「Black Lives Matter」(黒人の命は重要だ)運動がよくわかる、systematicとsystemicの違いって?【ニュースな英語】

ニュースな英語

2020年5月25日、ミネソタ州のミネアポリスにて発生した、ジョージ・フロイドさん死亡事件に端を発して、「Black Lives Matter」運動が広がっています。今回は知っておくとさらに理解が深まる「制度的人種差別」(systemic racism)などを取り上げます。

今回のニュースな英語

systemic racism

アメリカに端を発した、「Black Lives Matter」(黒人の命は重要だ)運動。そこには、単なる人種差別ではなく、「制度的人種差別」や「構造的人種差別」と呼ばれるものがあると指摘する声が多く見られます。この「制度的人種差別」とか「構造的人種差別」という言葉、いったいどういう意味なのでしょうか?

systematicではなくsystemic

ジョージ・フロイドさんが偽造20ドル札を使用した疑いで身柄を拘束され、その後死亡した事件とそれに続く「Black Lives Matter」運動を伝える一連の報道には、「systemic racism」(制度的人種差別)や「structural racism」(構造的人種差別)という言葉が出てきます。これらのフレーズは、日本語で見てもなかなかぴんとこない言葉かもしれません。

ウェブメディア「VOX」の5年前の記事は、systemic racismをこんなふうに説明しています。

The phrase “systemic racism” is used to talk about all of the policies and practices entrenched in established institutions that harm certain racial groups and help others.

「systemic racism」というフレーズは、確立された組織の中に染み付いており、あらゆる方針や習慣で、特定の人種グループに害を与え、それ以外のグループを支援するものを話すときに使われる。

記事はさらに、systemicについてはこう書いています。

“Systemic” distinguishes what’s happening here from individual racism or overt discrimination, and refers to the way this operates in major parts of US society: the economy, politics, education, and more.

「systemic」という単語は、ここで行われている個人的な人種差別や公然とした差別とは異なり、経済、政策、教育など、アメリカ社会の大部分においてなされている差別のあり方を指す。

www.vox.com

注意すべきなのは、systematicではなくsystemicという点です。

systemic racismについては、カナダのグローバル・テレビジョン・ネットワークの番組「ザ・ウェスト・ブロック」に出演したグレッグ・ファーガス下院議員が、systematic racismとは明確に異なり、「無意識なバイアスによって起こるもの」だと説明しています。

globalnews.ca

人種差別の文脈ではありませんが、systemicとsystematicという単語の違いについては、アメリカのウェブメディア「メンタルフロス」の記事がわかりやすいかもしれません。

In short, systematic is used to describe the way a process is done, while systemic is used to describe something inside a system.

ひと言で言うと、systematicはあるプロセスのやり方を表すもので、systemicはシステム内にあるものを描写するために使われます。

www.mentalfloss.com

またCNNは、アメリカのウィリアム・バー司法長官(司法省の長で、日本の法務大臣に相当する閣僚)がCBSとのインタビューでした発言として、このような言葉を伝えています。その発言内容の善しあしは別として、別角度からのsystemic racismの説明と言えるでしょう。

I think there’s racism in the United States still but I don’t think that the law enforcement system is systemically racist.

アメリカには今も人種差別があるとは思う。しかし警察当局の制度が、組織として人種差別主義であるとは私は思わない。

edition.cnn.com

the law enforcementとは、警察組織や警察当局のことです。つまりバー氏は、国内に人種差別はあるけれど、警察当局が組織的に差別しているとは思わない、と言っています。

どんなふうに使われている?

抗議活動

アメリカの『タイム』誌は、前述のバー司法長官の発言のように、トランプ政権高官の多くが制度的人種差別はないと発言していることなどを受け、「structural racism」(構造的人種差別)という言葉を使って、アメリカの現状をこんなふうに伝えています。

On one side, a growing majority of the country is increasingly ready to repudiate its history of structural racism. On the other, many of those in power, especially at the White House, are eager to deny it.

一方では、国の大多数の人たちは、アメリカにおける構造的人種差別の歴史を拒絶する心づもりにますますなってきている。他方では、権力の座にいる人たち、とりわけホワイトハウスにいる人たちの多くは、それを必死に否定したがっている。

time.com

『タイム』誌の記事のテーマはsystemic racismですが、この部分は、アメリカ全体における構造的な人種差別の話をしているため、「structural racism」と表現していると思われます。

まとめ

ジョージ・フロイドさん死亡事件に端を発した「Black Lives Matter」運動ですが、アメリカのアフリカ系アメリカ人に対する差別の歴史は長く、これまで何度も衝突や抗議の歴史が繰り返されてきました。

今回の抗議活動に関しては、単に有色人種(people of color)への差別の問題ではなく、反黒人主義(antiblackness)の問題であると指摘する記事も多くあります。ぜひ、さまざまな立場の人が書いた記事を読んで、理解を深めてくださいね。

なお、アメリカにおける構造的な人種差別とは何か、ソーシャルメディアで話題になっていたこちらのビデオも、理解を深めるのにおすすめです。

 

Satomi Matsumaru

文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
Blog:https://sat-mat.blogspot.jp/
Twitter:https://twitter.com/sugarbeat_jp

記事中画像:PhotoACからの画像