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米大統領選に向けて問い掛ける「愛と平和と団結」【EJ’s Playlist】

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「今聴いてほしいアーティスト」と関連する楽曲を音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと合わせて高橋芳朗さんが解説します。

今月の1曲

Stevie Wonderの「Can’t Put It in The Hands of Fate」を紹介します。

Can't Put It In The Hands Of Fate [feat. Rapsody & Cordae & Chika & Busta Rhymes] [Explicit]
 

11歳の若さで音楽レーベル「モータウン」と契約して以来、60年にもわたって輝き続けるレジェンド、スティーヴィー・ワンダー。2020年に自身のレーベル「So What The Fuss Music」を立ち上げ、その第1作目となる今作は、次男の誕生日を記念して2曲同時リリースされた。

今のアメリカに向けて問いかける新曲

Photo by Mario Anzuoni

写真:ロイター

ドキュメンタリー映画『メイキング・オブ・モータウン*1』(2019)が日本国内でロングランヒットを記録する中、同レーベルに11歳から在籍する古参にして、ポップミュージック界の生ける伝説、スティーヴィー・ワンダーが4年ぶりの新曲「Can’t Put It in The Hands of Fate」と「Where Is Our Love Song」を同時に発表した。

もっとも、この2曲はモータウンではなく自らが主宰するレーベル「So What The Fuss Music」からのリリース。注目はラプソディ、コーデー、チカ、バスタ・ライムスらがラップで参加した「Can’t Put It in The Hands of Fate」の方で、もともとラブソングとして作った曲を昨今のBlack Lives Matter運動の盛り上がりに応じてプロテストソングに改変したという。

You say you’re sick and tired of us protesting / I say, “Not tired enough to make a change” / You say, “Just you hold on” / I say “No way, ’cause we can’t put it in the hands of fate” / Can’t put it in the hands of fate, now, baby, uh

君は僕たちの抗議活動に対してもううんざりだって言う/でも、変革にはまだ十分じゃないんだ/君は「ちょっと待て。落ち着けよ」と言う/でも、この状況を変えるためには運命に任せているだけではダメなんだ/運命に身を委ねていてはダメ、いまこそ行動のとき

今回の新曲を作った意図について「どうか愛と平和と団結の必要性に耳を傾けてほしい」と切実なコメントを寄せるスティーヴィー。この原稿を書いている10月現在、大統領選を目前に控えたアメリカに向けて、今年70歳を数えるレジェンドが放った訴えはどのような反響をもたらすことになるのだろう。運命の日は、もうそこまで迫っている。

モータウンを代表するプロテストソング5選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。

  1. What’s Going On by Marvin Gaye
  2. Ball of Confusion by The Temptations
  3. War by Edwin Starr
  4. Friendship Train by Gladys Knight & The Pips
  5. Living for the City by Stevie Wonder

 

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年1号に掲載した記事を再編集したものです。

*1:モータウン:アメリカ、デトロイトの音楽レーベル。スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイ、ジャクソン5など数々のトップアーティストを輩出した。

高橋芳朗音楽ジャーナリスト、ラジオパーソナリティ、選曲家。TBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」にレギュラー出演中。著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)、『生活が踊る歌』(駒草出版)など。