バイデン大統領就任式で話題!アマンダ・ゴーマンさんの美しい詩から英語表現を学ぼう

写真:ロイター

2021年1月20日(現地時間)にアメリカ連邦議会議事堂で行われたバイデン大統領の就任式には、歌手のレディー・ガガさん、女優で歌手のジェニファー・ロペスさんなど華やかな面々が登場しました。その中でも話題をさらったのが、鮮やかな黄色のコートをまとった22歳の女性詩人、アマンダ・ゴーマンさんです。彼女の美しい詩から、英語表現を学びましょう。

アマンダ・ゴーマンってどんな人?

ゴーマンさんは1998年ロサンゼルス生まれ。物心ついたときから詩を書き始め、言語障害などに悩まされながらも、それが 原因 でいっそう詩にのめり込んだとインタビューで語っています。 *1

ハーバード大学で社会学の学士号を 取得 。ハーバード大学在学中の2014年には、16歳の若さで初の全米青少年桂冠詩人(National Youth Poet Laureate)に選ばれ、全米の注目を集める若手詩人となりました。

バイデン大統領の就任式で詩を朗読

1961年のジョン・F・ケネディ大統領の就任式以来、アメリカを代表する詩人が就任式で詩を朗読することはありましたが、今回、ゴーマンさんは史上最年少の詩人として大抜擢されました。

彼女を推薦したのは、彼女の作品のファンであるファーストレディのジル・バイデンさんだったそう。大統領就任式のために詩を書いてほしいという依頼を受けたゴーマンさんでしたが、2021年1月6日に起こった合衆国議会議事堂の襲撃事件を受け、徹夜で詩を書き直したと言います。 *2

歴代最年少というプレッシャーを跳ね除け、大勢の観衆の前で堂々と披露されたゴーマンさんの詩は、ヒラリー・クリントンさんやバラク・オバマ元大統領をはじめとした多くの著名人から称賛を浴びました。

大統領就任式後、彼女のTwitterアカウントのフォロワーは急増(2021年1月26日現在で147.1万人)。その注目度の高さがうかがえます。

twitter.com

詩から英語表現を学ぼう

大統領就任式で披露された彼女の詩“The Hill We Climb”の一部を味わいながら、英語表現を学びましょう。詩の出典・全文は こちら

(動画1:30頃~)

We the successors of a country and a time

Where a skinny Black girl

descended from slaves and raised by a single mother

can dream of becoming president

only to find herself reciting for one

descended from は、「~の系統を引いている」という意味。ここでは、かつて奴隷として扱われた黒人の系統を引いていると述べています。

a skinny Black girl (痩せた黒人の女の子)とは、ゴーマンさん自身のこと。「奴隷の子孫で、シングルマザーに育てられた痩せた黒人の女の子が、大統領になることを夢見ることができる」とあります。

ゴーマンさんはこれまで、人種差別から警察の残虐行為、移民の子どもたちの投獄に至るまで、幅広い問題について語っており、2036年にアメリカ大統領選に出馬する意向を表明しています。 *3

recitingrecite の現在分詞形で、「朗読する」という意味。oneはすぐ前に出て来るpresidentを指していて、「バイデン大統領のために詩を朗読している」ということです。「リサイタル」と聞くと、どうしてもジャイアンが歌を披露している場面を想像してしまうのですが(私だけでしょうか?)、 recite はほかに「暗唱する」「列挙する」という意味もあり、祈りの言葉などを「唱える」という意味でも使われます。

(2:10頃~)

And so we lift our gazes not to what stands between us

but what stands before us

We close the divide because we know, to put our future first,

we must first put our differences aside

We lay down our arms

so we can reach out our arms

to one another

close the divide は、「分断を閉じる(終わらせる)」こと。トランプ政権や今回のアメリカ大統領選などで生じた数々の分断を指していると捉えられます。

put ~ first は、「~を第一に考える」という意味です。 She always puts her own interests first. (彼女はいつも自分の利益を第一に考えている)などと使います。

続く put ~ aside は「取りあえず脇に置いておく」という意味。この詩では、「未来を最 優先する ためには、人々の違いのことは脇に置いておかなければならない」と言っています。put ~ asideには「ためておく」という意味もあり、 I’ve put aside 5,000 yens to buy the textbooks. (教科書を買うために5000円をためた)というように使います。put ~ firstもput ~ asideも、どちらも汎用性の高い表現ですので、覚えておきたいですね。

We lay down our armsの arms は「武器」、その後に登場する so we can reach out our armsのarmsは「腕」の意味で使われています。

lay down は「~を横たえる」「命を投げ出す」などさまざまな意味がありますが、ここでは「(武器などを) 捨てる 」という意味で使われています。「お互いに手を差し伸べられるように、武器を 捨てる 」という意味ですね。

(3:31頃~)

We've seen a force that would shatter our nation

rather than share it

Would destroy our country if it meant delaying democracy

And this effort very nearly succeeded

But while democracy can be periodically delayed

it can never be permanently defeated

shatter は、「~を粉々に打ち砕く」という意味。その後の share と対応していて、「国を共有しようというよりむしろ、打ち砕こうとする勢力」ということです。ドナルド・トランプ前大統領の顔が浮かびます。

periodically は「定期的に、一定期間ごとに」という意味の副詞。後の permanently (永久に)と対応していて、「民主主義は一時的に滞ることがあっても、永遠に打ち負かされることはない」と述べています。

nearly succeeded, periodically delayed, permanently defeatedと、-ly, -edという音が連続したリズムをつくり出しています。

(4:43頃~)

We will not be turned around

or interrupted by intimidation

because we know our inaction and inertia

will be the inheritance of the next generation

Our blunders become their burdens

inから始まる言葉が続きます。 intimidation は、intimidate (脅す、怖がらせる)の名詞形で、「脅し、脅迫」のこと。

inaction は「何もしないこと、怠惰」という意味です。in(否定の接頭辞)- action と分けてみるとわかりやすいですね。

inertia は「惰性、無気力」、 inheritance は「継承」「相続」という意味。つまり、私たちの世代が何もしなかったり、無気力でいたりすることが、次の世代に受け継がれてしまうということを述べています。

blunder (大失敗、へま)と burden (負担、重荷)とbから始まる言葉が並べられ、「私たちの世代の失敗が、次の世代の重荷となる」と言っています。

blunderはここでは名詞で使われていますが、「へまをする」という意味の動詞としても使われます。また、 blunder out a secret で「うっかり秘密を漏らす」、 blunder away one’s chance で「うっかり好機を逃す」という意味にもなります。

今後も ますます注目を集めそう"> 今後も ますます注目を集めそう

ジェスチャーを交えてパフォーマンスをするゴーマンさんには22歳とは思えない威厳があり、朗読された詩は、アメリカが深く傷ついたことを認めつつも、未来への 希望 と強い意志を感じさせるものでした。

今回朗読された詩の題名を冠したThe Hill We Climbという詩集が4月27日に、 Change Singsという子ども向けの絵本が9月21日に発売予定です。大統領就任式での演説後、この2冊は発売前 にもかかわらず Amazonランキングでトップを記録しました。

今後も ますます注目が集まりそうな彼女。気になった方は、ぜひ詩集も読んでみてくださいね。

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