英語教育のプロによる高品質なサービスに磨きをかけ、提供する英会話教室【どうなる?英語の未来⑤】

安価に利用できるオンライン英会話や無料で有益な英語学習コンテンツにアクセスできる時代。英語の環境があったとしても、必要なのはプロの指導だと言うRK English School校長のリチャード川口さん。これからの英会話教室の存在意義について、語っていただきます。

英語学習に必要なのはプロの指導

一人の経営者として、英会話教室の今と未来について考えてみる。

先に1点だけ、この記事は「3年間で倒産間際の英会話スクールを年商3000億円までに成長させた、敏腕経営者が語る!」とかではなく、なんとかかんとか9年間、小規模英会話スクールをつぶさずにやってきた校長が語る、なのであしからず(笑)。

今、街には外国人があふれ、仕事でも英語が必要とされるのは、もはや一般的だ。昨今「英会話」は誰の頭の片隅にもあるものになっている。英語は確実に「あると便利」から「ないと不便」になっている。

自分はポケベル、携帯、スマホと、それぞれの時代を経験してきたが、どれも出始めはあると便利だったり、持っているとかっこよかったりしたが、だんだんと持っているのがデフォルトで、最終的にはないと周りに迷惑がかかる、という感じになった。英語も近い将来「できないと迷惑をかける」になるだろう。

では、これから英会話教室もますますニーズが高まっていくのかと言われると、そこまで単純なことではないと考える。わざわざ教室に通わなくても、英語を学べる環境の敷居がだいぶ低くなったからだ。ビデオチャットは一般的なものとなり、ネイティブスピーカーと「英語でしゃべる」サービスはものすごく安価に、そして時間や場所も選ばない形で行えるようになった。それどころか、YouTubeなどの無料のコンテンツも充実し、高品質で有益な情報もアクセス放題である。Twitterやインスタを使って英語でのやり取りを楽しむことも可能だ。

事実、9年の間に自分のかいわいにも何件か英会スクールができては消えていった。・・・あれ?では、これから英会話スクールは消えていきますよっていう話なのか?いや、違う。

「英話は慣れ」「外国人としゃべれば英語は上達する」と思い込んでしまっている人が多いように思う。慣れだけで英語をマスターできるのは子供のうちだけである。とにかくスクールに通ったり、留学したりすれば英語がペラペラになると考えている人も多いが、実はそうではない。自分はバンクーバーで8年間英語の先生をしていたが、たとえ英語環境であったとしても、ある程度の年齢を超えてから必要なのは「慣れ」よりも「プロの指導」だった。

ちょっと言い過ぎかもしれないが、それこそ何十年も前からある、ネイティブスピーカーの先生としゃべるだけで高額な料金を取るスタイルは古い。そんなものにお金を払う価値はもはやない。というか昔からない。何か「やった気」にはなるかもしれないが、従来の英会話スクールのスタイルで英語がそれなりにでもできるようになった人をあまり見たことがない。

ライフスタイルに取り込む「場」としての英会話教室

これからの英会話教室は、英語教育のプロフェッショナルが教える「スクールにしかできないこと」に特化したものでないと、存在する意味がないと思う。先生がバイリンガルであることは当然だし、文法や発音など、文化の違いなど具体的な指導を持ってしっかりと生徒の納得を重ねながら、一定の期間で確かな成長を実感、実体験していただく必要がある。当たり前の話の気がするが、それが当たり前でなかったから、自分で英会話スクールを開校したという経緯もある。

また、来校するのが楽しみになるような雰囲気作りや「集いの場」を提供することも大事だと考える。前述したように、便利になり過ぎて、ぬくもりのあるつながりをつくる場が少なくなってしまった今だからこそ、そこに価値が見いだされるのである。人のぬくもりナウなのである。

手前みそになるが当校の生徒は、それこそ何年も、長く続けてくれている生徒が多い。9年前の開校時から在籍する生徒も少なくない。それはやはり、指導内容もだが、英語が楽しいと実感できる「場」をライフスタイルの一環として心地よく感じてくれているからだと考えている。

時代の変化と共に、新しいツールを活用していくことは当然だ。だが、ブレずに「プロによる高品質なサービス」に磨きをかけ、その確かな効果とコミュニティーを提供していくことが、英会話教室の存在意義であり、未来となる。

映画『マトリックス』のように、英語プログラムを数秒で脳に直接インストールできるようになったら、また在り方を考えたいと思う。

リチャード川口(りちゃーど・かわぐち)
リチャード川口(りちゃーど・かわぐち)

カナダ生まれ、オーストラリア、アメリカ、日本育ち。RK English School 校長。産業能率大学客員教授。iU情報経営イノベーション専門職大学教授。自身の学校の運営をはじめ、さまざまな教育機関とのコラボを通じて英語学習に新しい風を起こす。ポップで実用的なスタイルにファンが多い。『バンクーバー 発音の鬼が日本人のためにまとめた ネイティブ発音のコツ33』(明日香出版社)『TOEIC(R) L&Rテスト 単語王』(アルク)など著書多数。

シリーズ 英語の未来予想

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ENGLISH JOURNAL 2023年1月号

本記事はENGLISH JOURNAL2023年1月号に掲載した特集「英語の未来」を再編集したものです。

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