トランプ米大統領は7月1日、ほかの人と近い距離にいる時はマスクを着用すると述べました。新型コロナウイルスの感染が再び 拡大 する中で、今までの 方針 を転換させたようです。今回はトランプ米大統領の発言から、I’m all for ...という英語表現などを取り上げます。
今回のニュースな英語
I’m all for ...今回のニュースな英語は、アメリカのドナルド・トランプ大統領がマスクについて発言した、「I’m all for masks.」から、「大賛成」「完全に同意」などを意味する「I’m all for ...」を取り上げます。
背景
新型コロナウイルス感染症について、世界保健機関(WHO)や米疾病予防管理センター(CDC)は当初、 マスクは感染予防策として十分ではない との見解を発表していました。ところが 最近は、どちらもマスク着用を推奨 しています。
とはいえ、新型コロナウイルスの感染者数・死亡者数、ともに群を抜いて世界最悪になっているアメリカでは、マスクの装着率が低いのが現状です。世論調査会社のギャラップが4月にアメリカで行った調査によると、「この1週間のうち外出時にマスクをしたか」という問いに対し、「まったく着けなかった」と答えた成人の 割合 は31%となり、3人に1人近くいたことがわかりました。
こうした現状を受けて、最近ではニュースでも「頼むからマスクをしてくれ」と悲痛な訴えのような記事を掲載する媒体も少なくありません。
そして、 マスクを着用しない象徴的な人物といえるのが、ドナルド・トランプ大統領 なのです。同大統領はこれまで、マスクをしている姿をほとんど報道されていません。こうした 影響 もあってか、先ほどのギャラップを含む複数の調査で、共和党支持者でのマスク着用率が低いことがわかっています。
とはいえ、ここにきてトランプ大統領の態度が変わってきたのではないか、と注目を集めたのが、冒頭で紹介した「I’m all for masks.」という発言です。最近では、マイク・ペンス副大統領も黒いマスクをしている姿が見られています。
どんなふうに使われている?
トランプ大統領のこの発言は、アメリカのケーブル・ニュース・チャンネル「FOXビジネス」のインタビューでのものです。アメリカでは州 単位 でマスク着用が義務付けられているのが現状ですが、これを国全体として義務化するべきではないか、という議論がなされています。それを踏まえた上で、インタビュアーは、「マスクの着用を徹底すれば命を救うのではないか」として、こんなふうに同大統領に言葉を向けます。
If there is an economic benefit , sir, and there is a public health benefit , sir, why not go forward and say there should be mandatory masks all across this country?この「why not …?」は、質問というより提案というニュアンスです。 これに対し、トランプ大統領はこんなふうに答えました。もし経済的に利点があるのであれば、そして公衆衛生面でも利点があるのであれば、そこから進めて、全米でマスク着用を義務化するべきだ、とおっしゃったらいかがでしょうか?
Well , I don't know if you need mandatory , because you have many places in the country where people stay very long distance. You talk about social distancing.ここの「You」は相手(インタビュアー)を指しているわけではありません(インタビュー中、ここまでにソーシャル・ディスタンシングの話は出てきません)。ここでは、一般的な話をするときの主語として「You」を使っています。義務化が必要かはわからないな。国内には対人距離がかなりある場所もあるし。ソーシャル・ディスタンシング(感染予防のための対人距離)の話だけど。
トランプ大統領は次のように続けました。
But I'm all for masks. I think masks are good. I would wear, if I were in a group of people and I was close .I would wear ...以降は、仮定の話なので、if I were ...となっています。本来はIのbe動詞の過去形はwasのはずですが、 可能性 の低い仮定の場合、wereになります。とはいえ、この後トランプ氏は、「I have」と言い、実際に着用したし、その姿を見た人もいるよ、と続けています。でも、マスクには大賛成だ。マスクはよいと思う。もしたくさんの人の中にいて、距離が近ければ私も着用する。
まとめ
トランプ大統領が使った「I’m all for masks.」ですが、この 「I’m all for ...」という言い方は、「大賛成」と言いたいときに活用できるフレーズ です。例えば「...」の部分に 具体的に 言葉を入れてもいいですし(例:I'm all for banning single- use plastics.)、誰かの意見を受けて、「I’m all for that. / I’m all for it.」(それに大賛成)と言うこともできます。
文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
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