世界160カ国で実施され700万人が受験しているTOEIC(R) L&R テスト。日本以外の国ではどんな風にテストが行われているのでしょうか?今回は、韓国で受験した方にお話を聞いてみました!
英語学習アドバイザーの玉木さんが登場!
こんにちは!上智大学で英語学習アドバイザーをしている玉木史惠です。
TOEIC L&Rテストを受験するために、韓国ソウルまで行ってきました。
テスト前日の夜にソウルに到着し、翌日午前10時開始のテストを受験。ランチを食べ、TOEICの書籍をお土産に買って帰るという、1泊2日のとても楽しいTOEIC受験旅行でした!
TOEIC講師として日本では毎回受験
2002年1月27日第89回公開テストの初受験から2018年4月8日のテストまで、80回以上の公開テストを受験しました。
過去5年間は、毎回公開テストに申し込み、受験し続けています。公開テストを受験し続けるのは、TOEICの学習法やスコアアップに関して学習者に適切なアドバイスをするためと、より良い内容のTOEIC講座を提供するためです。講師自らが受験し続けて最新の出題傾向を把握しなければ、受講生にとって有益な内容の授業をすることはできないと思っています。
このように、日本での受験経験はかなり豊富ですが、海外で受験したのは2017年1月8日の韓国公開テストが初めてでした。
韓国でTOEICを受験した理由
韓国で受験をした理由は3つあります。
1つ目は、韓国出身の大学生が日本で公開テストを受験する際に、注意しなければならない点をアドバイスしたかったからです。
私が勤務する大学では、さまざまな国籍の学生が学んでいます。TOEIC L&R講座参加者にも韓国出身の学生がいます。講座参加者とは個別に面談し、英語力を上げてスコアを伸ばすためのアドバイスをしています。
韓国出身の学生が日本でTOEICを受験する際の注意点もアドバイスできれば、不要な心配をすることなくテストで英語力を最大限発揮できます。
2つ目は、日本の平均スコアより約100点も平均スコアが上回る、韓国の公開テストを実際に受験してみたかったからです。
日本で受験しても、韓国で受験しても、ETSが作成するテストの難易度は同じはず。問題の難易度以外のいろいろな要因が、平均スコアの差を生んでいます。
英語教育の違いや、受験者層の違いもあるでしょう。もうひとつ、受験環境の違いも考えられます。受験環境の違いを知るためには、自ら受験するのが一番確実だと思ったからです。
3つ目は、旅行が好きだからです。
家族や友人と旅行するのも好きですが、1人で旅行するのも好きです。旅に出て、自分が見たいものを見、食べたいものを食べ、買いたいものを買うのは私のストレス発散法です。
友人のサポートで受験が可能に
受験したいと思っていても、韓国語を理解することができない私は申し込むことすらできず、諦めかけていました。
そのとき、友人の相澤俊幸さんが、受験手続きから受験後までサポートすると申し出てくれました。『TOEICR L&Rテスト 直前の技術』の共著者の1人である相澤さんは、韓国の公開テストを一番多く受験している日本人です。
外国人が韓国でTOEIC受験を申し込むには?
韓国で公開テストを実施している団体は、YBMです。受験の申し込みはYBMのサイトで行います。
YBM 申込サイト
https://appexam.ybmnet.co.kr/toeic/receipt/receipt.asp
申し込みの前に、外国人が必ずしなければならないことがあります。
韓国在住の外国人が受験の申し込みをする際は、韓国政府発行の外国人登録番号をサイトで入力します。
旅行者の場合はこの登録番号を持っていないので、YBMに電話をするか直接出向いて、外国人登録番号に代わる番号を発行してもらわなければなりません。番号取得に必要な情報は、パスポートと一致する氏名、生年月日、性別の3点で、取得費用はかかりません。
私の場合は、相澤さんがYBMに行き、番号を取得してくれました。
番号を取得したら、YBMの受験サイトからオンラインで申し込みをします。このとき、デジタルの証明写真を送ります。この写真がテスト結果のスコアシートに印刷されます。プリントした写真を提出したり、試験会場に持参したりする必要はありません。
受験を希望する会場を選択することができ、受験料(約5,000円)はクレジットカードで支払うことができます。
申し込みが完了すると、受験票がメールで送られてきます。YBMのサイトにログインして受験票を見ることもできます。
驚かれるかもしれませんが、このオンラインでの受験申し込みは受験日の3日前まで可能です!
ここまで来ればひと安心。メールで送られてきた受験票を印刷してホテルを予約し、航空券を購入して出発に備えました。
いよいよ!韓国でのTOEIC受験
試験会場で無料プレゼント!?
試験会場は、金浦国際空港から歩ける距離にある高校でした。
集合時間の少し前に会場の敷地内に入ると、机の上に水のペットボトルをたくさん並べて配っている人がいました。後日、韓国出身の学生から聞いたところ、TOEIC対策を教えている塾が、水や鉛筆を無料で配布しているということです。無料で配っていることを知らなかったので、もらい損ねてしまいました。
会場建物の入り口に、受験者の名前と指定教室が書かれた貼り紙がありました。アルファベットで書かれた名前は相澤さんと私の名前だけ。他の名前は全てハングルで書かれていたので、外国人受験者は私たち2人だけだったと思います。
相澤さんと私は、別々の教室に指定されていました。日本の公開テストでは、受験する部屋の入口で受験票と身分証明書を見せて受付を済ませますが、それに相当するものはなかったですね。
指定された教室の入り口に貼られた座席表を見て、座る席に着きます。
教室は縦に5座席、横に5座席の25人教室で、私は黒板に向かって左から2列目の後ろから2番目の席でした。
韓国の解答用紙はここが違う
ここで、韓国の公開テストの解答用紙についてお話ししましょう。
韓国の公開テストの解答用紙は、DATA SHEET(アンケートをマークする面で、日本の公開テストの解答用紙A面)と、ANSWER SHEET(テストの解答をマークする面で、日本の公開テストの解答用紙B面)です。
DATA SHEETのアンケートの項目は全てハングルで記載されており、姓をハングルで記入します。
ANSWER SHEETには、受験番号やサインを記入し、姓をハングルとアルファベットで、姓名を日本語とハングルで記入します。ANSWER SHEETの左下には、ハングルで印刷された文を、ハングルで書き写す欄がありました。
試験官から写すように言われて、分からぬままに書き写しました。写していたら字が大きくなって枠からはみ出しそうになりました。
てっきり、「不正行為をしません」という誓いだと思っていましたが、後でハングルが分かる人に聞いたら次のようになっているということです。
まさか筆跡鑑定だったとは。ハングルの読み書きができない私にとっては、英語以外のこうした部分がかなり大変なことでした。
あらかじめ相澤さんに、解答用紙の書き方のお手本を作ってもらい、試験会場ではそのお手本を見ながら解答用紙への記入やマークをすることにしていました。そうでなかったら、とても受験できなかったと思います。
テスト直前ものんびりした雰囲気
「集合時間の9時20分には、受験者全員が着席しなければならない」という厳しい雰囲気はなく、9時50分近くに教室に入ってきても注意されないのんびりした感じでした。
教室内のほとんどの受験者は大学生くらいの男性で、参考書を読んでいる受験者もいましたが、ピリピリした様子ではなく、全体が穏やかで静かな雰囲気でした。
机の上には、鉛筆(シャープペンシル)、消しゴム、受験票、パスポート(韓国人受験者は何らかの身分証明書)を置きます。
私は腕時計を使いましたが、目覚まし時計を置いている受験者や、水のペットボトルを置いている受験者もいました。
9時半頃、解答用紙が女性の試験監督から配られたので、相澤さんに作ってもらったお手本を見ながら、氏名やアンケートを記入しました。
試験監督はその女性1人だけで、お手本を見ながら記入していても注意されることはまったくありませんでした。
監督は、顔写真付きの出欠簿と照合して出欠と身分の確認をしていました。確認すると、バーコードのシール(受験番号、生年月日、名前が印刷されている)を解答用紙のDATA SHEETに貼っていました。
音量チェックが始まった!
さて、いよいよリスニングの音量チェックの放送が始まりました。
日本の公開テストでは、リスニングの問題をCDプレーヤーで流すこともありますが、この会場では校内放送用のスピーカーで流していました。
音量チェック用の英文、“Listening test. In the Listening test, ... Do not write your answers in your test book.”、という部分が連続して3回流されました。
携帯電話は回収される
女性監督が韓国語で何か言うと、黒板に向かって一番左の列に着席している受験者が1人ずつ立って前に行き、座席数分のポケットが縫い付けてある布に、携帯電話を入れていました。
私も周りの様子を見て、同じようにしました。全員が携帯電話を入れ終わると、監督はクルクルと布を丸めて片付けました。
問題用紙の配り方も日本とは違う!
10時頃に問題用紙が配られました。
最前列に座っている5人が列の人数分の問題用紙を受け取り、自分の分を取ったら残りの分を後ろの人に渡すという配り方です。
問題用紙には、日本の公開テストの問題用紙に貼ってある冊子を閉じておくための青いシールはありません。
問題用紙を受け取ると、受験者は問題用紙の中をすぐに見始めます。落丁や乱丁のチェックをしていたのかもしれません。
解答用紙に解答をマークすることはできませんが、この時間を使って、リーディングセクションの問題を解くことは可能です。このように、問題用紙の配布開始時間にしろ、配布方法にしろ、ゆるやかな雰囲気で、韓国語が分からなくても全く緊張しませんでした。
リスニングテスト中はエアコン停止
10時5分頃にテストが始まりました。
リスニングセクションのテストが始まると、エアコンが止まりました。リスニングの音声がエアコンの音で妨げられないようにする配慮だと思います。
1月の韓国はとても寒いのですが、教室はそれまでに暖かくなっていましたし、レッグウォーマーやひざ掛けを用意していたので、寒さについては困りませんでした。
リスニングセクションが終了するとエアコンのスイッチが再び入れられました。
テスト終了前にアナウンスが!
続いてリーディングに進み、もうすぐテスト時間が終わるときのことです。
テスト終了10分前と5分前に、突然、校内放送用スピーカーから韓国語でアナウンスがありました。
多分、終了10分前と5分前を受験者に伝える内容だと思います。終了時刻にも、校内放送用スピーカーから韓国語でテスト終了(おそらく)が告げられました。
試験監督が韓国語で何か言うと、いちばん後ろの席に座っていた受験者が、自分の列の人の解答用紙と問題用紙を回収して監督に渡しました。
受験者が問題用紙と解答用紙の回収をするのも、日本の公開テストとは違う点です。
テスト結果が出るのは半月後
受験してから半月後に、YBMに行ってテストのスコアシートを受け取ることができます。
私は、相澤さんにYBMに行ってもらいました。相澤さんは、私のパスポートのコピーと受験票を係員に見せ、代理人受領の用紙に必要事項を記入してスコアシートを受け取ったそうです。
まとめ
韓国語の読み書きができないと、テストの申し込みからスコアシートの受け取りまで、サポートなしでの受験は難しいと思います。相澤さんのおかげで受験することができ、本当に感謝しています。
受験の目的も果たせました。韓国で受験した直後に、「韓国での受験経験はあるが、次回の公開テストを日本で受験することにした」という韓国出身の学生から相談を受け、適切なアドバイスができました。
韓国で受験していなければアドバイスすることはできませんでした。また、問題をじっくり読んで解いて問題そのものを吟味し、日本とはさまざまな点で異なる韓国の公開テストを実体験することができました。
羽田空港からわずか2時間半で金浦国際空港に到着し、1泊2日でTOEICを受験する旅は、旅行としても楽しいものでした。
機会があれば、またぜひ海外で受験したいと思っています。
玉木史惠(たまき ふみえ)
上智大学英語学習アドバイザー。テンプル大学大学院にて英語教授法(TESOL)の教育学修士号取得。20年近くにわたり100以上の企業・大学・官公庁で1万人以上の日本人学習者に英語指導をしてきた。英語科教員免許状と英語学習アドバイザープロフェショナルの資格を持ち、英語学習法、TOEIC®をはじめとする各種試験対策、スピーキングとライティングを含むコースまで幅広く担当。日本人学習者にとって有益な内容を効率よく指導することを心がけている。TOEIC®990点、英検1級。共著に『 頂上制覇 TOEIC(R)テスト 究極の技術 トリプル模試 』(研究社)がある。