「通常利用」をnormal useと訳すと通じない?!日本語脳から脱して、英語話者に明確に伝わる英文を作成するコツ4つ

実態リポート

英会話は、簡単なフレーズでも相手と仲良くなれる!日本にある法人向けの高級アパートメントで外国人滞在客のコンシェルジュをしているKayo(重盛佳世)さんが、楽しいエピソードとイラストと共に、幅広く使える英語フレーズを紹介します。国内の企業で活躍後、40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、英会話本を出版したKayoさんのとっておきのコツがいっぱい。第6回(最終回)は「誰にでも明確に伝わる英文を作成する」です。

共有スペースのルールを英語で伝える

第2回で、外国人滞在者にごみの分別に協力してもらうための戦略を紹介しました。

▼第2回はこちら↓

ej.alc.co.jp

この最終回では、施設内の人が自由に利用できる共有スペースを正しく使ってもらえるようになるまでのエピソードを紹介します。

外国人滞在者の利用の仕方に苦情を受ける

アパートメントが入っているビルには、共有部の一つとして、他の階にあるオフィスの人なども含めた誰もが自由に使える場所があります。ラウンジやダイニング&キッチン、オープンテラスや、静かに落ち着いて過ごせるアルコーブ的なスペースなどです。

このスペースは、普段は自由に利用できるのですが、月に何度か貸し切りのイベントが行われます。

私たちコンシェルジュがお世話をしている外国人滞在者も貸し切ることができ、賃貸の運営会社では、このスペースを自由に使えたり、貸し切ったりできることも物件の「売り」にしています。

しかし、契約前や契約時に、使用に当たっての細かい決まり事までは詳しく伝えていません。滞在を始めてから、興味のある人はコンシェルジュから説明を受けることになっているのです。

外国人滞在者は、ビジネス目的で来日しているため、「滞在先の施設の共有スペースなんて関係ない」という人もいます。

しかし最近では、日本に長期滞在して生活に慣れてきた人や、もともとパーティー好きな人が、日本でできた友人や同僚を招待してホームパーティーをしたり、仲良くなった滞在者同士が、自国の料理を振る舞う食事会を開いたりするようになってきました。

そういう人たちに、共有スペースの使用や貸し切りについて、コンシェルジュからひと通りの説明はします。でも、いざ利用するとなると、思いも寄らないことが起こり、(利用時に私たちが常時見張っていることもできず・・・)他の利用者に迷惑をかけてしまっていました。

例えば、料理の片付けがきちんとされていなかったり、キッチンが汚しっ放しだったり、移動したソファーやテーブルなどの家具が元の位置に戻っていなかったり、利用時間を守らなかったり・・・。

中には、お酒が入って陽気になり、テーブルの上に乗って写真撮影をしたり、踊ったりするケースもありました。そのときには、監視を担っている防災センターから連絡が入り、私たちが注意を受けました。当然、それらを目にした他の利用者からもクレームが入りました。

パネルに記載する規則の英訳を担当

共有スペースだからこそルールを守って、「使ったものは元に戻す」「汚したらきれいにする」「時間厳守」「来たときよりも美しく(ボーイスカウトの規則より)」ということを心掛けようとするのが、「言わなくても分かる」日本の感覚とされています。しかし、それを外国人にも求めるのは無理があります。

そんな事情で、ビルの管理会社の人たちと改善策を練りました。その結果、あらためてルールを簡素化して、誰でも分かりやすいように、共有スペースの入り口に「利用のご案内」という、日英併記のパネルを設置することになりました。

そして、パネルの作成メンバーとして私が選ばれたのです。

私の役割は、簡素化された決まり事を分かりやすくパネルの中に落とし込む「デザイン作業」と「文章の英訳」でした。

デザイン作業は普段から仕事として行っているので問題なかったのですが、ちょっと心配だったのが英訳でした。

私はどちらかというと「しゃべり」が専門で、コンシェルジュの仕事でも、滞在者との口頭のコミュニケーションがメイン業務です。通常、防災訓練や停電などの重要事項を知らせるチラシや掲示板の英訳は、入居の契約や部屋のマニュアルブックを作成する、本社所属の英語スペシャリストが担当していました。

もちろん、コンシェルジュから滞在者へのちょっとした連絡で、私も英文レターを作成することはありましたが、重要な情報については専門性の高い高度な英語力の使い手が行っていました。

それでも、私は常日頃、海外の友人たちと手紙やメールでいっぱいコンタクトしているので、「これくらいの英訳は大丈夫だろう!」と軽く考えていました。

それに、この告知をすることにより、外国人利用者の問題がなくなれば、自分たちの仕事も楽になるだろうし、これからの滞在者のためにもなると、前向きに引き受けてしまったのです。

しかし、それが甘かった

英訳で行き詰まり、この経験を通して、今まで気付かなかった「日本では当たり前の感覚を外国の人に伝えるための英訳の難しさ」を知ったのです・・・。

英訳した文章をネイティブに理解してもらえなかった!

パネルのレイアウトは、分かりやすいように図やイラストを入れて作りました。

  • 通常の使用方法:施設内の人が自由に使えるもの、利用時間など
  • 貸し切り予約方法:申請の仕方、利用のルール
  • 訪れたゲスト(外部の人)に対しての注意事項

などをまとめ、それぞれの日本語の下に英訳を入れることにしました。

英訳は、日本語の内容に沿って、英語の文法などに気を付けながら行いました。

そして念のためにあくまでも最終チェックとして、英訳したものを、長期滞在していて施設にも詳しいアメリカ人女性に見てもらうことにしました。もちろん、これを依頼したときには、自分の英訳でネイティブスピーカーに理解してもらえると思っていました・・・。

彼女は、「共有スペース利用のご案内」の私による英訳を真剣に見てくれました。そして、ひと通り見終わると、ちょっと申し訳なさそうな表情で、私にこう言ったのです。

I’m sorry, Kayo. I don’t understand these. Can you explain each one to me?

 

Kayo、申し訳ないけど、よく分からないの。一つ一つ、私に説明してくれる?

私はそのとき、多少なりとも・・・、いや正直、かなりのショックを受けました。

なぜなら、イギリス滞在中も現地の人たちと十分にコミュニケーションは取れていたし、私のメールの内容は相手にきちんと伝わっていた(と思う)ので、自分の英語はそんなに悪くないと思っていたのです。

しかし、彼女にパネルの内容を一つ一つ説明し、それに応じた正しい英語に直してもらっているうちに、いろいろなことがクリアになってきました。

私の英訳に関する最大の問題は、日本語をただそのまま英語に直しただけの「日本語英語」で、外国の人には理解しにくい日本流の言い方をしていたということでした。

実態リポート

どの国の人にも明確に伝わる英文作成のコツ4つ

ここからは、パネル「共有スペース利用のご案内」で私が間違えた例を基に、英訳について説明します。

カタカナ英語に引きずられないよう注意

まず、パネルの「タイトル」に直しが入りました。私の最初の英訳はこうでした。

  • 【間違い英訳例】共有スペース利用のご案内/Information for using the common space

私たちは、共有で使えるラウンジやキッチンスペースを当たり前のように日本語で「共有スペース=コモンスペース」と呼んでいました。しかし、チェックしてくれたアメリカ人滞在者にこう言われました。

The meaning of “common space” includes the corridors and lobby. So, if you want to explain how to use it here, you should usecommon space rooms [areas].” In this display, we do not understand it.

 

common space(コモンスペース、共有の空間)の意味には、廊下やロビーとかも含まれるの。だから、ここ(ラウンジ、キッチン、テラスなど)の使い方についての説明なら、common space rooms [areas]にしなければ。この書き方だと、私たち(外国人)には分からないわ。

ということで、こう修正しました。

  • 【正しい英訳例】共有スペース利用のご案内/Information for using the common space rooms

確かにその通り!

そもそもspaceの意味は「スペース、空間」。でも日本語の「スペース」が英語のroomの意味も含んでしまっているので、 common spaceで通じる気になっていましたが、英訳の場合はroomsが必要でした。

まんまと、和製英語といいますか、日本語にだまされていたというわけです。反省。

「通常」をnormalと訳したら不明瞭なこともある

「通常利用」という私の最初の英訳はこうでした。

  • 【間違い英訳例】通常利用/For normal use

「通常」はnormalやregular、ordinaryだから、私は「通常利用」をFor normal useと記載しました。しかし、彼女からはこんなツッコミが入りました。

彼女:What is normal use?

私:It’s not special, it’s something you use every day, normal using ...

彼女:All right, then it’s daily use. This is not “For normal use” but “For daily use.”

 

彼女:normal useって何?

私:特別ではなくて、毎日使う、通常の利用のことなんだけど・・・。

彼女:了解、だったら、日々の使用ってことね。ここはFor normal useではなくFor daily useよ。

そこで、こう修正しました。

  • 【正しい英訳例】通常利用/For daily use

そうですよね、これなら意味が頭にスッと入ってきます。

例えば、daily useを「日常的な使用」→「通常の利用」と日本語で理解するように、英語から日本語への変換はすんなりとできるのですが、日本語を英語ネイティブに分かるように英訳するのはなかなかハードルが高いです!

万人に誤解がないよう丁寧かつ明確に表現

「日本語ならこれで通じるだろうけど、いろいろな国・地域から来た、それぞれ感覚が違う人たちにルールを守ってもらいたいなら、とにかく丁寧に分かりやすく記載する方がいい」と、彼女からアドバイスを受けました。

例えば、「貸し切りをする際の利用時間と利用回数」については、このように修正しました。

■利用時間:10:00-21:00 *1回につき3時間まで利用可能。

■利用回数:貸し切りは全体で1カ月4回まで。

  • 【間違い英訳例】Reserve up to 4 times a month.
  • 【正しい英訳例】There can be a maximum of four reservations per month.

日本語でありがちな余計なニュアンスはカット

日本語の「お互いに譲り合って」「他の利用者への配慮」などの曖昧な言葉は、英訳では必要ないと言われました。

なぜなら、この日本感覚を分かってもらおうと書けば書くほど、余計に分かりにくい英文になってしまったからです。

今後も来日外国人と接しながら英語について発見したい

パネルを設置後、共有スペースを利用する際の問題は減り、私たちの仕事もスムーズになりました。

また、誰でも目にするところにパネルを置いたことにより、共有スペースに興味を持った外国人たちがフロントに尋ねてくるようにもなりました。

このように良い効果があり、設置したかいがありました!

今回の作業を通して、私は告知などでの英訳の難しさを学びました。

パネルに記載した日本感覚の決まり事を、アメリカ人に説明して理解してもらうのにも苦労して、日本特有の感覚を外国の人に伝える難しさをあらためて痛感しました。

私にとって英語の壁はまだまだ高く、学ぶべきこともたくさんあります。これからも、来日する方々のお世話をしながら、英語の発見を楽しんでいきたいと思います。

Kayoさんの本

▼「道案内」や「外国人とのちょっとしたコミュニケーション」ができるようになる一冊。中学レベルの短いフレーズでOK!「日常のあるあるシーン」から英語を楽しく学べます。オリンピック・パラリンピックを前に、ぜひ!

英語がダメでも楽に話せる! アラフォーKayoのおもてなし英会話

英語がダメでも楽に話せる! アラフォーKayoのおもてなし英会話

  • 作者:重盛佳世
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2019/07/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

▼英語が超苦手だった著者が40歳を前にイギリスに語学留学を試み、学校で必死に書き留めたノートをまとめ上げたもの。「英語ができなかった人」が、できるようになった「秘密の勉強法」が載っています。

全くダメな英語が1年で話せた!  アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』

全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』

  • 作者:重盛 佳世
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2013/01/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

▼上記の赤いチェック柄の本をさらに「初心者向け」に作り上げた本です。時計の読み方、あいさつ、天気、食、乗り物など. 日常生活で役立つ「基本中の基本の英語」が学べます。

全くダメな英語が1年で話せた!  アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』 とことん初級編

全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』 とことん初級編

  • 作者:重盛 佳世
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2014/04/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

▼ありとあらゆる「食」のシーンから楽しく英語を学んじゃおう!という一冊。食を通して「会話力」や「コミュニケーション力」を付けられます。「海外旅行」にも役立つと評判!

食いしん坊Kayoのおいしい英語 “食"で学ぶと、英会話は楽しい!

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  • 作者:重盛 佳世
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

重盛佳世

文・2点目イラスト:Kayo(重盛佳世/しげもり かよ)

40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、現地での生活に引かれて、その後も滞在を繰り返す。その間、語学学校での学習を自分流にまとめた英会話本「アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』」シリーズを出しながら、同時に現地のガイドブック作りにも励み、電子書籍で出版。現在は執筆の傍ら、日本で外国人向けアパートメントのコンシェルジュとしても活躍中。

https://kayoshigemori.jimdofree.com/

編集:ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部