「海外在住の日本人あるある」?不思議なカタカナ語

不思議なエイゴ

日本で普通に使われている外来語や和製英語。でも、世界から見るとかなり不思議!?アメリカで生まれ、日本で暮らし、博多弁を操る言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが、最近日本で見つけた「不思議なエイゴ」をご紹介します。今回は、アメリカに長く住む日本人が使う面白いカタカナ語を取り上げます。

英語に堪能な日本人が作り出す、不思議な言葉って?

私は、外来語や和製英語が好き過ぎてたまりません。

外来語は取り入れられる段階で日本語化するけん、もはや海外の言葉ではなく日本語として捉えるべきだと思います。でも、気になることがあります。それは、どの単語が取り入れられるのか?そして誰がそれを決めるか?ということです。

たいていの場合、メディアや広告会社、政府などが今まで知られていない英単語を使い出し、その単語をどう使うかは国民が決めます。第1回の記事に書いたように、気に入られない単語は消えていきます。コロナ用語の「オーバーシュート」がその例です。

ej.alc.co.jp

 外来語や和製英語は、日本人同士のコミュニケーションツールやけん、多くの日本人がなじめず意味がわからなかったら、大事なコミュニケーションができなくなります。そのとき、カタカナ語は「コミュニケーションツール」から「妨げ」に変わります

もう一つ、ものすごく気になることがあります。それは、海外在住の英語がバリうまい日本人が使うカタカナ語です。この人たちは無意識に、まだ日本ではなじみがない単語や表現をカタカナ語にしたり、直訳したりする傾向があります。

は?どういうこと?

と思ったあなた。今回はこの面白い現象について話したいと思います。

「同じページにある」?友人が言いたかったのは・・・

数年前、ある研修会に参加するためにアメリカに行きました。参加者のほとんどは、長くアメリカに住んでいる日本人でした。

研修会の内容ももちろんよかったけど、それと同じくらい面白かったのは、参加者の日本語でした。日本に住んでいる日本人が話す日本語とあまりにも違い過ぎて、言語学者の私は、バリ興奮してしまいました。

とても仲のいい友達がいるのですが、彼女はアメリカ人と結婚してアメリカに移り、もう20年近くアメリカに住んでいます。彼女とはほとんど会えないので、会える時は本当に楽しく感じます。この研修会のときはホテルの同じ部屋に泊まったけん、たくさんおしゃべりができました。

私たちは、完全にバイリンガルな人しかできない、日本語と英語が混ざったような会話をしていました。深い会話をしていたときに、その友達が「ね、アンちゃん。あなたと私は同じページにある」と言いました。私は「マジで言ったの?」と大笑いしてしまいました。彼女は、なんで私が笑っているのかわからなかったみたいです。

英語には、We are on the same page. という慣用句があります。「私たちは同じ意見を持っている、同じ考えや思いがある」という意味です。友達は、そのWe are on the same page. をそのまま日本語に直訳したのです。バリ面白いなぁと思いました。

長くアメリカに滞在していると、何が本当にある日本語なのか、何が自分で英語から勝手に作った日本語なのか、区別できなくなるらしいです。私は、その勝手に作る日本語にすごく興味があります。海外の日本人コミュニティーの中で通じるので、ある意味では和製英語の逆バージョンみたいなものです。

和製英語は日本にいる日本人のためにあるもので、別にアメリカに住んでいる人がわからなくてもいいものです。同じように、アメリカ在住の日本人も、自分たちのために特別な日本語を作ったり、使ったりしてもいいんじゃない?

けれど、「そのコミュニティーから一歩踏み出すと、コミュニケーションを取れなくなる恐れがある」という問題はあります。

アメリカ在住の日本語人同士で「あなたと私は同じページにある」と言っても通じますが、英語がわからない日本人にそれを言っても通じないに決まっています。ですから、相手によって使い分けることが大事ですね。自分が使っている言葉を意識することも大切です。「自分が使っている言葉はもしかしたら日本で通じないかもしれない」という意識がなければ、なかなか使い分けることはできません。

日本人コミュニティーで使われる面白いカタカナ語

最近、アメリカにいる日本人が使うこんな面白い単語を耳にしました。

・学期 (semester)  「セメスター」「セメ」
・幼稚園 (preschool) (kindergarten)  「プリ」「キンダー」
・給食を買う (buy lunch)  「バイランチ」「バイラン」
・市民体育館 (recreation center) 「レクセン」
・ビニール袋 (plastic bag)  「プラスチックバッグ」
・実用的 (practical)  「プラクティカル 」
・意図的 (intentional)  「インテンショナル」
・練習 (practice) 「プラクティス」
・期待 (expectation)  「エクスペクテーション 」
・入国管理局 (immigration)  「イミグレーション」「イミグレ」
・登録する (register)  「レジスター」
・申し込む (apply)  「アプライする」

When I register for classes this semester, I think I’ll apply for a scholarship, too.

今(こん)セメの授業をレジスターするときに、奨学金もアプライしようかな。

また、アメリカのお店の呼び方も面白いです。

・Costco 「コスコ」
Trader Joe’s  「トレジョ」
Chick-fil-A  「チック」
・Burger King  「バーキン」

アメリカにいる日本人はこういう表現を当たり前のように使っていますが、もし日本に帰ってきたときに同じことを言ったら、伝わらないかもしれません。

日本にない制度や概念を表したいとき

My son is in kindergarten this year.

息子は今年キンダーに入る年だ。

My daughter’s kindergarten teacher is really nice.

娘のキンダーの先生はとっても優しいの。

kindergartenは「幼稚園」と訳されますが、日本の幼稚園とは制度も年齢も違います。アメリカのkindergartenは、年齢でいうと日本の幼稚園の年長頃の子どもが入るところです。

私が5年前仕事のためにアメリカに行ったとき、私の末っ子はちょうどkindergartenの年齢だったので、1年間お姉ちゃんたちと一緒に小学校に通っていました(kindergartenはelementary schoolに併設されています)。

教育の制度と期間が違うので、末っ子は日本に帰国した後、もう一度保育園に戻らないといけませんでした。 やけん、落第した感じがしました。日本の保育園や幼稚園と、アメリカのkindergartenは違うからさ。

こういった制度や概念の違いは、新しいカタカナ語が生まれてくる一つの理由だと思います。

幼稚園でもないし、保育園でもない。「まあ、いいか!kindergartenって言おう!」「でもkindergartenでは長過ぎるからキンダーにしよう」と思うのではないでしょうか。

「レクセン」も一緒です。アメリカのrecreation center, rec centerは、多目的な場所です。日本で言うと、いちばん近いのはおそらく「市民体育館」です。アメリカのrecreation centerには会員制のジムもあるし、コミュニティーイベントや習い事もたくさん催されます。ぴったり当てはまる日本語の単語がないので、「レクセン」になったかもしれません。

I’m taking a Zumba class at the rec center.

レクセンでズンバのクラスを取っている。

I’m working out at the rec center. 

レクセンで筋トレをしている。

日本人はどこにいても略すのが好きということは間違いないですね。

「アプライ」(申し込む)や「レジスター」(登録する)は、既に日本語にある言葉ですが、カタカナ語にして使われています。なぜでしょうか。

外国語の単語は、母国語の単語よりなじみやすいときがあります。例えば私は、日本語の「玄関」「携帯」「水筒」「駅」などが、英語より好きです。

もしかしたら、「駅」や「水筒」と同じように「アプライする」と「レジスターする」と言った方が、アメリカ在住の日本人にとってわかりやすいのかもしれません。何年か前に、日本人の友達がこんな変な文章で話していました。

「私のハスバンド(夫)は、アメリカのミリタリーに入っています。」

「私の夫は、アメリカの軍隊に入っています。」よりなじみがあったらしいです。彼女はずっとアメリカに住んでいて、この文章はアメリカの日本人コミュニティーで普通に通じます。ただ日本で言っても、同じようには通じないでしょう。

「不思議なエイゴ」でコミュニケーションを円滑に!

和製英語と同じように、こういった面白いカタカナ語は、アメリカに住んでいる日本人コミュニティーのためにあるものです。「なぜこの英語をカタカナにして使うの?」と聞かれれば、「コミュニケーションを取りやすくなるために!」と答えるでしょう。

だって、コミュニケーションの妨げになるようなカタカナ語は、「オーバーシュート」のようにすぐに消えてしまいますから。和製英語、外来語、そして海外在住の日本人が使う面白いカタカナ語には、同じ目的があります。それは、「コミュニケーションを取るため」です。

やけん、「インテンショナル」に使うなら、相当「プラクティカル」なものになると思うよ!

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アン・クレシーニ

文:アン・クレシーニ
アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページ更新中!

写真:リズ・クレシーニ