み取れますね。

第2文の構造

続いて第2文ですが、この文の前半部分の解釈が今回のポイントになります。

Salt provisions of the most exciting kind had been my chief,

まで見た時点で、Salt provisions of the most exciting kind (S) had been (V)という構造になっている点はすぐに判断できるでしょう。問題はmy chiefという語句をどう捉えるかです。

直後に , andがあり、その後にindeedやsince … といった、一見形容詞に形の上で結び付かなそうな語句が続いていることから、my chiefというのがひと固まりの名詞句になっているのではないか →→→ chiefはここでは名詞として使用されているのではないかと、考えた人もいるかもしれません。

しかし、この文はsalt provisionsという食料の描写になっているので、my chiefという名詞句でまず連想される「私の上官」という解釈では意味が通りません。このchiefは何か特別な意味で使われているのではないか、と想像力を働かせるのも無意味ではないですが、その前に、自分の知識の範囲内でより自然な解釈が本当にできないかを改めて考えてみることが重要です。

もし、このchiefが形容詞だった場合、my chiefというのは「私の主要な~」という意味になり、「~」にあたる名詞が後から出てこなければなりません。その名詞を探して、andの後ろに目を向けてみましょう。

indeedやsince … といった、my chiefとそれを完成される名詞の間にあまり入り込むことがなさそうな語句があることで多少ひるみますが、そこを我慢して読んでいくと、my onlyという語句が出てきます。ここで、my chiefとmy onlyの構造上の類似性に気付き、chiefの後のandは根本のところでは、my chiefとmy onlyを並列させているのではないかと気付けたかどうかがポイントになります。

こう考えれば、my chiefはmy onlyと共にsupply of foodという名詞句につながることになり、名詞句がしっかりと完成します。結論として、indeed(それどころか)とsince the loss of the mutton(羊肉がなくなって以降は)という語句はmy onlyの部分だけを修飾する語句だと考えればよいということになります。この名詞句全体の意味は「私の主要な、それどころか、羊肉がなくなってからは私の唯一の食糧」となります。

chiefを「主な、主要な」を意味する形容詞という最も定番の用法で捉えた上で、構造、意味共に自然な解釈を見いだすことができたので、これが正解だと考えてよいでしょう。

解答と訳例

(1)「主な、主要な」を意味する形容詞

訳例
14、15時間ほど水を一滴も飲んでいなかったし、またその間、一睡もしていなかった。極めて刺激の強い類の塩漬け食品が私の主な、いや、それどころか、羊肉がなくなってからは、乾パンを除いて唯一の食料だった。乾パンの方は、あまりに乾燥し固くなっていて、腫れ上がったからからの喉では飲み込むことができず、私にとっては全く用をなさなかった。

第1回、2回のクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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