Google翻訳を使って英語の発音を良くする方法!girlを正しく発音できますか?【発音お直し工房】

奇麗に英語を発音したいのに、「どこをどう直せばいいのか見当がつかない」「そもそも正しく発音できているか分からない」などの悩みを持つ人は多いでしょう。本連載では英語音声学者の小川直樹さんが、Google翻訳を使った誰でも簡単にできる発音矯正法を紹介します。第1回の今回は、超基礎単語の「girl」で発音トレーニングをしましょう!

誰でも簡単に無料で発音チェックができる!

あけましておめでとうございます。英語音声学者の小川直樹です。月刊誌『ENGLISH JOURNAL』では、時々イギリス英語の発音について書いていました。それに昨年末に『2週間で攻略!イギリス英語の音読ゼミ』(コスモピア)、ならびに『イギリス英語でしゃべりたい!新装版』(研究社)を出したばかり。

動画でも紹介しています!!

でも、このENGLISH JOURNAL ONLINEでの連載は、イギリス英語の発音の話ではありません。むしろアメリカ英語の発音が基準となる話です。

Google翻訳(以下「G翻」)を使って、お金を掛けないで自分でできる発音矯正の方法をお教えしましょう、という企画です。なにしろG翻は、発音矯正にはものすごく便利です。これを使わない手はないです。そのやり方はというと・・・。

G翻に向かって、英語(いや、正確にはあなたが英語と思っている言葉[笑])を発音すればいいのです。するとその音声が、文字となって出てきます。表示された英語が、あなたが意図したものと同じだったら・・・。もちろん、あなたの発音は通じる、ということです。

でも別の単語が出てきたら、あなたの発音は通じないということです。(なお、機械による判定なので、なんの忖度[そんたく]もしてくれません。とりわけ単語だけでの発音には厳しめです。そこは覚悟しておいてください)。G翻は、こんなふうに発音チェックに使えるということです。

残念ながら、日本人の場合、意図しない単語に変換されがちです。それで、がっかりしつつ、その結果をすぐ消して、また試してみるでしょう。でも、やっぱりうまくいかない。それで何度も入力を繰り返す。

いやいや、その結果をすぐ消しちゃうのは、ものすごくもったいない!そこにこそ、発音矯正の素があるんです。だってそこには、あなたの発音の欠点、つまり改善すべき点が、はっきり示されているからです。それをヒントに、発音を直していけば、あなたの発音は確実に向上します!

girlで試してみよう!

じゃ、試しにG翻を使って発音チェックをしてみましょう。お題は「girl」です。girlは、基本単語中の基本単語。できて当然ですよね。では、とりあえずG翻に向かって、Please say girl!!

さあ、girlと認識されましたか?

実はgirlは、日本人には難関中の難関です。ボクが教えている学生からは、girlがうまく入力できないという報告が後を絶ちません。ちなみに彼らは、英語を売りにしている大学の、英語専攻の3年生。ボクの授業は、英語の教職課程用の音声学です。しかも、彼らは英語の情報があふれた現代に生きているんです。昭和とはわけが違う。

なのに、girlが認識されない学生がけっこういます。それだけ、girlという単語の発音は難しいんです。恐らく、日本では計り知れないほどたくさんの人が、英語としては認識されないgirlを発音していそうです。英語の先生だって例外じゃないですよ。

基本中の基本の単語なのに、これ、ヤバくないですか。

対策は結果を基に考える

じゃあ、どうすればいいんでしょう?さっき述べたとおり、G翻の判定結果を見るんです。そこから原因を探り、対策を練るんです。では、学生たちが報告してくれた結果には、どんなものがあったのかというと・・・。

実は、godとcallが何例もあったんです

まさかと思いました。どんだけかけ離れてるんだよ。最初はそう思ったんですけどね。

でも、何例も報告があるということは、これは日本人の発音の癖かもしれないわけです。それで自分で試してみました。ちょっと和風(笑)の発音でgirlと言ってみたんです。そしたら、確かにgodやcallという判定が出ました。ボクが制作しているYouTube動画「アゲアゲEnglish! Again」シリーズの撮影中にも試してみました。その動画がこれです。

ちなみに、小川の動画チャンネルは「小川直樹の英語発音動画」。

さあ、ここからが本題です。なぜ、girlがgodやcallになるのか。この原因は何か。原因をはっきりさせれば、効果的な対策が見いだせます。実際、girlに長いこと手こずっていた学生も、自分に当てはまる解決策が分かったことで、G翻にきちんと認識されるようになりました。

godになる場合の解決策

じゃ、まずgodからです。G翻の判定結果を分析する際に押さえておきたいのは、G翻はアメリカ英語の発音に基づいているということです。これが分かっていないと、解決できません。で、godの米語の発音は[gάd]です。出だしは[g]ですから、問題ないですね。問題なのは、その後です。

母音の対策

godとなる場合の最初の問題点は、母音です。girlの母音は、本来[ɚː]です。[ɚː]は口をあまり開けず、力を抜いて言う「アー」。ただし、同時に母音全体にRの響きを伴っています

Rの響きというのは、口の中で舌がフワフワ浮いたような状態で生み出されます。これは、舌全体を軽く後ろ(喉の方)に引っ張っる感じです。舌そのものを飲み込もうとするイメージです。こうすると、アメリカ英語らしいRの響きが生まれます。

日本人の場合、この[ɚː]となるべき母音が、[ɑ]と判定されちゃうわけです。[ɑ]は口を最大限に開けた「アー」([ɑ]は長めの音なので、「ー」を入れて表記しておきます)。この音に認識されるということは、口を大きく開けすぎているということ。だから対策は、口の開きを小さくすればいい。口を半開きにするんです。

じゃ、半開きって、どうすればいいのか?イメージは、お菓子の柿の種。あれ1粒を横にして、唇にはめ込む。それが口の開け方です。この状態で「アー」のような「ウー」のような声を出します。まずはこれで[ɚː]と判定される音になるでしょう。

より正確に発音したければ、Rを入れることです。上でも書いたように、口の力を抜いて、舌全体を飲み込むような感じにして、声を出せばいいんです。

ポイント girlの母音は、口をあまり開けず、力を抜いて「アー」と言おう!

なぜ[d]になっちゃう?

次に語末の子音です。[l]がなぜ[d]に?そんなバカな!なんでだー?

それは、語末を「ル」と言っちゃってるからです。「ル」は、音が急に止まるんです。これが原因。英語で、語末に起こる、急に止まる音とは?・・・破裂音です。「ル」は母音、つまり声のある音、で終わるので、有声の破裂音と解釈される。で、英単語の中で[gɑ]で始まって、有声の破裂音で終わる実在する単語といえば?G翻の中ではこういうふうに分析されて、最終的にgodが選ばれるわけです。

じゃ、対策はというと?急に止めるからダメなわけですから、長く言えばいい。実際、語末の[l]は長いんです。とにかく長く発音する。急に止めちゃダメ。最後は声が消えていくような感じ。だから語末の[l]に、ブツンと終わる「ル」なんて当てちゃダメなんです。

では、[l]はどうすれば出る?一番簡単な解決法は、とりあえず「ウー」で言ってみる。長く伸ばして「ウー」。より正確に発音したければ、舌先を上歯茎に付けて、その状態で「ウー」と言い続ける。相手に舌の裏を見せるつもりで、「ウー」ですよ。力みは不要。力を抜いて。声が消えていくぐらい長く。絵で表すとこんな感じです。

この絵では、口がけっこう大きく開いてますけど、これは舌の状態が分かるように描いたため。実際にはずっと小さく開きます。これも柿の種ぐらいでいいです。実は、[l]の舌の構えは、日本人には難しい。だから、普段からこの顔を保つ練習をしておくといいですよ。

ポイント girlの語末の子音は、急に止めずに長く発音しよう!

callになる場合の解決策

じゃ、次にgirlがcallになってしまう場合。まず[g]が[k]になってしまう件。これは、力み過ぎということ。力を抜け、ってことです。G翻にgirlがなかなか入らないから、力んじゃうんですよ。力めば力むほど、音が強くなる。これが原因。

[k]と[g]は、基本的に同じ出し方の、無声音と有声音です。ただ実は、無声音と有声音の違いは、声の有無ばかりではないんです。実は、音の強さも違うんです。強いのは無声音。声がないので、音をはっきり響かせるために、息を強く出すんです。弱いのは有声音。声が伴う分、エネルギーが声に回ってますから、息の出方が弱いんです。

girlがうまく言えない人は、焦って力んでしまう。それで、語頭の[g]で力が入ってしまう。だからG翻としては、「この人の語頭の子音は強いぞ」と感じ取って、[k]と判定してしまうのです。だから、callになる人は、まず力を抜けということ。

callの母音はくせ者

なぜ、「ガール」が「コール」になっちゃうんだ、と思うでしょう?母音が違い過ぎだろ、と思いますよね。でも、ここにG翻を使う上での落とし穴があるんです。G翻は、ガチでリアルなアメリカ英語が基準なんです。実は、アメリカ英語のcallの発音って、[kάːl]なんです。日本人は「オー」だと思っているけど、本当はgodの母音と同じ音質なんです。

もう分かりましたね。girlがcallとなる人の母音は、口の開きが大き過ぎなんです。godのときと同様に、口を柿の種の開きにすれば解決です。

G翻を使う場合、アメリカ英語の発音をちゃんと理解していることが必要なんです。でも、日本人はそこが分かっていない。その結果・・・「おれは『オー』なんて言ってるつもりはないよ。なのに『オー』ってどういうことだ?」こんな感じでパニックとなり、より力んでしまうのです。結果、さらにcallを連発しちゃうというわけです(笑)。

その人の場合、語末の[l]が出ているんだから、いい線行ってるんです。力を抜いて、口を柿の種にすれば大丈夫。

ポイント girlの語頭の子音は力を抜く。母音も力を抜いて、口は半開き!

というわけで、もしあなたのgirlが、G翻でgodやcallと発音されたら、こんなふうに対処してみてください!

小川直樹
小川直樹

英語音声学者。コミュニケーションのコンサルティング会社Heart-to-Heart Communications代表。上智大学大学院言語学専攻博士前期課程修了。著書に『イギリス英語発音教本』『イギリス英語で音読したい!新装版』(共に研究社)、『耳慣らし英語リスニング2週間集中ゼミ』(アルク)、『2週間で攻略! イギリス英語の音読ゼミ』(コスモピア)など多数。YouTube「小川直樹の英語発音動画」では新作を活発に公開している。

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