「自分は英語が話せない」と思っているあなたが知るべき、上達への階段とは?【英語お悩み処方箋】

頑張って英語学習を続けているのに、一向に英語力の上達を感じられない!と思ったことはありませんか?本連載では、イングリッシュ・ドクターの異名を持ち、1万人以上の英語学習者を見てきた西澤ロイさんが、あなたの英語の悩み「英語病」の解決方法を処方します。第3回は、日本人に多い「英語が話せない」と思ってしまう人が知っておくべきことについて紹介します。

「自分は英語が話せない」と否定するから上達しない!?

「あなたは英語がせますか?」

こう質問をした時に、多くの日本人は「いいえ」と答えます。実は、この「話せない/できない」という否定こそが日本人の英語上達を妨げている大きな要因だということはあまり知られていません。

このように「英語の上達を妨げる原因」のことを、私は「英語病」と呼んでおり、拙著『英語学習のつまずき50の処方箋』では英語学習を全七つの分野に分けて、さまざまな英語病の診断を行なっております。

今回の記事では、『英語学習のつまずき50の処方箋』の第3章「英会話表現科」に登場する7種類の英語病について診断を行なえるチャートをご紹介します。

「英会話表現」に関する英語病診断チャートに挑戦してみよう

以下のチャートで、質問に対して「はい」「いいえ」を選んでいってください。行きついた英語病に関して、かかっている恐れがあることが判定できます(「かかっている」と断定するものではありません)。

『英語学習のつまずき50の処方箋』P.79より引用

各英語病に関する概要と改善ポイントは以下の通りです。

【英語病】17. アイキャント症候群
【概要】「英語は話せない」「全然できない」などと言い、自分が持っている英語力を否定してしまう英語病
【改善ポイント】目標や理想に届かない自分を「できない」と捉えるのではなく、既に「できる」ことをしっかりと肯定し、その力を発揮すべきです。

【英語病】 18. もたつきスピーキング病
【概要】英単語やフレーズなどがなかなか思い出せず、英語でコミュニケーションがうまく取れない英語病
【改善ポイント】単語カード(フラッシュカード)を使って練習することで、単語がパッと口から出てくる「瞬発力」を鍛えてください。

【英語病】19. もやしボディ症
【概要】英文を組み立てるための“筋肉”が弱く、英作文に時間がかかったり、パッとは言えなかったりする英語病
【改善ポイント】英語の語順に従って、素早く単語を並べ、英文を組み立てられる“筋肉”が必要です。

【英語病】 20. 英語コミュ障
【概要】英会話をする際に、間違いを恐れてしまうことで、スムーズなコミュニケーションが阻害されてしまう英語病
【改善ポイント】間違いをあまり気にしないようにしましょう。コミュニケーションにおける本当の間違いは、伝えようとしないことです。

【英語病】21. 直訳スピーキング病
【概要】頭に思い浮かんだ日本語を英語に直訳してしゃべろうとするため、うまく変換できず、言葉に詰まりやすい英語病
【改善ポイント】直訳には限界があるので、発想を切り替えて別の表現に言い換える練習をあらかじめ行なっておくのがよいでしょう。

【英語病】 22. 表現力欠乏症
【概要】出来事を説明したり、物事を描写したりするような表現力に欠けている英語病
【改善ポイント】自分の言いたいことを言える表現力を身につけましょう。特に、基本的な動詞を使いこなすことがおすすめです。

【英語病】 23. ノーコンテンツ症
【概要】英語で伝えられる内容に乏しく、会話が続かない/盛り上がらない英語病
【改善ポイント】発言が一言で終わらないためには、3~5文くらいで表現したり、1分間くらいでしゃべったり・・・といった練習が有効。

今回の記事では、17~21の五つの英語病に関して詳しくご紹介したいと思います。

「英語が話せない」と否定してはダメな理由

「自分は英語が話せない」と否定してしまう「アイキャント症候群」は、二つの意味で上達を阻害する要因となります。

一つは、既に持っている英語力を否定してしまうためです。そして「単語やフレーズを知らないから話せない」と考え、話せるようになるための暗記型学習を行なう(そして覚えられずに挫折してしまう/覚えたものの話せるようにならない)人が非常に多いのです。

そしてもう一つは、心理面のお話になりますが、「話せない」と思っている人は自分から英語を話そうとしなくなります。外国人と英語でコミュニケーションを取るチャンスがあっても避けてしまい、経験を積めるせっかくの機会をみすみす逃してしまうのです。

日本人は皆、既に一定レベルの英語力を有しています。ですから、英語が「話せない/話せる」という0か100かという極端な捉え方をするのではなく、以下のような8段階くらいに分けて考えることをイングリッシュ・ドクターとしておすすめします。

『英語学習のつまずき50の処方箋』P.82より引用

(※なお、7段階目と8段階目は便宜にこの順番に並べましたが、実際はどちらが上ということはありません)

これに当てはめると、中学校で英語教育を受けている日本人は全員、少なくとも2段階目までをクリアしています。そして3段階目ができるかどうかは、度胸の問題に過ぎません。4段階目ができるという人も少なくないでしょう。

この事実は、英語以外の言語と比較するとより明らかになります。あなたが2段階目をクリアできる外国語は他にありますか?

恐らく多くの方は、英語だけしかないでしょう。名乗ったり(My name is...)、住んでいる場所を言えたり(I live in...)、好きなことについて話せたり(I like...)するだけでなく、それ以外にもたくさんのことが言えるのは、過去に頑張って学んだ英語だからこそなのです。

それだけの英語力を既に持っているという事実とその価値は、決して否定すべきものではありません。まずは、ご自身の英語力や過去の努力をしっかりと肯定してください。そして、既にある英語力を引き出し、伸ばしていくような学び方こそが大切なのです

既に知っている英単語を使えるようにしていこう

既に英語力があることを肯定できると、英語学習のスタート地点が変わります。英単語やフレーズを「知らなかった」のではなく、「知っているのに思い出せなかった/パッと口から出てこなかった」ことが、スムーズに話せない原因だったのです(もたつきスピーキング病)。

英単語が思い出せずに「えーと・・・」と考え込んでしまうと、スムーズなコミュニケーションは取れません。ですからまずは、簡単な英単語がパッと口から出てくる「瞬発力」を鍛えることが大切です。そのためのツールとしては「単語カード(フラッシュカード)」をおすすめします。

なお、英語がパッと口から出るかどうかは単なる練習の問題であり、頭の良しあしなどには一切関係がありません。誰でも練習さえすれば、英語が口から出るようになります。

そして単語がパッと言えるようになったら次は、文を組み立てる力が必要になります。この力が弱くて文がうまく作れず、ただ単語を並べる「カタコト」になってしまいやすいのが「もやしボディ症」です。

日本語と英語では語順が大きく違いますから、英語の語順のルールに従って、単語を素早く並べて文を作れる力(≒筋肉のようなものです)を鍛えることが大切です。そのための練習方法としては「英作文」が有効ですが、英文を丸暗記してしまわないようにご注意ください。ぜひ、英文を組み立てる“筋肉”を鍛えるという意識を持って練習してみてください。

英会話ではメンタルがとても重要

英文がスラスラ作れるような力が付いても、実際にコミュニケーションがスムーズに取れるとは限りません。まず問題となりやすいのが、間違いを恐れてしまうこと――。作った英文が文法的に、そして意味的に正しいかが気になってしまって、口が開けなくなってしまう英語病が「英語コミュ障」です。

日本の学校教育は減点主義で行なわれていますから、英文法などの細かい間違いが気になってしまうのはよくあることです。しかし、文法などが少しくらい間違っていても実際には意味が通じることが多い、ということはぜひ忘れないでください

つまり、授業の中と実際のコミュニケーションとでは、「間違い」の意味が大きく変わってくるということです。コミュニケーションにおいては、通じない(通じさせようとしない)ことこそが間違いになります。ですから、少しくらい文法が間違っていたり怪しかったりしても、片言であっても、とにかく発言をして通じさせようとするというメンタリティーが重要なのです。

柔軟な発想で直訳から抜け出そう

そして、スムーズなコミュニケーションを阻害しやすいもう一つの原因が「直訳スピーキング病」です。直訳は言語学習の基本ではありますが、常に日本語からの直訳でしゃべろうとすると、うまく単語を知らなかったり思い出せなかったりして、言葉に詰まってしまいやすくなります。

例えば「彼は頑固です」と言いたくて「He is ・・・」の続きが出てこない人は多いのではないでしょうか。ここで「頑固って英語でなんて言うんだろう・・・? 頑固・・・」と考え続けても答えはまず出てきません。「頑固」という言葉にこだわるのではなく、別の表現に言い換えること(パラフレーズ)が大切になってきます。

例えば「彼は人の話を聞かない」と考えれば「He doesn't listen (to other people).」のような表現が可能になります。また、「He is too old.(彼は年を取り過ぎた)」なんて表現もいいかもしれませんね。

このように、正解(通じる表現)は一つではありません。柔軟な発想で、表現を切り替えて、どんどん伝えようとすることが大切です。

つまずきに合わせた学習方法を選ぶことが重要

英語をしゃべろうとしても、言葉がうまく出てこない・・・という人は多いと思います。しかし、ボキャブラリーを増やしたり、ただ英語でしゃべる練習をしたりすればよいわけではなく、今回は大きく四つの原因(もたつきスピーキング病、もやしボディ症、英語コミュ障、直訳スピーキング病)があることをお伝えしました。

私のイングリッシュ・ドクターとしての願いは、英語を上達させたいという多くの日本の方に、英語が話せる8段階のうちの5段階目(スムーズな会話ができる)、もしくは6段階目(深い話ができ、相手と分かり合える)を達成していただくことです。ぜひご自身のつまずきに合わせた学習方法を選んで、上達を加速させていっていただければと思います。

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西澤ロイ
西澤ロイ

イングリッシュ・ドクター TM。英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんなふうに英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など計11冊で累計17万部を突破。コミュニティFMラジオにて冠コーナー「西澤ロイの頑張らない英語」が好評オンエア中の他、メディア出演多数。「日本人が英語ができない時代を終わらせる」をモットーに、日本人が英語を使って国内外で活躍することを応援している。
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