「世界一周をしながら通訳ボランティアを経験し、人生の方向が大きく変わりました」 松本にいな さん

地球を一周する国際交流の船旅を行う「ピースボート」。そこでは、一般募集によって選ばれた通訳ボランティアが大きな役割を果たしています。ピースボートの船旅に通訳ボランティアとして参加した松本にいなさんに、約100日間の船旅の魅力と、ボランティアの仕事のやりがいについて聞きました。

通訳経験は不要!

地球一周約100日間の船旅を提供している国際NGO「ピースボート」。現在同事務局で参加者やスタッフ、ゲストのコーディネートを手がける松本にいなさんは、2017年に一般の通訳ボランティアとして、ピースボートに乗船しました。「私は日本の高校からアメリカの大学に進学し、ヨーロッパのブルガリアで英語教師の仕事をしていました。人生の次のステップを目指すきっかけがほしいと思っていたところに出会ったのが、ピースボートの通訳ボランティアでした」。

大事なのはコミュニケーションへの意欲

ピースボートでは、通訳ボランティアのスタッフを「コミュニケーション・コーディネーター」と呼びます。「英語またはスペイン語・中国語・韓国語いずれかでのビジネスレベル以上の語学力が必要ですが、通訳の経験はなくても大丈夫です。それよりも、国際交流の仕事に関心があり、多様なバックグラウンドを持つチームの中でコミュニケーション力を磨きたいという意欲が大切。私自身、通訳の経験はまったくありませんでしたが、通訳スキルに関するトレーニングや船内活動のオリエンテーションを経て、船旅に参加することができました」。

外国人専門家の通訳を担当し、自分に自信がついた

船旅には、中国、韓国、台湾、タイなどから参加する外国人の方もいて、日本人の参加者やスタッフとのやりとりを通訳する存在が必要になります。また、船内では国内外からやってくる専門家がゲストとして講座を開催するので、その資料を翻訳したり講座を通訳したりするのも、通訳ボランティアの仕事。寄港地では現地NGOとの交流や観光案内のサポートもあり、幅広い範囲の業務が含まれています。

「私が通訳ボランティアとして乗船したときは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の前事務局長クリスティーナ・フィゲレスさんをゲストに招きました。私が担当者として通訳を務めることになり、とても緊張したのを覚えています。でも、そういう大役をまかせてもらえることがとてもうれしくて、無事に終えたときには、自分に自信が持てるようになりました」。

1回の船旅で約25カ所へ寄港、ピースボートならではの体験も。

ピースボートの約100日間の船旅には、25前後の寄港地が含まれます。寄港地での通訳ボランティアの主な仕事は、美しい街並みや歴史的建造物などを巡りながら、現地ガイドの通訳をしたり、スタッフの補佐を務めたりすること。船上であらかじめ現地の文化や歴史を学ぶことで、各地の事情をより深く理解できること、現地の人々と交流する機会があることなどは、ピースボートの旅ならではの醍醐味です。

寄港地の中には、一般のツアーや個人旅行では訪問しにくい観光地もあります。例えば、南太平洋のイースター島(現地語名ラパ・ヌイ)。日本から飛行機で片道30時間以上かかる場所ですが、ピースボートの旅ではここに立ち寄り、小型船に乗り換えて島に上陸するという経験をすることができます。

世界を見て歩き、「日本の課題に取り組む」と決めた

ピースボートの活動はそもそも、「世界の国々を訪ね、国際的な諸問題について自ら考える機会を持つ」という目的で始まったものです。「よその国を実際に訪ねると、その国で暮らす人にとって何が一番大切か、今どういった問題を抱えているのかといったことを、身近に感じることができるようになります。私の場合、世界の国を見て回ることで、もっと日本のことを知りたい、日本の持つ課題に取り組みたいと考えるようになりました。そこで、帰国後は日本に残ってピースボートのスタッフとして働くようになったのです。それまではまた海外で仕事をしようと考えていたので、まさに人生の方向を大きく変えた経験でした」。

今は英語のほかにスペイン語も勉強し、スペイン語で通訳ができるだけの力をつけることを目標としているそうです。

「人と違うこと」が大きな強みになる

松本さんは、ピースボート通訳ボランティアの仕事の大きな魅力の一つが、「チームで働くこと」だと考えています。「通訳ボランティアのチームには、大学を終えたばかり、転職先を検討中、退職してやりがいのある経験を探している人など、さまざまなメンバーがいます。中国人や韓国人など、外国人のボランティア参加者も来ています。そういった多様なバックグラウンドを持つ人々と約100日間船の中で緊密に連携を取って働くという機会は、なかなか得られるものではありません」。

船旅での通訳という初めての経験でも、仲間と一緒に取り組み、お互いにフォローし合うことができます。1人1人が異なるバックグラウンドを持つチームで仕事をすることで、互いに刺激を与え合い、約100日間の旅を終えるころには、人として大きく成長することができるのです。「自分には合わないかも?という迷いがある人こそ、ぜひ応募してみてください。通訳ボランティアのチームでは、多様性が大事。“人と違う”ということが、大きな強みとなるのです」と、松本さんは教えてくれました。

8万人以上が参加してきた「ピースボート」とは?

1983年に日本で設立された国際NGO。国際交流を目的とする地球一周の船旅を提供、これまでに100以上のクルーズを実施し、のべ8万人が参加して世界で200以上の港を訪れました。1回約100日の船旅には、20以上の寄港地が含まれます。寄港地では観光プログラムのほか現地NGOとの交流を実施。また、船上でもさまざまな講座やワークショップ、セミナーが開催されており、歴史や文化、社会問題について学んだり自分の趣味を深めたりすることができます。

ただ今、地球一周船旅で通訳ボランティアを募集中!

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ピースボートでは現在、通ボランティアを募集しています。

●今後の出航予定 ピースボート世界一周クルーズ
●ご興味ある方は、ぜひ、詳細を公式サイトでご確認ください!

写真画像提供:©︎2020 PEACE BOAT, Liyuan Xiao
取材・制作:株式会社REGION

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