英語を教えて早30年、癒やし系でいながら熱い指導が人気の久保聖一先生による英文法講義です。学校の授業とは全く違うアプローチで話題を呼んでいる『1回読んだら忘れない中学英語』(KADOKAWA)のエッセンスをぎゅっと詰め込んだ連載。前回に引き続き、今回も時制をテーマにお届け。進行形と現在完了形をキャラクター化していきましょう。
進行形は「落ちかけの葉っぱ」、現在完了形は「絵巻物のカエル」
進行形といえば、「〈be動詞+-ing〉で『している』と訳しましょう」。そんな説明が定番ですね。私の授業では、定型的な解説から掘り下げてネイティブが持つ進行形の感覚をつかめるようにしていきます。
学校では教えてくれない進行形の感覚
- 未完了=何かの途中だ
- 臨場感=変化や動きが感じられる
- 一時的な変化=ずっと続くわけではない
この感覚をうまく説明してくれるのが「落ちかけの葉っぱ」です。
木々が色づいてきた時期に散歩をしていたら、上からひらひらと葉っぱが落ちて宙を舞っている。そんなシーンを想像してください。
- 落ちてきているが、まだ地面についていない(未完了)
- ずっと同じ位置にいるのではなく、ひらひらと下に向かっている(臨場感)
- いつかは地面に着地する(舞っているのは一時的)
どうでしょうか。「落ちている葉っぱ」は進行形の感覚をうまく説明してくれますね。
この状況を英語にすると次のようになります。
The leaf is falling.
葉が宙を舞って落ちている。
Sam is studying Japanese in his room.
サムは部屋で日本語を勉強している。
こちらの例文であれば、次のように説明できます。
- 今サムは勉強の真っ最中で終わっていない(未完了)
- 手を動かして何か書きながら、読みながら・・・(臨場感)
- いつかはやめて他のことをする(一時的)
過去を振り返る現在完了形
次は中学英語の鬼門である現在完了形です。これは〈have+過去分詞〉の形ですね。現在完了形のイメージは、ずばり「グルグルと続く絵巻物の中のカエル」です。
なぜカエルかって? 下のイラストの「今」の部分で、カエルが後ろを見て過去を振り返っていることに注目してください。今(現在)から過去を振り返るのが現在完了形なのです。
さらに、現在完了形は、過去のある時点から現在までを線で結んでいるような感覚です。大切なのは、起点はいつでも今(現在)ということ。もっと正確にいうと、現在というよりは現状を表します。現在完了形は「現状完了形」なのです。
完了形の3つの用法
①「完了」「結果」用法
I have finished my homework.
私は宿題を終えた[現状はね、私は宿題を終えた状態なんだ]。
これは「宿題が終わった(have finished)状態」を「今持っている(have)」と考え、過去の宿題が終わったときから今がつながっている感覚で捉えます。
もっというと、「終わった〜!」ということが現在の感情にまで影響します。したがって、達成感やホットな気持ちまでも表せるのです。
これを仮にI finished my homework.と過去形にすると、単に過去の出来事を述べているだけ。話し手の視点は現在に向いていません。
②「経験」用法
I have climbed Mt. Fuji three times.
私はこれまでに3回富士山に登ったことがある。
経験用法は「今までに◯回〜したことがある」といった文のことです。下の絵巻物の通り、「今までのカエルの人生を今を起点に考えると、3回富士山に登ったことがあるよ」ということを伝えます。
③「継続」用法
I have had a cold for two weeks.
私は2週間風邪をひいている。
これは「2週間前に風邪をひいて、ずっと治らないまま、今でも不調」であることを伝えます。
前回の記事でお伝えした「切り離し過去」を覚えていますか。
I caught a cold a week ago.
私は1週間前に風邪をひいた。
こちらはイラストが示すように、過去と現在が切り離されていて、今元気なのかどうか全く分からないというお話をしました。
「過去と現在をハサミで分断する過去形」、「絵巻物の中で過去と現在がつながっている現在完了形」と対照的に認識すると理解しやすいですよ。
まとめ
ここまで2回にわたり時制をキャラクター化して紹介してきました。
- 現在形は「石」
- 過去形は「一匹狼」
- 進行形は「落ちかけの葉っぱ」
- 現在完了形は「絵巻物のカエル」
以上4つの時制をイラストとセットで脳裏に焼き付けておきましょう。つかみどころがなくて分かりにくい時制が、理解しやすい親しみのある存在になるはずです。
オススメの本
久保聖一(くぼ せいいち)
筑波大学人文学類言語学科卒業。塾経営を通じて、また予備校や塾の講師として、30年以上にわたり英語教育に携わる。「ABC…のアルファベットは読めるけれど、makeなど英単語は発音できない」レベルの生徒を1年後には偏差値60の大学に合格させるなど、これまで多くの英語嫌いを英語好きに変えてきた。著書に『1回読んだら忘れない中学英語』(KADOKAWA)、『英語感覚が理屈でわかる英文法』(ベレ出版)、『中学3年間の英単語がイラストで覚えられる本』(KADOKAWA)などがある。
『1回読んだら忘れない中学英語』Twitter:https://twitter.com/chuugakueigo
記事構成:余田志保(つばめパブリッシング)
イラスト:田島ミノリ