「あなたの人生の最初の記憶は?」英語で文芸創作に挑戦してみよう!

クリエイティヴ・ライティング入門

連載「クリエイティヴ・ライティング入門講座」では、立命館大学の吉田恭子さんが、英語で書く文芸創作エクササイズを出し、読者の皆さんに実際にクリエイティヴ・ライティングに挑戦していただきます。さらに、応募作品の一部を吉田さんが記事内で講評してくださいます。英語での表現力を広げるチャンスです!ぜひチャレンジしてみてください。

クリエイティヴ・ライティングって何?

これから数回にわたって英文創作のエクササイズを紹介します。

英語圏には大学や大学院で小説や詩を書くクリエイティヴ・ライティング・プログラム(創作科)が1千以上もあると言われています。アメリカでは1930年代に最初の創作科大学院がアイオワ大学に設置されました。また、2017年にノーベル賞文学賞を受賞したカズオ・イシグロは、イギリスで最も評価が高いイーストアングリア大学院創作科の一期生です。日本のような文学新人賞や文芸誌の担当編集制度がないアメリカやイギリスでは、創作科大学院で文芸修業をすることが一般的になってきました。

そのため初心者向けからプロレベルまで創作教授法が発達しており、小説執筆のきっかけとなるようなエクササイズも数多く知られています。

私が最初に英語に出会ったのは小学6年生のとき、NHKのラジオ講座「基礎英語」のことでした。中学で始める英語学習に備えてラジオ講座を聞き始めたのです。4月の2週目、定番の “This is a pen.” が登場。これは誰でも知っている、となめていたら、その次の日が “Is this a pen?”。主語と述語を入れ替えると疑問文になるという仕組みが、日本語しか知らない子どもの私にとっては衝撃でした。日本語とはまったく違う文字と語彙と論理と枠組みで見ると、世界はいったいどう変わって見えるのだろうか?と想像力をかき立てられました。

交換留学でアメリカの高校に一年学んだとき、クリエイティヴ・ライティングの授業があって、学校で小説を書いたりできると聞いて、ぜひ試してみようと授業を取りました。そこで初めて英語で創作したときは、普段ことばを使っているときに使う脳の場所とは違う場所を使って世界を組み立て直しているような感覚を味わいました。

それから紆余(うよ)曲折あってアメリカ、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校でクリエイティヴ・ライティングの博士課程で学ぶことになり、同時に院生教員として、大学2年生向けの創作入門ワークショップを担当することになりました。そこで、さまざまな創作の教科書を読み比べたり、学生たちといろいろなエクササイズを試したのでした。

日本にも、作家レアード・ハントが2015年福島県郡山市で「ただようまなびや」の英文創作ワークショップを担当したことから生まれた『英文創作教室』(柴田元幸編訳、研究社)という本があり、時の試練に耐えた優れた創作エクササイズと最上の教師の組み合わせが生み出す学びの豊かさを再現してくれています。

母語以外での創作は人を「自由」にする

この連載では、よく知られている課題やオリジナルの課題、また第二言語話者向けの課題などに挑戦してもらうことで、母語以外の言語で創作する楽しみを体験してもらい、あらためて言語と私たちを取り巻く世界や、言葉と意識の奥底との関係を見つめてもらうきっかけになればと思います。

毎回の課題への応募作の中からひとつ作品をピックアップして次の回で紹介してコメントする形で進めていく予定です。

そもそもなぜ英語で創作するのか。それは、不自由な言語で書くことで自由になれるからです。

何をどのように書いてもよいのが小説ですが、そう言われるとかえって何を書いてよいのかわからなくなるもの。自在に操れる日本語で無限の可能性の中から何かを書こうとなると途方に暮れても、英語で書くとなればできることが限られて、書けることをとにかくシンプルに書いていくしかありません。

そのような、書ける世界もその世界を描く道具となる言葉も制限されたような、縛りのあるゲームのような感覚が、あれこれ思い悩まずにただ書くという行為を取り戻してくれるのです。そして、実際に英語で書いてみると、日本語だと自在に操れる、無限の可能性がある、と感じていたのは実は錯覚だったと気付くこともあるかもしれません。

あるいは、気が付くと、日本語だったら書かないような「ヘンなこと」とか「どうでもいいこと」とか「つまらないこと」を書いていると思ったらしめたものです。物語の種は、普段なら素通りしてしまうところを立ち止まって考えてみたときにえてして見つかるからです。

これは、すでに日本語で創作をしている人に第二言語での創作を強くお勧めする理由でもあります。ついついすらすら書いてしまう。あるいは、きれいな文章でたいそうなことを書く必要はないのだと頭ではわかっていても、文章を飾ってしまったり、紋切り型に寄りかかったりしてしまう。

けれども第二言語で書くときは、母語で身に付けた「言語の筋肉」とはまた別の「筋肉」を使わせられることになります。普段の言語活動では使わない「筋肉」を鍛える感覚を意識することができます。

普段私たちが使っている手垢のついた日本語を再生し、まるで新たな言語に出会うような感覚を呼び覚ましてくれるのが、詩や小説といった言語芸術、すなわち「言葉の遊び」です。自分の中で母語を「外国語化」する英語創作の練習は、日本語で小説や詩を書く人にも、日本語を外から見ることで新たな洞察を与えてくれるはずです。

第二言語での創作は、文法問題で得点したり、さまざまな試験で結果を出したり、日本語以外で「用を足し」たり「発信」したりするための外国語習得からわたしたちをしばし自由にしてくれます。

もちろん、自由に書くことは、文法や人称や時制といった英語の決まりごとを無視してよいということではありません。むしろ、文法などを過度に意識せずに自由に表現するためには、文法をしっかり身に付けておくことが大きな助けになります。

創作すること、とりわけ慣れない第二言語で創作することは、瓶詰めの手紙を海に流すような心もとない行為です。しかし、母語と違ってわたしたちが物心ついてから出会った言葉を使って、想像の世界を組み立てるゆっくりとした営みは、表面上の意味伝達以上の役割を言葉に取り戻す、そんな言葉の力を自分に引き寄せるきっかけになることでしょう。

英語の文芸創作に挑戦してみよう!

本連載「クリエイティヴ・ライティング入門講座」では、皆さんに英語創作エクササイズに挑戦していただきます。応募作品の一部を吉田さんが選定し、次回の記事内で講評してくださいます!ぜひチャレンジしてみてください。

【課題】英語創作エクササイズ1「最初の記憶」

自分の最初の記憶をたぐり寄せて、一人称と過去形を使って記述してみよう。おぼろげな部分があったり、断片的でも構わない。印象に残っている細部とまったく思い出せない部分のギャップなんかもそのままに、軽く記録する感じで書いてみる。

続いて、先ほど書いたパッセージを三人称と過去形を使って書き直してみよう 。その際、内容を部分的に改変して、自分の記憶とは異なるものにすること。そして自分の記憶にはない細部または描写を加えること。200~300ワード程度にまとめてみましょう。

まずは自由な発想で課題にチャレンジしてみてください。どうしても難しいなあというときや、書き終わってから、ほかの例を見たいときには、以下の回答例を見てくださいね。

【参加方法】

課題に従って英語の文章を作成し、以下のGoogleフォームからご応募ください。

ご応募はこちら

【募集期間】

2021年3月24日~4月7日 ※募集は終了しました。

※2021年4月21日公開予定の次回の記事で、応募作品の一部について吉田さんが紹介し、講評します。

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吉田恭子

吉田恭子(よしだきょうこ)立命館大学教授。英語で小説を書く傍ら、英語小説を日本語に、日本の現代詩や戯曲を英語に翻訳している。著書に短編集『Disorientalism』(Vagabond Press、2014年)、翻訳にデイヴ・エガーズ『ザ・サークル』(早川書房、2014年)など。