「国際?酒師」第一次試験対策のポイントとは?英語で過去問にチャレンジしよう

「国際?(きき)酒師」の資格を 取得 しよう!と決めたら、試験対策に向けた学習が必要ですね。日本酒の資格っていったいどんな学習が必要なの?試験対策はどうすればいいの?といった疑問について、国際?酒師で、シンガポールで同資格の試験監督も務める藤代あゆみさんに教えていただきます。今回は、試験の出題形式と第一次試験の概要と試験対策のポイントについてです。

目次

試験に出てくる英語を極めよう!

日本酒サービス研究会・酒匠研究連合会(Sake Service Institute、以下「SSI」)公認の国際?(きき)酒師および日本酒学講師の藤代あゆみです。私がただの大酒飲みとして白い目で見られない理由(笑)の1つが、国際?酒師の資格があること。

皆さんにもこの資格に興味を持ってもらうべく、 前回 は国際?酒師そのものやその試験の概要についてお話ししましたが、日本語の?酒師と違って、日本には公式の「国際?酒師」試験対策講座がないのが困るところ。

第2回では、独学で勉強される方に向けて、 第一次試験のヒントと対策 についてお話しします!それぞれの用語の意味や特徴については説明していませんが、各章の勉強を進める際にポイントとなる点をまとめていますので、テキストを読み進める際に確認し、試験への対策を進めてくださいね。

国際?酒師の公式テキストである『 日本酒の基 NIHONSHU-NO-MOTOI The textbook for INTERNATIONAL KIKISAKE-SHI 』(以下、テキスト)がお手元にあるとより充実して学べますので、購入された方はぜひご準備ください。

把握 しよう">日本酒の勉強・・・の前に!出題形式を 把握 しよう

国際?酒師の試験勉強をしてみよう!というあなたであれば、英語は得意だと思いますが、まずは 試験に出てくる英語 に慣れましょう!

第一次試験~第三次試験の制限時間はそれぞれ50分ずつしかないので、ぶっつけ本番の試験で、質問を読むのに時間を取られてしまってはもったいないですもんね。試験用紙への書き込みは許可されているので、線を引いたり、丸で囲ったり、的確に問いの内容を捉えるための参考にしてください。

では、早速、国際?酒師の WEBサイトで公開されている過去問 を元に、出題形式をまとめてみました。試験では以下のように出題されますので、参考にしてください。

regarding ~.">1. Questions regarding ~.

~についての問いです 」という意味。これから問われる問題の概要ですので、読み飛ばしても大丈夫です。

例文

Questions regarding basic knowledge of each type of alcoholic beverages.

アルコール飲料に関する基礎知識についての問いです。

each question from X to Z.">2. Answer each question from X to Z.

XからZまでの問いに答えよ 」という意味。こちらも、設問そのものを見ればわかるので、しっかり読む必要はありません。

例文

Answer each question from (1) to (3).

(1)から(3)までの各問いに答えよ。

Use alphabet to answer the multiple -choice questions.">3. Use alphabet to answer the multiple -choice questions.

選択肢の中から、アルファベットで答えよ 」という意味。解答用紙のスペースが狭く単語が入りませんから、意味を間違えることはないものの、A~Dの代わりにうっかり答えの(英単語の)頭文字だけを書いてしまうことがないように注意してくださいね!

the following the correct / incorrect ~.">4. Choose from the following the correct / incorrect ~.

次の中から正しい/間違っている答えを選択せよ 」という意味。“ correct ”なのか“ incorrect ”なのかでまったく違ってきますよね!しっかりと勉強していれば、選択肢を見て「あれ?」と思えるのですが、ただでさえ緊張している試験中。自信のない範囲が出題されると、不安に負けてしっかりと考えられなくなってしまいますので、気を付けましょう。

例文

Choose from the following the correct period of time when sake in Japan originated.

日本で日本酒が誕生したと言われる時期について正しい答えを選択せよ。

State ~.">5. What is ~. /Write ~. / State ~.

記述式の問題 の場合は、このように問いが始まります。選択肢もありませんし、解答用紙も、スペースが大きく取られているので、一目でわかります。

しかし、気を付けなければいけない点は、答えを1つだけ書くように問われている場合だけでなく、2、3個書くことが問われていることがあること。数字はアラビア数字で記されず、英語で書かれていますので、見逃しがちです。

解答用紙が複数行にわたっていて、長文を書けばよい場合もあれば、要点を2、3個簡潔に書くことが求められる場合もありますので注意しましょう。

例文

State three characteristics of Japanese cuisines.

日本食の3つの特徴を述べよ。

この5つのポイントを押さえておけば、試験のときも 安心 ですね!これらをまとめると、以下のようになります。実際の試験で出題されるフォーマットですので、試験前には特に見直しをしておきましょう。
出題例
Questions regarding basic knowledge of each type of alcoholic beverages. Answer each question from (1) to (2). ( Use alphabet to answer the multiple -choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)(1) Choose from the following the correct ingredient of the most ancient fermented beverage .

A : rice

B : grape

C : barley

D : apple

(2) What is the boiling point of alcohol.

第一次試験対策

第一次試験では、 日本酒に関する専門知識 に加え、そのほかの アルコール飲料や飲食全般に関わる基礎知識 が問われます。全部で300ページにわたる テキストのおよそ半分が、第一次試験の範囲 です。かなり範囲が広いので、隅々まで読み込む必要があります。

特に、日本酒の専門知識に至っては、「原材料」「製造方法」「法律」「歴史」と非常に幅広い内容ではありますが、国際?酒師の試験に合格できるほど勉強すれば、自信を持って日本酒に関わる活動に邁(まい)進できるでしょう!

それでは、テキストに沿って出題範囲の概要を解説していきます。

Introduction ">P.6~ Introduction

イントロからも出題されるの?!と驚いたあなた。はい、少しだけ出ます。ただ、国際?酒師として知っておくべきことや、あるべき姿など、丸暗記しなくても答えられるような設問になりますので、テキストを読み進める前や、試験が近づいてきたときに読み返すようにしておきましょう!

various alcoholic beverages, food with palatability and beverages">P. 13~ (A) Basic knowledge of various alcoholic beverages, food with palatability and beverages

alcoholic beverages">Ⅰ. Basic knowledge of alcoholic beverages

連載「日本酒オタクのおもてなし英語」第9回 で「世界のお酒について知ろう!」と題して全体的なことを書きましたが、テキストではより詳細な内容が載っています。内容が難しいなと感じたら、まずは第9回の記事を読んでからテキストを読み進めることをおすすめします。

ビールやワイン、日本酒といった“ fermented beverages ”(醸造酒)、ウイスキーや焼酎などの“ distilled liquor ”(蒸留酒)、さらにカクテルのベースに使われる“ mixed liquor (liqueur) ” (混成酒・リキュール)の歴史や、特徴について人に教えられるくらいに覚えておきましょう!

また、P.25以降にアルコール発酵の詳しい説明が載っていますが、日本酒が自然の恵ではなく、人の手によって造られる技術の結晶であることを特徴づける“ parallel multiple fermentation ”(並行複発酵)についても解説されています。ワインのような“ single fermentation ”(単発酵)やビールのような“ single line multiple fermentation ”(単行複発酵)との違いをよく理解しておくことも大切です。

ちなみに 、試験では大事な内容であっても、これらの知識はビギナー向けの?酒会やセミナーで話すと理解してもらうのは難しいので、日本酒愛好家の方をターゲットにしている場合のみにお話しすることをおすすめします。

Product characteristics of main alcoholic beverages and palatability foods">Ⅱ. Product characteristics of main alcoholic beverages and palatability foods

一覧表になっているので暗記するのに助かりますね!お酒を中心に覚えていきましょう。前項で重要だと思ったポイントをこちらの表に書き込めば、あなただけの最強のあんちょこになりますよ!

P.35~ (B) Basic knowledge about sake

Ⅰ. Raw materials

日本酒造りに欠かせない 原材料である“rice”(米)、“water”(水)、そして“microorganisms”(微生物) *1 について解説されています。

日本酒に使われる米や水は、普段私たちが口にしているものと違って特別な品質ですので、そちらを意識して勉強するのが試験対策になります。また、微生物 に関して は、聞き慣れないものが多いかと思いますが、それぞれの微生物の役割の違いをよく理解することが大事です。

麹菌は、米に含まれるデンプンを“saccharide”(糖化)させるため。酵母は、“ convert sugar into alcohol”(砂糖をアルコールに変える)、いわゆる発酵をすること。そして、乳酸菌は、“ prevent growth of unnecessary microorganisms”(不要な微生物の増殖を妨げる)をすること。

水については、 「日本酒オタクのおもてなし英語」第8回 にて解説した「#日本酒オタクに聞きたい」の質問の回答を読んでおくと、 事前に 知識を得ることができますよ。

Production method ">Ⅱ. Production method

日本酒はワインと違い、製法によって味が決まります。おおまかにわけて、 5つのステップ (米の 処理 、麹造り、酒母造り、発酵、搾りから瓶詰めまで)がありますが、それぞれ どのような目的で 行われているのか、また、製法を変えることによってどのように 味わいに変化が起きるのか把握する 必要があります。

前章の微生物 に関して 、それぞれの役割が理解しづらかった場合は、この製法のところを読み込むことで理解が深まりますので 安心 してくださいね。

日本酒のラベルに書いてある難解な専門用語、例えば「生?(きもと)」や、「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」、「原酒(げんしゅ)」なども、この章を学ぶことで理解できるようになりますので、ページ数は多いですが、ご自身で日本酒を楽しむのにも生かせる知識になりますよ。

Ⅲ. Indications

日本酒はアルコール飲料ですので、 法律 がしっかりと定められています。法律上の日本酒の定義を理解することも大事ですが、「 純米大吟醸 」や「 本醸造 」など、ラベルによく書いてあることも押さえておきましょう。

こういった表記は「特定名称」といいますが、 「日本酒オタクのおもてなし英語」第2回 にて、日本酒の種類や特徴をわかりやすく解説していますので、まずはそちらを読まれることをおすすめします。

また、法律はいわゆる「 酒税法 」であり、国税庁の管轄です。よって、税金をしっかりと徴収するために定められている部分があるという点を理解すると、ラベルの表示ルールも納得!

日本酒のラベルが難解でわかりづらいのは、法律上、表記しなければいけないものがとてもシンプルだからです。逆に表記してもしなくてもいい情報に「味の決め手」などが含まれるのですが、そういった情報を表記する かどうか は酒蔵さんに委ねられているため、味に対して共通の 指標 がなく、日本酒ビギナーの方は選ぶのに迷ってしまうようです。

Ⅳ. History

日本酒には 2000年にもおよぶ歴史 があると言われています。2000年の歴史が範囲になるとは・・・、恐ろしいですね。出題範囲は、縄文時代から始まります・・・。ほかの章よりも、どこが重要なのか非常にわかりづらいため、心が折れそうになってしまうかもしれません。一度はすべてに目を通してもらい、流れを掴んだあとに重要なポイントを抑えるには、 各時代の最後にある“ summary ”をチェック することです。

逆に、“ summary ”だけを読んでも理解できませんので気を付けてくださいね。“ summary ”を通じて、それぞれの時代の特筆すべき事項をおさえつつ、特に 江戸時代 のことは細かく覚えましょう。

現代の日本酒造りにつながる「寒づくり」、「火入れ」、「段仕込み」、「杜氏(とうじ)」、「柱焼酎」、「澄み酒」などが江戸時代に始まっているからです。江戸時代に続き、明治時代以降にも、おいしい日本酒を造るための技術などが開発されていますから、製造方法と見比べながら勉強するとわかりやすいです。

例題にチャレンジしてみよう!

国際?酒師の第一次試験に頻出の問題を、過去問からピックアップしました。前回の記事で、試験が改訂されたと書きましたが、SSIのWEBサイトに掲載されている過去問は以前の形式のため、THE FIRST EXAMINATITONとTHE SECOND EXAMINATIONが第一次試験の試験範囲です。

また、WEBサイトには答えが載っていませんが、この連載は会員限定記事なので、問題の最後に答えを載せていますよ!

regarding basic knowledge of each type of alcoholic beverages. Answer each question from (1) to (2).">1. Questions regarding basic knowledge of each type of alcoholic beverages. Answer each question from (1) to (2).

(1) Choose from the following the correct explanation regarding fermented beverage .

A : Many contain about 5 to 15% alcohol content .

B : Many contain about 25 to 35% alcohol content . 

(2) What is the boiling point of alcohol.

regarding storing management of alcoholic beverages. ">2. Questions regarding storing management of alcoholic beverages.
Choose from the following the correct alcoholic beverage that needs to be stored with moderate amount of humidity.

A : beer

B : wine ( with cork )

C : sake

D : whiskey

regarding the history of alcoholic beverages in Japan. ">3. Questions regarding the history of alcoholic beverages in Japan. 
Choose from the following the correct period of time when sake in Japan originated.

A : about 500 years ago

B : about 1,000 years ago

C : about 1,500 years ago

D : about 2,000 years ago

regarding the production method of sake. ">4.Questions regarding the production method of sake. 
What percentage of rice is polished off when a 30% seimaibuai is indicated.
regarding labels of sake. ">5.Questions regarding labels of sake. 
Choose from the following the correct number of tokutei meishoushu.

A : 6 types

B : 7 types

C : 8 types

D : 9 types

答え

1. (1)A : Many contain about 5 to 15% alcohol content .(2)78.3℃

2 . B : wine ( with cork )

3. D : about 2,000 years ago

4. 70% (100% - 30% = 70%)

5. C : 8 types ( 日本酒オタクのおもてなし英語 第2回 参照)

まとめ

国際?酒師の試験の設問の英語はさほど難しくなく、問われている内容を理解することへの不安が解消されていれば幸いです。

一方で、第一次試験は非常に出題範囲が広いため、短期間で丸暗記するのは苦労します。用語を覚える前に、内容をしっかりと理解することに重点を置き、“ summary ”を読めば「あのことだ!」と思い出せるようにしましょう。

国際?酒師の試験対策については、全3回でまとめているため、あっという間に次回で最後!記述が多い第二次試験と第三次試験の対策についてお話します!

藤代あゆみさんの過去連載

連載「日本酒オタクのおもてなし英語」では、国際?酒師および日本酒学講師の資格を持つあゆみせんせいが、日本酒の知識や日本酒にまつわる英語表現などを紹介しています。外国の方とコミュニケーションを取る きっかけ や話題のネタにもなる「日本酒」を英語で学びましょう!連載 第5回 では国際?酒師のお仕事についても触れています。

▼連載第1回はこちら!

ej.alc.co.jp

藤代さんの書籍

藤代さんの連載「日本酒オタクのおもてなし英語」がEJ新書(電子新書)になりました!追加原稿も加わりさらにパワーアップした内容になっています。お酒が好き、英語を使った仕事に興味がある、英語を学習中など、すべての方におすすめの一冊です!

編集:加藤愛美
*1 :“Koji mold ”(麹菌)、“yeast” (酵母)、“lactic acid bacteria ” (乳酸菌)など

藤代あゆみ 平成元年、東京生まれ、共立女子大学文芸学部劇芸術コース卒。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)公認国際?酒師・日本酒学講師・酒匠。「日本酒オタクのあゆみせんせい」として、シンガポールを中心に、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米、南米など世界20カ国以上の人に向けて日本酒を広める活動を経験。好きな漫画は『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(平尾アウリ著、徳間書店)
Official Website: https://www.ayumi-and-sake.tokyo/
Twitter: @ayumi_and_sake
Instagram: @ayumi_and_sake

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