英語を使った言葉遊びが面白い!言語学者も注目の日本の店名

日本で普通に使われている外来語や和製英語。でも、世界から見るとかなり不思議!?アメリカで生まれ、日本で暮らし、博多弁を操る言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが、最近日本で見つけた「不思議なエイゴ」をご紹介します。今回は、実は深い意味が込められている、日本の店名を取り上げます。

英語の店名を間違って発音してしまう

私が住んでいる福岡県宗像(むなかた)市には、「サンリブ」という名前のショッピングモールがあります。宗像市民にとって、主要なお出掛けスポットです。

もっと安いスーパーはほかにもありますが、サンリブには多くのお店が集まっているので、私もよく行っています。

チェーン店なので、福岡にはほかにもいろんな「サンリブ」のお店があります。初めて英語の表記「Sun Live」を見たとき、 発音を間違えました 。「サンライブ」だと思ったんです。英語のLiveには複数の意味と発音があるので、文脈がないとわからないのです。

・「生きる」「住む」という意味のlive (リブ)

Where do you live?

どちらにお住まいですか? 

I want to live to be 100 years old.

100歳まで生きたい。 

・「生(なま)の」という意味のlive (ライブ)
That show is being broadcast live.

その番組は生中継されています。

・「コンサート」という意味のlive (ライブ)
I went to a live concert in Tokyo last night.

昨夜は都内のライブに行ってきました。

今まで何回、「サンライブに行きたい!」と間違えて言ってしまったことでしょう。

なぜ「Sun Live」という名前になったのだろう、とよく考えます。お日さまが生きているから?お日さまのおかげで、人間が生きているから?お日さまと仲良く暮らしているから?今度調べてみようかな。

「サンライブ」と読むよりも、「サンリブ」と読む方がよっぽど意味深です。なんか、 自然を大事にする日本文化にピッタリな名前だな 、と今は思っています。

文字の種類が多い日本語ならではの言葉遊び

同じ宗像市では、youme Townというショッピングモールもあります。

あなたは、この英語表記を見て、どう発音しますか?

アメリカ人はおそらく、いやほとんどの日本人も、「ユーミータウン」と読むのではないでしょうか。けれど、実際は「ゆめタウン」です。

何年か前、私の母が日本に来ました。まったく日本語がわからない母は、youme Townの看板を見て、“What’s yume Town(ゆめタウン)?”(ゆめタウンって何?) と言いました。私はバリびっくりしました。確かに、ローマ字で読むと「ゆめタウン」と発音するけれど・・・なぜか母は最初から正解の読み方をしていました。不思議です。

私は、 こういう言葉遊びをする日本人が好き過ぎてたまりません 。この名前は、「夢タウン」そして、「あなた(you)と私(me)のタウン」という2つの意味が含まれている、 最高の言葉遊び です。

こういった名前は、英語を適当に使っている訳じゃなくて、意図的に言葉遊びをしているに違いないのです。

なぜこういうことができるかというと、日本語には4つの文字があるからだと思っています。平仮名、片仮名、漢字、ローマ字があるからこそ、言葉遊びの 可能性 は無限に広がるのです。

けれど和製英語と同じように、ほとんどの場合、 簡単な英語しか使われていません 。“you” “me” “sun” “live”という単語は、日本人誰もがわかる単語として使われているのだと思います。逆に、使っている英語が難し過ぎると、お店の名前は定着しないこともあります。

アイスクリーム屋さんのBaskin-Robbinsがそうです。「バスキン・ロビンズ」という名前は、なかなか日本人になじまず、「31(サーティーワン)」になりました。

日本国内では「31」で通じますが、海外で「31」と言っても、通じない 可能性 はバリ高いです。

「そんな意味だったの?」驚く店名の由来

また、UNIQLO とGUも面白いです。店名の由来について考えたことがありますか?

私は、結構前から「UNIQLO」は Unique (独自の)+Clothing(衣服)を合わせて略した名前だと知っていました。

これを知っている日本人はわりと 少ない と思います。日本では、あまりにも生活になじんでいて、意味とか由来があまり考えられていません。

適当に使われている英語と、意図的に使われている英語がありますが、普通の人はそれらを区別していません。それは、とても残念なことです。 後者はものすごくクリエイティブな使い方なのに、誰も気付かないのは言語学者の私にとって悲しいことです

例えば、ユニクロの親戚のGUです。パッと見ると、「ジーユー」と読むのか、「グー」と読むのか、わかりません。

ご存じの通り、読み方は「ジーユー」です。そして、 意味は「自由」です

「ええ!?知らんかった!!」と叫びたくなるでしょう?

好奇心さえ持てば、「不思議なエイゴ」はあちこちに

私も、GUの意味を知ったときは驚きました。試着室の前に立っていたときに、「GUは、あなたをジーユーにする」というようなスローガンのポスターを見つけました。

「え?面白いことが書いてあるな」と思いながら、店員さんにどういう意味か聞きました。すると、店員さんは「GUは、『自由』という意味です」と教えてくれました。

私はそれを聞いて、 1日中興奮していました

やっぱり、 何よりも好奇心が大事 ですね。でも多くの人は、何かを見て「あれ?なんでそういうふうに言うのかな」「どういう意味かな」「由来はなんやろう?」と思わず、好奇心を持たないまま、知らないことをスルーしてしまいます。

また、「ナフコ」というホームセンターがあります。

英語で書くと、NAFCOです。ある日、運転していると、隣のトラックのドアに“NAtional Furnishing COrporation”とあり、その下に「ナフコ」とカタカナで書いてありました。“Furnishing”は、「家具」という意味です。

これを見て、 「ええ?マジで!?ナフコってそういう意味なん?」とバリ興奮しました。 やっぱり、知識を得ることはすばらしいです。昨日知らなかったことを、今日は知っている!これ以上の喜びはありません。

好奇心は、語学の勉強だけじゃなくて、すべてのことにおいてあった方がいいと思います。 好奇心があると、間違いなく知識は増えます

語学の勉強 に関して は、好奇心は特に大事です。わからない文法、わからない単語を見たら、忘れないうちに意味を調べたらいいと思います。

そして、日本で英語を見掛けたら、その意味を調べたり、考えたりすることはバリ面白いよ。日本のTシャツの英語は昔、めっちゃおかしかったけど、最近はわりとよくなってきています。哲学的なことが書かれているものが多く、その意味を考えることはすごくいい勉強になります。

そして、お店の名前も結構面白いです。適当に付けていると思いがちですが、結構考えられているようです。 前々回の記事 で書いたように、マーケティングで英語を使うときには、日本人の消費者へのインパクトが考えられています。どういう英語、どういう言葉が消費者の記憶に残るか、というのは大事です。

日本の「不思議なエイゴ」を楽しもう!

この連載の名前は「不思議なエイゴ」でした。

和製英語、会社のスローガン、日本人が好きな“Let's”、曲名、お店の名前などを詳しく見てきました。

うわべだけを見ると、適当に英語が使われていると思いがちです。けれど、より深く見ていくと、わりと意図的に使われていることがわかります。

言葉は、生きています。そして言葉は、その言葉を使う人のためにあります。日本人は英語を取り入れて、自分のものにしました。それをずっとからかっていた私は、反省しました。

もちろん、海外でオーソドックスじゃない英語を使ったら問題になりますが、日本国内で使う英語は楽しく使ってもいいと思います。英語は、英語圏だけのものではありません。

この連載は今回で最終回ですが、私はこれからもずっと、日本の「不思議なエイゴ」を追究していきたいと思います。読者の皆さんも、好奇心を持ちながら、楽しく「不思議なエイゴ」の魅力を発見していただけたら、何よりもすばらしいことです!

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文:アン・クレシーニ
アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「 アンちゃんから見るニッポン 」が人気。 Facebookページ更新 中!

写真:リズ・クレシーニ

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