英検準1級ガイドもいよいよ最終回です。最終回は2次試験の面接(スピーキング)です。『完全攻略!英検準1級』(アルク刊)の著者、神部孝さんに詳しく教えていただきましょう。
目次
面接の概要
今回取り上げる面接は、下の表の色が付いているところです。
一次の合格通知を受けてから・・・では遅い!
二次試験の面接は、一次試験に合格した受験生たちが受けるので受験者のレベルは非常に高いです。一次試験の準備段階から少しずつ面接の練習を行うようにしましょう。
面接での心構え
英語を発声する練習
一次試験に合格してから準備するのでは間に合わないでしょう。普段から、練習問題を解いたら問題文を声に出して読むなど、英語を発声する練習をしてください。
内容のある正しい英語を話す
生徒と面接の練習をしていて感じるのは、簡単な英語表現で誤りを犯す人が多いことです。文法的に正しい英語を話す努力をしましょう。例えば、「日本は農業を大事にすべきですか」という質問に対して、次のように答える人がいます。
Ye~s, agriculture is good. Rice needs assistance.
このような答えでは面接官はがっかりするでしょう。まあ、急に農業が大事かって聞かれても困っちゃいますね。でも、準1級レベルの合格者なら、ある程度正確に、内容のある英語で答えなければいけません。次のように解答できたら最高です。
Sure, we have to put more emphasis on agriculture. Our self-sufficiency rate is below 50%.* Thus, food-security is important, and our government should support this industry.
もちろんです。農業にもっと重点を置かなくてはなりません。私たちの自給率は50%を切っています。ですから、食料保障は重要で、政府はこの産業を援助しなければなりません。
*農林水産省によると、2021年の食糧自給率(food sustenance rate)は、38%だそうです。先進国の中でもかなり低いようです。
点数配分
面接の配点を見てみましょう。なお現在、合格点は公開されていませんが、2016年に「英検CSEスコア」が導入されるまでは、22点とされていました。
形式 | 配点 |
---|---|
①ナレーション | 15点 |
②Q&A(4問) | 20点 |
③アティチュード | 3点 |
合計 | 38点 |
面接形式
ナレーション(15点)
問題カードの4コマのイラストを見て、そのストーリー展開をします。
Q&A(20点、各質問5点ずつ)
質問1:ストーリーに関連する、4コマのうちの1つについて質問
質問2:ストーリーに関連する、一般的な社会問題についての質問
質問3:一般的な社会問題についての質問
質問4:一般的な社会問題についての質問
アティチュード
入室から退室までのコミュニケーション態度が良い場合に点数が高くなります。テキパキと受け答えをするとよいでしょう。合格している人は概ね2点以上もらっているようです。
ナレーション問題内容
それでは順に面接の問題を見ましょう。
面接の最初の課題は、問題カード上のイラストに基づいたストーリー展開を考え、話すことです。
英文パッセージと4コマのイラストが示されたカードを渡されます。問題カードを渡された後、最初に1分間の準備時間が与えられます(イラスト内の日本語訳は省略します)。
面接委員: You have one minute to prepare before you start your narration.
(ナレーションを始める前に1分間の準備時間があります)
1分の間に4コマのイラストを見てストーリーを考えてください。大ざっぱなもので構いません。各コマのポイントを押さえましょう。
面接委員 All right, please begin your narration. You have two minutes.
(それでは、ナレーションを始めてください。持ち時間は2分間です)
ナレーションのアドバイス
カードの指示通りに始める。
Your story should begin with the following sentence.
(あなたのストーリーは次のセンテンスで始めてください)
この指示通りにしましょう。
一コマ一コマ丁寧に
1コマ目でお母さんが心配して背中をさすっていますね。2コマ目では不安げなご両親の顔が見えます。3コマ目では娘さんが山に近い学校で元気に遊んでいます。4コマ目では娘さんがやんちゃをして木から落ちたようです。それらのコマを丁寧に説明しましょう。
書かれているキーワードやフレーズを見逃さない
2コマ目に“The next week”や“Think about moving to the countryside.”の吹き出しの言葉があります。これらを次のように上手に使いましょう。
The next week, her family visited a doctor. The doctor recommended them to move to the countryside for her.
お医者さんの話は直接話法に近くても良いです。
The doctor said they should think about moving to the countryside.
目標1分30秒から1分45秒!
普段からキッチンタイマーなどを使って時間感覚を養いましょう。1分間の準備時間用と2分間のナレーション用でタイマーが2つあればいいですね。
ほんの少しだとしても、2分を過ぎた段階でナレーションを止められてしまいます。ですから、ナレーションにかける時間の目標は1分30秒から1分45秒としましょう。
ハキハキと大きめの声で話す
この記事を書いている今、新型コロナウイルス感染症は第5類に移行しました。私は2023年第1回の試験で英検1級を受験しますが、英検からのメールで「原則マスクの着用」「スピーキングテストなど、発話が必要なときは原則マスクを着用してください」という連絡が来ました。
声が小さかったりする場合、マスクがあると余計に聞き取りにくくなります。解答に自信がないと声が小さくなりがちです。自信がないとしても頑張って大きな声ではっきりと発音しましょう。
ナレーションの練習
それではナレーションを始めます。もう一度イラストを見ましょう。
※ 私の録音音声です。プロのナレーターによるものではありませんが、参考にしてください。なお、原稿を読んでいるので録音時間は短いですが、本番ではこの内容で2分近くになるでしょう。
1コマ目
One day, a daughter was coughing heavily in the living room. Her mother was rubbing her gently. Her father seemed to be pretty worried about her health.
2コマ目
The next week, the family went to see a doctor. The doctor told them that it would be a good idea to move to the countryside where the air was clean. Then, the daughter’s asthma would be alleviated, the doctor said.
3コマ目
Six months later, their daughter had recovered from asthma and no longer coughed. She was jumping rope with her classmates. Her parents were watching her and felt that their decision to move to the countryside had been correct.*
4コマ目
A few weeks later, the girl and her parents were visiting the hospital. The girl had broken her arm. The doctor wondered what had happened. The girl told him that she had fallen from one of the trees in the yard.
※ ご両親が右側の塀越しに観察しています。1分間の準備時間で気付くのは難しいかもしれませんね。
続いて、4つの質問を見ましょう。
質問1 問題カードのイラストに関する質問
ナレーションのカードを見ながら質問に答えます。
面接委員: Now, I will ask you four questions. Are you ready?
(では、4つの質問をします。準備はいいですか)
あなた: Yes.
面接委員: No. 1. Please look at the fourth picture. If you were the mother, what would you be thinking?
(1番。4つめの絵を見てください。もしあなたがこの母親だとしたら、どんなことを考えているでしょうか)
ポイント1
I would be thinking ... から始めましょう。
解答例
I would be thinking, “It’s good for my daughter to play outside, but I’m not sure I like her climbing trees. I have to tell her to be more careful. However, I don’t want to talk her out of taking risks.”
(私はこう考えているでしょう、「娘にとって外で遊ぶのはいいことだ、彼女に木登りをさせるのが良いとまでは言えない。もっと気を付けるように言わなければならない。でも、危険を冒さないようにと彼女を説得したくはない」。)
ポイント2
娘さんが骨折して悩んでいることに触れれば大丈夫です。あとは、皆さんそれぞれが自由に発想しましょう。
設問2~4 意見を求める質問
質問1が終わると、問題カードを裏返すように指示があります。
Now, Mr./Ms. ..., please turn over the card, and put it down.
(それでは○○さん、カードを裏返しに置いてください)
質問は、Yes/Noで答えるものや、Which do you think ... ?、How ... ?などがあります。それでは例を見ましょう。
面接委員: No. 2 Do you think that cities are a good place to raise children?
(2番。都会は子供を育てるのに良い場所でしょうか)
ナレーションで話した内容とは別で、皆さんの自由な解答で構いません。ロジックが通っていれば問題ありません。
解答例
Yes. In large cities, we have universities, libraries, art museums, and other educational facilities. Because cities have a good job market, children will be able to evaluate various jobs when they are young. Then, they themselves can choose their future career.
(はい。大都市には、大学、図書館、美術館やほかの教育関連施設があります。都市部には恵まれた求人需要があるので、子供たちは若いうちにさまざまな職業を見定めることができます。その上で、自ら将来の仕事を選ぶことができるでしょう)
実際に私が面接で聞かれた質問は次のようなものでした。
Do you think companies should set a mandatory retirement age?
(企業が義務的な退職年齢を設定すべきと思いますか)
このような時事的な質問もありますから、普段から英文のニュースに触れておくことは大事だと思います。
面接のアドバイス
面接の練習を行う際には、必ず自分の声を録音しましょう。そして、聞き直しましょう。
生徒にこう言うと、決まって、「自分の声を聞くのは恥ずかしい、英語を間違えていると嫌だから、録音したくありません」という答えが返ってきます。その恥ずかしい、間違えている答えを採点する面接委員の身にもなってください。録音した自分の答えを聞くことによって、誤りに気付きます。そして、それを直すように努力しましょう。
また、学生の方は先生に頼んで練習相手になってもらいましょう。社会人の方はオンライン英会話などを有効に活用しましょう。
英検準1級の2次試験合格率は2016年度第1回検定では89.8%と非常に高くなっています(※)。しかし、複数回受験の方もいます。ですから、2次試験で落ちたとしても、次回合格できるように、しっかりと練習をして受験に望みましょう。
※ 英検のサイトより
なお、これ以降、合格率は開示されていません。
準1級面接対策におすすめの参考書など
英検バーチャル二次試験
入室から退室までの説明が丁寧です。
14日でできる! 英検準1級 二次試験・面接 完全予想問題 改訂
模擬面接のビデオも観られるようになっていて分かりやすいでしょう。定番のテキストです。
ベスト・オブ対訳サザエさん
4コマ漫画と言えばコレ!英語の吹き出し付きだからそのまま練習に使えると思います。ただし、サザエさんを知らないと面白くないかもしれません。
完全攻略! 英検(R)準1級
私の失敗談も含まれていますから分かりやすいと思います。
終わりに
長いこと記事を読んでいただき、どうもありがとうございます。皆さんが英検に合格することをお祈りします。
Enjoy learning English!
神部孝さんの著書
トップ写真:Sander Weeteling from Unsplash
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