常に変化し続ける新生・The Weeknd【EJ’s Playlist】

「今聴いてほしいアーティスト」と関連する楽曲を音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと合わせて渡辺志保さんが解説します。

今月の1曲

ザ・ウィークエンドの『After Hours』を紹介します。

After Hours [Clean]
  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: MP3 ダウンロード
ユニバーサル ミュージック2012年にメジャーデビュー、2014年にアリアナ・グランデのシングル「Love Me Harder」に参加して一躍有名に。2018年には待望の初来日公演を果たし、オープニングアクトとして米津玄師が登場したことも大きな話題となった。

SNS上で爆発的な盛り上がりを見せる「Blinding Lights」

2011年、ザ・ウィークエンドがデビュー・ミックステープ『House Of Balloons』を発表し、R&Bのシーンには大きな変化が訪れた。彼が歌うのは甘いラブソングだけでなく、どこか背徳感のあるダークな描写。メロディーは美しいが、ビートは暗くて重く、時に暗闇の中に引きずり込まれるような感覚を覚える。彼の美しく伸びやかな高音ボイスは、 同時に 酩酊感をあおるような魅力も持っている。さまざまなコラボも経て、アルバムを発表するたびにいつも新たなチャレンジに挑んできたのが彼だ。今やその人気は世界クラス。日本でもアリーナ級の来日公演を成功させたことも記憶に新しい。

そんなザ・ウィークエンドの最新アルバム『After Hours』が話題だ。リードシングルとして発表された「Heartless」は“All this money and this pain got me heartless”(この金と痛みが俺を非情にした)と自分の冷酷さを悪びれずに歌っており、前作から数えて約4年間の不在を埋めるにふさわしい楽曲であった。アルバムの中でザ・ウィークエンドは豊かなメロディーに喜怒哀楽の感情を織り交ぜながら、堂々と歌ってみせる。当然のごとく全米1位を獲得し、まったく衰えぬ人気の高さを証明した。

そして、SNS上でも爆発的に盛り上がっている彼の楽曲が「Blinding Lights」だ。80年代のダンス・ミュージックを思わせるような、シンセの音色が鳴り響くアップテンポのナンバー。この曲にエアロビ風のダンスを組み合わせた「エアロビチャレンジ」が世界中でヒットし、ここ日本でもきゃりーぱみゅぱみゅがTwitter上に投稿して話題になった。常に変化を恐れずにアーティストとしてその世界を拡張してきたザ・ウィークエンド。そのインパクトは、もはや本人も測り知れないところまで拡散されているの かもしれない

意欲的な表現にチャレンジする男性ボーカル作品5選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。

  1. A Muse In Her Feelings by dvsn
  2. Chixtape 5 by Tory Lanez
  3. 3.15.20 by Donald Glover
  4. PARTYMOBILE by PARTYNEXTDOOR
  5. Painted by Lucky Daye
文:渡辺志保(わたなべ・しほ)

音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。

編集:ENGLISH JOURNAL編集部

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

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