「それから」を車輪にして物語を進めよう!And, so, but, thenを効果的に用いた文芸創作に挑戦

第三回クリエイティブ・ライティング

連載「クリエイティヴ・ライティング入門講座」では、立命館大学の吉田恭子さんが、英語で書く文芸創作エクササイズを出し、読者の皆さんに実際にクリエイティヴ・ライティングに挑戦していただきます。さらに、応募作品の一部を吉田さんが記事内で講評してくださいます。英語での表現力を広げるチャンスです!ぜひチャレンジしてみてください。

第2回の応募作品の中から作品を講評

この連載は、英文創作のエクササイズに挑戦して、第2言語で空想的文章を書く楽しみを体験してもらうのが目的です。読者の皆さんからの投稿を毎回紹介します。

前回の課題は、下のイラストをじっくり眺めて、そこから広がる想像の世界を、現在形を使って文章で表現するというものでした。「場所の感じ」を言葉で伝える工夫が求められる課題です。

クリエイティヴ・ライティング課題

今回は10作程度の応募がありました。どれも読み応えがあり、またしても迷いに迷っての選定でした。絵の中の世界にしばし留まらせてくれる作品、という観点で、Pノリさんの作品を選びました。

Pノリさん

It’s chilly tonight, isn’t it? How long are you standing here? Wow, you have patience. I admire you. Who are you waiting...sorry, none of my business.

Me? Well, you know, I’m new here and I don’t have anyone to wait for. I don’t have anyone to visit. You’re the first one I’ve talked to in this town. It’s nice to meet you.

Ah, you’ve lived here for decades. So, you must know lots of things about this place. You know the people, groceries, language...

Could you tell me what they are called here, the buildings? Apartment buildings, I see. I feel strange. That’s why I’m stopping here. The buildings, apartment buildings, remind me of my childhood, my life long before I came here. I don’t know why, though. I thought I’ve never lived in that type of house. Possibly this smell, the smell of the night, might stimulate my memory. Not sure.

Cars are parked. People live in their apartments. What do you think they’re doing right now? Are they having soup now, watching TV shows, or going to bed, behind these doors, behind that concrete? You’re right, they might be dreaming. It’s so quiet.

And their dreams, are they about their closest friends (lucky them) or sarcastic colleagues (unfortunately or not unfortunately). Or are they dreaming about those who they passed, could have passed or will pass in a street? I’m serious. I’m even thinking that they might be dreaming about us, you and me, like we are doing right now, imagining them dreaming, living in the apartments in front of us.

Look at the lights. Don’t you think they look like people’s faces. They are looking at me, and at you standing beside me. And you’re looking at them too, like I’m watching them, standing beside you.

You. Thou. Thee.

Tree. I know your name. I know your leaves shake when the wind caresses you. I know you being there even if I can’t see you.

And do you know me?

(Silence)

現在形と過去形では描写できる対象が微妙に違ってきます。現在形では「起こる」ことよりも「ある」ことが描きやすいですが、状態の描写に終始すると、文章から生命感が奪われてしまいます。そこで、視点の起点を情景の中に置いてみたり、誰が風景の中にいるのか、誰が誰に語っているのか、その語りは風景とどのような関係を結んでいるのか、といった「言葉の出どころ」を決める想像の膨らませ方が大切になってきます。

じっと絵を見て、そこから声が聞こえてくるような気がするとき、あなたは声の主の居場所を絵の世界の中に見いだした、と言えるのかもしれません。そのような位置付けができると、文章が続けて出てきやすくなるでしょう。

Pノリさんの作品は、語り手が実際にしゃべり続けている、すなわち、一人称のモノローグという設定で、時制と語りの位置付けの問題に対処しています。絵の中の世界でしゃべり続けている間は、語り手は、「いま・ここ」に留まっていることができるのです。

冒頭を読むと、見知らぬ人に声を掛けている様子です。相手はずっと誰かを辛抱強く待っているように見えることがわかります。

話し掛けた相手はどうやら語りの声に応答しているようですが、相手の言葉は書き留められていません。段落と段落の間に、相手の言葉が入るらしいことが想像できます。相手はわりと寡黙なタイプのようです。自然と語り手の言葉の方が長くなります。二人の対話というよりも、耳を傾ける見知らぬ人に、静かに、とつとつと話し掛けるような感じですね。

たまたま通り掛かったアパートがなんとなく気になる。そして、そこでずっと誰かを待っている様子の聞き手も気になるのですが、あまり立ち入ったことも聞けません。ですから、この語りは、半ば誰かに話し掛けているような、半ば自分自身に語り掛けているような調子を帯びてきます。それが、静かに落ち着いていて、現実を描いたようだけど、なんだか夢の中の光景のようでもあるイラストの雰囲気にマッチしています。

モノローグの寂しさの中にも感じる温かみ

最初は目の前の建物に思いを巡らす語り手ですが、徐々に、その建物の中の人々の暮らし、その人たちの見る夢、というふうに、外面から内側、さらに内側へと、目に見えない世界に思いをはせる。それでいてその言葉遣いは、すぐそばで耳を傾ける声なき相手に話し掛けるような、優しさが感じられます。

第7段落では、内へ内へと向かった意識が、再び建物の外見に戻ってきます。最初はただなんとなく気になった建物。しばらく想像を巡らせた後に見直せば、それはまるで人の容貌を思わせるようです。世界が今までとは違って見える瞬間です。語り手のそばに立っている物言わぬ聞き手もまた、その世界の変容に手を貸しているのです。

Look at the lights. Don’t you think they look like people’s faces. They are looking at me, and at you standing beside me. And you’re looking at them too, like I’m watching them, standing beside you.

この絵にも、Pノリさんのモノローグにも、そこはかとない寂しさが漂いますが、それは厳しく悲惨な孤独ではなく、知らない者同士が互いの存在を認め合うような、寄り添いながら通り過ぎるような、そんな温かみにつながっていることに私たちは気付きます。

そうして、たった3語の第8段落。 “You. Thou. Thee.”

その手前までの語り手のモノローグは、もしかしたら実際に声に出すのではなくて、心の中の声なのかもしれないな、と思えるのですが、この部分はきっと声に出しているのだな、と感じる瞬間です。そばにいる「あなた」に声を掛けることは、手を差し伸べることと同じです。

そして次の段落で、物言わぬ聞き手は「樹木」であったことが明かされます。たしかに絵を見直せば、左手前に大きな木が影を落としている。語り手は、この木のそばに立って建物を眺めていたことがわかります。だから木の影は人影でもあるのです。同時に、私たちは、このモノローグ全体を実際の対話ではなく、私的かつ詩的な発話として受け止めます。

そうして、もう一度冒頭から読んでみましょう。

It’s chilly tonight, isn’t it? How long are you standing here? Wow, you have patience. I admire you. Who are you waiting... sorry, none of my business.

事情がわかって読み直すと、少し説明的な気がしなくもありません。と同時に、この時点で、語り手が人間に話し掛けていることを読者はおそらく想定しますから、そう考えると少し不自然な声がけにも聞こえます。Wow という反応は、相手の答えに対する驚きを表現しています。人間だったら「3時間」という答えにWow!でしょうし、樹木だったらそれこそ「300年以上」といった答えが返ってきそうですよね。でも、実際は両者の間にあるのは沈黙の応答なので、後半部分のトーンも考慮すると、Wowではなくて、もう少し抑え気味でもいいのかもしれません。例えば・・・

It’s chilly tonight, isn’t it? How long have you been standing here? I admire your patience. You are waiting for someone? … Sorry, none of my business.

また、結末の二つの段落は思い切ってカットしてしまってよいと思います。相手が寡黙であることは、一貫して十分に伝わってきます。また、最後から二つ目の段落は、語り手のモノローグに仮託して描かれる物言わぬ木の視線というこの作品の焦点を、最後になって不必要に語り手へ誘導するように感じます。建物を見守る木に語り掛けていることが明らかになった時点でそっと終わると、この作品にふさわしい余韻が生きてくるのではないでしょうか。

また今回、次点に選ばれたのはikumiさん、milfoilさん、Kitisaさん、ぬいさん、町娘さんです。次点に選ばれた方々には、吉田先生からの講評コメントをメールでお送りいたしますので、ぜひそちらもチェックしてみてください。

今回の文芸創作エクササイズのテーマは?

皆さんも英語創作エクササイズに挑戦してみましょう!応募作品の一部を吉田さんが選定し、次回の記事内で講評してくださいます。ぜひチャレンジしてみてください。

【課題】英語創作エクササイズ3: And so but then...!

小学生の頃、遠足や運動会などの行事について作文を書かされた。小学5年生のときの先生は、やたらと作文を書かせる人で、健康診断の後まで作文を書かされて途方に暮れたことを覚えている。

読書感想文のように、考えていることをまとめる文章と違って、出来事について報告する文章を書くとき、子どもは最初から順番に書いていく。 小学1年生とかだと、「・・・しました。そして、・・・それから、そうして・・・、それから・・・」と文章を連ねがち。そこで先生に、「『それから』は何度も使ってはいけません!」と言われたりして、そうすると紙上で物事が前に進まずに困ったりする。

英語で作文するときも、andやbutといった等位接続詞やsothenといった副詞は、扱いによっては「稚拙な印象」を与えてしまう。英語の論文を指導するときには、「これらの語を文頭に使ってはいけません!」と、私もついつい言ってしまうほどだ。

でも、「それから」ってお話を前へ前へと転がしていく車輪のようだと思いませんか?

今回は、「そして」を連発して話を前に転がしてみよう。一つ一つの文はできるだけシンプルに。とにかく、どんどん前に話が進んでいくといい。推敲を重ねてもいいけれど、思い付きや気まぐれも大事。冒頭に加えて10センテンス書いたところで有無を言わさず “THE END”と入れて終わりにする。

話にオチや結末や終わりがなくても構わない。中途半端なところで終わってしまったと感じたら、その物語は続きを待っているのかもしれない

最初の文は下の5つの文の中から1つを選ぶこと。

He got off the bus at a wrong stop.

I opened the closet door first thing in the morning and found a penguin there.

The man will lose everything in five days, but he doesn’t know it yet.

Three days after our dog ran away, someone knocked at our door.

She reluctantly accepted an invitation for a trip to Mars.

ここから続ける文は“and” “then” “so” “but” のどれかで始めること。ただし、“so” “but”はそれぞれ一度だけ必ず使うこと。 “and” と “then”は何度使っても構わない。(150~200ワード)

まずは自由な発想で課題にチャレンジしてみてください。どうしても難しいなあというときや、書き終わってから、ほかの例を見たいときには、以下の回答例を見てくださいね。

【参加方法】

課題に従って英語の文章を作成し、以下のGoogleフォームからご応募ください。

ご応募はこちら

【募集期間】

2021年5月26日(水)~6月6日(日)※募集は終了しました。

※2021年6月18日(金)公開予定の次回の記事で、応募作品の一部について吉田さんが紹介し、講評します。

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吉田恭子

吉田恭子(よしだきょうこ)立命館大学教授。英語で小説を書く傍ら、英語小説を日本語に、日本の現代詩や戯曲を英語に翻訳している。著書に短編集『Disorientalism』(Vagabond Press、2014年)、翻訳にデイヴ・エガーズ『ザ・サークル』(早川書房、2014年)など。