偶然の一致ではない!?ギリシャと日本のよく似た神話

偶然の一致ではない!?ギリシャと日本のよく似た神話

アルクの英語情報誌『ENGLISH JOURNAL』(イングリッシュジャーナル)の動画連動企画「EJ Lecture」。「神話」をテーマとしたレクチャーの最終回となる3月号は、神話学者の勝又泰洋さんに「ギリシャと日本——異なる神話の類似点」について解説してもらいました。動画を見ながら、英語で「神話」について学んでいきましょう!

勝又泰洋

勝又泰洋

1987 年、神奈川県生まれ。京都大学ほか非常勤講師、各種カルチャーセンター講師。専門は、ギリシャ・ローマ神話、比較神話学。大学生および一般の人々に神話の魅力を伝えることに尽力。

遠く離れたギリシャと日本に伝わる「よく似た」神話

ギリシャと日本の距離(現在)は約9400キロメートル、時差は7時間——日本に住む私たちにとって、ギリシャは距離的にも時間的にも遠い国といえます。そんな2つの国に古くから伝わる神話について、比べてみるととてもよく似たお話があることをご存じでしょうか?

前回の2月号レクチャーでは、ギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケ」と日本神話「イザナキとイザナミ」の物語について、類似点と相違点を紹介しました。ここで話の流れを簡単におさらいしておきましょう。

ギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケ」

①夫のオルフェウスは冥界を訪れ、毒ヘビにかまれて亡くなった妻エウリュディケを連れ戻そうとする

②オルフェウスは、妻を返してくれるよう冥界の王と女王に懇願し、王と女王は、オルフェウスがエウリュディケを地上に連れていく間、後ろを振り返るなと命じる

③オルフェウスはその命令に従うことができず、愛する妻を永遠に失ってしまう

 

日本神話「イザナキとイザナミ」

①夫のイザナキは黄泉国を訪れ、出産の際に亡くなった妻イザナミを取り戻そうとする


②イザナキは妻と出会えたものの、イザナミは黄泉国の特別な食べ物を口にしていたので、地上に戻ることができなかった。この問題を解決するために、彼女はイザナキにしばらく時間がほしいと伝え、その間、自分の姿を決して見ないように警告する

③イザナキはその約束を守ることができず、その結果、おぞましいウジにまみれた妻の姿を目にすることになり、最終的に2人は離婚してしまう

改めて振り返ると、2つの神話は「登場人物」「話の流れ」などがとてもよく似ていることがわかります。ここまで似ていると、ただの偶然の一致とは言えそうにありません。では、なぜ遠く離れたギリシャと日本において、このように似ている神話が存在するのでしょうか?その答えについて、動画で詳しく見てみましょう。

似ている神話が別々の場所に存在する理由:(動画05:30~05:47)

And roughy speaking, there, there are two theories to answer this question and one is parallel development theory and the other is transmission theory.

ざっくり言うと、この疑問に対する答えとして2つの説があります。一つは並行して発展したという説と、もう一方は伝播したという説です。

並行して発展したという説は、スイスの心理学者、カール・グスタフ・ユングが提示したものです。神話は私たちがアイデアを生み出す基本的な精神の型である「元型」から生み出されており、このことが、異なる神話にも似たような登場人物と似たような筋書が登場する理由になっていると論じています。単純に言うと、人間はたとえ異なる文化の中で生きていても、基本的には同じアイデアを生み出す、ということです。

伝播したという説は、ドイツの人類学者、アドルフ・エレガルト・イェンゼンが主唱者です。ユングの、並行して発展したという説を説得力がないとして否定し、代わりに、文化的なものは、ある場所から別の場所へと歴史のプロセスにおいて伝えられると主張しました。例えば、ギリシャの物語が歴史のいずれかの時点で日本に伝えられ、日本の人々が自分たちの好みに合うようにギリシャの物語を脚色したと考えられることになります。

どちらの説がよりふさわしい?

「①並行して発展したという説」「②伝播したという説」の2つを紹介しましたが、実はどちらの方がよりふさわしいか、その明確な答えは出ていません。

しかし、確実に言えるのは、古代ギリシャ人と奈良時代の日本人が、異なる文化の下で生きていたにもかかわらず、「人間」について、あるいはより正確に言うと「夫婦」について、似たような感覚を抱いていたということです。

神話の中には、例えば夫と妻の関係について、普遍的な真実のようなものが存在し、それによって「夫婦にまつわる神話」が現代まで伝わっているのだと考えられます。現代に生きる私たちも、神話の登場人物に共感したり、その行動から学ぶことは多いはずです。皆さんもぜひ、さまざまな世界の神話に触れてみてください。

ENGLISH JOURNAL3月号で音声と内容をチェック!

1~3月号レクチャー動画には勝又さんご本人が登場されていますが、3月号誌面に収録された音声はPeter von Gommさんによる吹き替えとなっています。レクチャー動画とともに誌面の音声、スクリプトも併せてご覧ください。

動画での学習は、視覚情報を伴い、英語でどんな内容を話しているかをより理解しやすくなるため、初級者の方にもおすすめです。レクチャー動画を実際に見ながら、「神話」についてぜひ英語で学んでみてください!

ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2020年3月号

ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2020年3月号

  •  
  • 出版社/メーカー: アルク
  • 発売日: 2020/02/06
  • メディア: 雑誌
 

次号4月号からのレクチャーは・・・「身近な医学」について

4月号から始まる3号連続レクチャーのテーマは、「身近な医学」です。春になると多くの人が悩まされる「花粉症」について、大学・病院で「医学英語」の授業を教える医師のYing Fooさんが解説します。花粉症の人もそうでない人も、どうぞお楽しみに!

英語でのレクチャーが充実! EJオリジナル動画はこちら

ENGLISH JOURNAL の連載「EJ Lecture」ではこれまで、ロッシェル・カップさん(経営コンサルタント)による「英語での働き方」、ギャヴィン・ブレアさん(ジャーナリスト)による「Brexit問題」、ソンヤ・デールさんによる「ジェンダー/LGBT」、勝又泰洋さんによる「神話」についてレクチャーしていただきました。ビジネスパーソン必見の動画となっていますので、ぜひこちらも併せてお楽しみください!

写真・動画:田村 充
構成・文:須藤瑠美(ENGLISH JOURNAL編集部)