「食べ物」「生き物」「体」にまつわるイディオム【英会話お助けフレーズ】

頭の中で英語を考える暇もなく、瞬時の反応が求められる英会話。最終回となる今回は、食べ物や生き物、体にまつわるイディオムをコミュニケーション・アナリストの上野陽子さんにご紹介していただきます。

目次

ネイティブ感覚のイディオム

「おたすけフレーズ」シリーズも今回で最終回となりました。最後はこれまでとちょっと趣向を変えて、食べ物や生き物、体にまつわるイディオムの紹介です。多くの方が日本語での慣用句を覚えるときに、使い方を含めて例文で記憶したことと思います。英語のイディオムも例文の中で覚えていくと、より実践に生かせるようになります。

食べ物にまつわるイディオム

apple of someone’s eye【非常にいとおしいもの】

My daughter is the apple of my eye.
娘は目に入れても痛くないほどかわいい。

※このappleは「瞳」の意。古くからの表現で、瞳の形が丸いリンゴのように見えることからきているといわれる。eyeにapple(瞳)は必要なことから「なくてはならないもの、かけがえのないもの」という意味になる。

bear fruit【実を結ぶ、成果をもたらす】

The skating federation’s change in policy is starting to bear fruit.
そのスケート連盟の方針の変更は、実を結び始めている。

※直訳の「フルーツが実を付ける」という意味もあるが、主語が人や試みなどの場合、「なんらかの良い結果を生み出す」という意味になる。

cherry-picking【慎重にいいものを選ぶこと】

The shop is good at cherry-picking.
あの店は品ぞろえがいい。

※cherry-pickingは、もともと、サクランボの熟した実を、熟してないものから丁寧に選別すること。そこから転じて「良い品を選ぶこと、いいところ取り、つまみ食い」といった意味で使われるようになった。

as cool as a cucumber【落ち着き払って】

She felt nervous before the concert, but she acted as cool as a cucumber.
彼女は音楽会前で緊張していたが、落ち着き払った行動をしていた。

※難しい状況下でも、落ち着いて自分の感情をコントロールしている状態。直訳は「キュウリのように冷たく」で、暑いときでもキュウリの内部は常に冷たい状態に保たれることからきた、とされている。

a piece of cake【簡単にできてしまうこと】

The final exam felt like a piece of cake.
最後のテストは朝飯前だった。

※19世紀にアフリカ系アメリカ人が、ケーキを賭けて巧みな踊り手にケーキを与えた「ケークウォーク」に由来するとの一説がある。一片のケーキを手にする“簡単な方法”の意味から、日本語の「お茶の子さいさい」や「朝飯前」の訳が充てられる。同義にas easy as pieといった言い方も。

not one’s cup of tea【趣味嗜好(しこう)に合わないこと】

John started calligraphy, but it wasn’t his cup of tea.
ジョンは書道を始めたが、肌に合わなかった。

※1杯のお茶は、出された相手や物を受け入れることを意味します。お茶を飲む文化があるイギリスで ~is my cup of tea.(~は私の好み)という言い方に始まったとの説がある。自分の好みに合わないことをnot one’s cup of tea と、ちょっと遠回しに「好みでない」と表現するようになった。

a hot potato【難しい問題】

The social problem turned into a political hot potato.
その社会問題は、困難な政治課題となった。

※熱々のポテトを扱うのは難しいことから、物議を醸すトピックながら、多くの人がそのテーマに言及しなかったり、取り組もうとしないことを指す。宗教や政治など、相反する強い反応を生み出すトピックに使われることが多い。

nuts about something【~に夢中だ】

I’m nuts about Major League Baseball these days.
最近はメジャーリーグの野球に夢中なんだ。

※物、人、事象などに夢中になっている状態のカジュアルな言い回し。17世紀にナッツは特別なおやつで「喜びの源」のような意味合いとして使われ、のちに「狂った」といったニュアンスを含むようになる。そこから何かに夢中になっている様をnuts と言うようになったとの説がある。

bread and butter【生活の収入源 飯の種】

Teaching English is Lily’s bread and butter.
リリーは英語を教えることで収入を得ている。

※中世のイギリスなどヨーロッパ各地で、多くの農民は主食のパンとバターしか買うことができなかった。その大切な主食を得るための手段、という意味合いで使われ始めたとされる。

生き物にまつわるイディオム

smell a rat【不信を抱く】

I don’t think this was an accident. I smell a rat.
これは事故とは思えません。何か怪しいですよ。

※猫は匂いでネズミを探知することから、「何かがおかしい」などと疑いを抱くこと。日本語で裏切りや悪巧みなどを「薄々気付く、感付く」といったニュアンスになる。

let the cat out of the bag【秘密を暴く、秘密を漏らす】

It was going to be a surprise, until he let the cat out of the bag.
彼がばらすまでは、サプライズの予定だったんだ。

※直訳は「猫を袋から出す」の意味。これは、猫を袋に入れて「子豚が入っている」と嘘をついて売ろうとしたところ、中を調べられて、それが嘘だと分かってしまった、という話からきたとされている。どちらかというと「うっかり秘密を漏らす」のニュアンスがある。

something fishy【うさんくさいもの】

Our paper has been revised. I think something fishy has been going on.
書類が修正されている。何か疑わしいことが起きている気がするな。

※どこか疑わしく、不誠実さが感じられるときに使われる。fishyそのものには、「魚のような、魚臭い」といった意味もある。

straight from the horse’s mouth【確かな情報源から】

He’s leaving the company. I got it straight from the horse’s mouth.
彼は会社を辞めるつもりだ。確かな情報源から聞いたんだよ。

※馬の年齢は、見た目では分からなくても、歯の大きさと形を調べることではっきり分かるという。そこから転じて「確かな情報源」という意味になった。他に、賭けるべき競走馬についてより身近なところ(トレーナーやジョッキーなど)から情報を得る方が勝つ確率が上がることから、という説もある。

for the birds【くだらない、つまらないこと】

The audience found the governor’s speech was for the birds.
聴衆は、知事のスピーチをつまらないと思った。

※英語圏では、鳥はあまり知恵がない生物と見られていて、birdbrain([口語で]まぬけ、軽率なやつ)といった表現もある。鳥向けのものは、知識のある者には中身がなくつまらない、ということ。

butterflies in one’s stomach【(緊張で)どきどきする。そわそわする】

As I walked onto the stage to give my presentation, I felt butterflies in my stomach.
プレゼンで舞台に上がるとき、緊張でどきどきと落ち着かなかった。

※これから何かをしようとするときに、ひどく緊張することを表す。お腹の中がひらひらとどこか落ち着かない様子を、まるで体内に蝶がいるかのようだと、例えたとされる。

packed like sardines【すし詰め状態】

During rush hour, we are packed like sardines.
ラッシュアワーにはすし詰め状態になります。

※もともとはロシアの「樽の中のニシンのように詰め込まれる」という慣用句から転じたものとされ、「(缶詰にされた)イワシのように詰め込まれる」という表現になる。日本では、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたものに使う「すし詰め」の訳が充てられることが多い。

crocodile tears【うそ泣き・偽りの涙】

Everyone saw through her crocodile tears.
誰もが彼女のうそ泣きを見抜いていました。

※ワニは、水から上がって目が乾くと涙を流す。そこから獲物を獲るためにうその涙を流すと考えられたことに由来して、ワニが涙を流すようにうそ泣きをするという意味合いに転じたとされる説がある。

the lion’s share 【ほとんど】

My elder brother had the lion's share of the apple pie and left me with just a bite.
兄がアップルパイのほとんどを食べて、私に一口しか残さなかった。

※イソップの寓話の幾つかのストーリーに起因するとされる。ある寓話では、ライオンとヒツジとヤギとウシが一緒に狩りに行き、ライオンが「1口目は王者である私、2口目は仲間である私、3口目は私の取り分、4口目を取ったものは許さない」としてほぼ全てを取ってしまう。国によっては「多くを」で、英語圏では「ほぼ全て」のニュアンスが強いとされる。

ants in one’s pants【どきどきやソワソワで落ち着かないさま】

John had ants in his pants right before his job interview.
ジョンは仕事の面接の直前はどきどきと落ち着かなかった。

※特定の起因は不明とされるものの、下着の中にアリや昆虫が入ったら人がそわそわするだろうことは想像がつく。

体にまつわるイディオム

pull someone’s leg【からかう】

Come on, you’re pulling my leg.
ちょっと、からかわないでよ。

※直訳は「足を引っ張る」だが、日本語の「足を引っ張る(邪魔をする)」の意味はない。冗談など、本当ではないことを言って「からかう」や「かつぐ」という意味で使われる。

go in one ear and out the other【聞いても頭に残らない】

His lectures always go in one ear and out the other.
彼の講義は、いつも頭に入ってこない。

※直訳の「~から入って、もう一方の耳から出ていく」という意味から、例えば、難しい講義を聞いたときや興味がない話を聞いたときに、「簡単に忘れて頭に残らない、覚えられない」という意味で使われる。

tongue-in-cheek【からかい半分の、皮肉を込めた】

The writer always uses a lot of tongue-in-cheek humor.
その書き手は、いつも人をからかうようなユーモアを多用する。

※舌で頬を押し出すような大げさな仕草の顔のことで、真剣な話ではなく、少し皮肉を込めたり、冗談めいて話をするニュアンス。とぼけたことをいうときの表情を描写するのにも使われる。反対にwith a straight faceでは「真顔で、澄ました顔で」という意味になる。

on the tip of my tongue【喉元まで出かかって(思い出せない)】

The title of the film’s on the tip of my tongue. I’ll think of it in a second.
その映画のタイトルがここまで出かかっているんだけど、すぐに思い出すよ。

※直訳は「舌先に」の意味。「舌先まできているのに口から出てこない」から転じて「(あと少しなのに)思い出せない」となる。日本語では「喉元まで出かかっている」が、近いニュアンスの表現になる。

stick one’s neck out【自ら危険を冒す】

Why are you sticking your neck out for him?
どうして彼のために、あなたが危険を冒すの?

※カメが甲羅から頭を出すのは危険を伴うことから、自分の評判を落としたり、何か不都合が生じるような危険な目に遭うことをあえてする状態を表す。

in over one’s head【理解を超えて(お手上げだ)】

This science course is too difficult. I’m in over my head.
この科学の講座は難し過ぎて、私には理解できない。

※「頭の上を飛び越えた状態」というイメージから、自分の能力を超えてしまい、にっちもさっちもいかないときに使う表現。

be eating someone【人を悩ませる・いらいらさせる】

What’s been eating you lately? Is there anything I can do?
最近、何か気になっていることがあるの?私にできることはある?

※動詞eatには、「~を困らせる、~をいらいらさせる」の意味があり、これは「何か悩んでいることがあるのか?」と聞くときによく使われる表現。通例、進行形。

I’m all ears【話をもっと聞かせて】

Are you ready to share your story? I’m all ears!
話す準備は整った?さあ、聞かせて!

※直訳は「私の全てが耳」であるように、全てが耳になるくらいに集中して話を聞くことから、「もっと聞かせて」や「それでそれで?」のように、相手の話を促したり、もっと聞きたいといった姿勢を表す。

My legs are asleep. (両足)/ My leg is asleep.(片足)【足がしびれました】

As I sat cross-legged, my legs fell asleep.
足を組んで座っていたので、足がしびれました。

※asleepは感覚がほぼなくなった状態のことをいうことから、「足がしびれる」の意味合いに。fall asleepのときには「眠りに落ちる」や「居眠りをする」になる。

egg on one’s face【恥をかいた】

After confidently presenting, my client pointed out a mistake leaving me with egg on my face.
自信たっぷりにプレゼンをした後、取引先にミスを指摘されて恥をかいてしまった。

※egg on one’s faceは、自分のしたことから恥をかくこと、面目をなくすことを言う。19世紀の大衆演劇で、あまりうまくない俳優に対して腐った野菜や卵を投げつけることがあり、顔に卵が残ることに起因するという説がみられる。

まとめ

「おたすけフレーズ」シリーズはいかがでしたか?

英語圏のイディオムは文化的な背景も知っておくとさらに覚えやすくなるでしょう。例えば、英語圏では“鳥”は小さくて取るに足らないものであったり、臆病であったりといったイメージがあります。こうした背景知識を覚えておくと、本記事で紹介したfor the birdsなども、そんな鳥のためのものだから「取るに足りないもの」といったイメージか・・・と、ニュアンスがつかめて、記憶に残りやすくなります。

フレーズを覚えたら、どんな機会も逃さずにどんどん使ってみてください。アウトプットは、最強の記憶術です。

上野陽子(うえの・ようこ)
上野陽子(うえの・ようこ)

著述・翻訳家。コミュニケーション・アナリスト。カナダ、オーストラリアに留学後、ボストン大学コミュニケーション学部修士課程ジャーナリズム専攻、東北大学博士前期課程人間社会情報科学専攻修了。通信社の国際金融情報部、出版社勤務を経てフリーに。著書に文庫版『コトバのギフト~輝く女性の100名言』(三笠書房 知的生き方文庫)、『オンライン英会話でどんどん話せるトレーニングBOOK』(日本実業出版社)、『1週間で英語がどんどん話せるようになる26のルール』(アスコム)、『スティーブ・ジョブズに学ぶ英語プレゼン』(日経BP社)ほか多数。仕事と趣味で世界50カ国以上を周る旅好き。
Twitter:https://twitter.com/little_ricola
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