なぜそうなった?残念な英語看板の謎を英文法で解く!【ブックレビュー】

ここ数年、街中で英語表記の看板や掲示を目にすることが増えましたね。国際化はよいことですが、中には「この英語、なんか変・・・」と思ってしまうものも。書籍『「おかしな英語」で学ぶ生きた英文法』を読めば、そのモヤモヤを解消できる上に、英文法にも強くなれちゃいます!

「おかしな英語」で学ぶ生きた英文法
 

「これどうなの?」という残念な英語表示がいっぱい

海外旅行に行ったときなど、日本語の看板や広告を見て、「言いたいことはわかるんだけど、こういう言い方はしないよなあ・・・」と思ったことはありませんか?

海外から日本に来る外国人も、同じような経験をしているかもしれません。また、東京五輪に向けて都内では英語の看板や表示が増えましたが、なかなか不思議な英語表現があると、一時期SNSでも話題になりました。

本書を読めば、そんな英語看板のどこがおかしいのか、そしてどう直せばいいのかがわかります。早速、例を見てみましょう!

「歩きたばこ・ポイ捨て禁止」は and がポイント

街中でよく見掛ける、「路上喫煙とたばこのポイ捨て禁止」を呼び掛けるメッセージ。道路に看板が立っていたり、路上にプリントされていたりしますね。

本書では、著者が世田谷区でみつけたという「歩きたばこ・ポイ捨て禁止」の掲示が紹介されています。その掲示の英語表記がこちら。一見、問題ないような気もしますが・・・。

(×) No smoking and littering while walking
この英文は、文法的には間違っていません。しかし、 これだと、路上喫煙またはポイ捨て、どちらか一方ならOKという意味になってしまいます 。これはおそらく、発信者である世田谷区の意図するところではないはず・・・。

なぜこうなるのか、本書では次のように解説しています。

and で列挙されたものと否定語(ここでは No )を一緒に使うと、列挙されたものが全部そろった場合にはダメという意味になる(後略)
わかりやすい例を見てみましょう。飲酒運転禁止を表す決まり文句に、Don’t drink and drive . というのがありますね。これも、drink と drive がそろったらいけないのであって、どちらか一方なら問題はありません。

冒頭に挙げた No smoking and littering while walking. の場合、「喫煙とポイ捨てがそろうとNG」つまり「喫煙だけ、またはポイ捨てだけならOK」という意味になってしまいます 。が、もちろんそんなはずはありませんね。

ここは、and ではなく or を使い、次のようにするのが正解です。

(〇) No smoking or littering while walking.

歩きたばこもポイ捨ても禁止。

本書では適切な英語表現の例として、イギリスの街中でよく見掛ける看板が紹介されています。英文はこんな内容です。
(〇) No smoking, eating or drinking.

喫煙・飲食禁止。

「喫煙、食べること、飲むこと」すべてがそろったときにNGなのではなくて、「喫煙、食べること、飲むこと」それぞれがNGというわけです。

海外へ行く機会があったら、ぜひ注意して見てみたいですね。

bring と take の違い">説明できる? bringtake の違い

次にチェックするのは、こちらの2つです。

まずは、羽田空港の出国用セキュリティーの近くに貼られていたというポスター。「象牙・象牙製品は禁輸です」という警告の英語表記はこうなっていました。

(×)NEVER BRING BACK IVORY
次は、浅草の飲食店街に貼られていたポスターで、「ゴミはお持ち帰り下さい」という日本語と対になる英語表記です。
(×)Please, bring trash home
残念ながら、間違いのパターンは同じ。ポイントとなるのは動詞の bring です。

bring の基本的な意味は「~を持ってくる」。何かを「向こうからこちらへ持ってくる」という意味になります。

そのため、田空港の例だとこんなニュアンスになってしまいます。

(×)Never bring back ivory .

決して象牙を持って帰ってこないように。

日本を出国するすべての人が、また日本に戻ってくるわけではないので、これはおかしいですね。おそらく「日本国内の象牙製品を海外に持ち出してはいけませんよ」という意図でしょうから、次のようになります。
(〇)Never take ivory out of Japan.

決して日本外に象牙を持ち出さないように。

浅草にあったポスターも同じで、この文脈で bring を使うと、「ごみを家に持ってきなさい」という意味になります。今いる場所が家で、遠足に行く子どもに向かってお母さんが言うならこれでもいいのですが、街中のポスターでは不自然ですね。

これも take を使って、次のように表現します。

(〇) Take your trash home.

ごみは家に持って帰ってください。

著者がイギリスで見つけたという同類の表示では、こうなっています。当たり前ですが、さすがイギリスの看板。ちゃんと take が使われています。
PLEASE TAKE YOUR GARBAGR HOME WITH YOU
Take Your Trash Home
bring は「~を持ってくる」、 take は「~を持っていく」。 どちらも中学レベルの単語ですが、いざ使おうとすると迷うこともあるかもしれません。しっかり覚えておきましょう!

まとめ

本書では、こうした残念な英語看板を30例紹介しています。さらに、計30題の練習問題も掲載されているので、読んだ内容を理解できたかチェックすることも可能です。

こうしてみると、街中にある英語の看板や表示は最高の学習素材。外出しづらい時期が続きますが、買い物や散歩のときには、英語看板を探して読んでみると楽しいかもしれません。

「おかしな英語」で学ぶ生きた英文法
 
 

文:尾野七青子
都内某所で働く初老のOL兼ライター。行っちゃダメだと思うと無性に旅行に行きたいです。

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