英語学習サイト「Hapa 英会話」を主宰するジュン・セニサックさんは、大人気のブログやポッドキャスト、YouTube 動画などを通じて英語学習者をサポートしています。そんなセニサックさんに、アメリカで育った子供時代のこと、日本に滞在したときのこと、さらには7月に発売になったばかりの新刊『ネイティブが毎日使ってる 万能英会話フレーズ101』のことなどを伺います。
日米の文化に触れて育った子供時代
日本人の母とアメリカ人の父の下でアメリカ、カリフォルニアに育ったジュン・セニサックさんは、小学校4年までは日本人学校に通い、その後、現地の学校に転校しました。少年時代を通じて日米双方の言葉や文化に触れて育ったセニサックさんは、当時を振り返って次のように話します。
“When you’re a kid, you don’t really know what an American culture is. You don’t really know what Japanese culture is. But as you get older, you start realizing that there’s parts where you are taking from your mom’s side, and there’s parts where you’re taking from your dad’s side. So, that’s probably been the most interesting part growing up.”
子供のときは、アメリカの文化が何であるか、日本の文化が何であるかをよく理解していないんです。でも、成長するにつれて、母の側から影響を受けている部分、父の側から影響を受けている部分に気づき始めます。成長する中で、恐らくそこが最も興味深い部分でした。
日本人学校から現地の学校に転校したセニサックさんは、次第に自分のアイデンティティーが日本人からアメリカ人に移るのを自覚します。日本語も次第に苦手になり、母と日本語で会話することも難しくなったと言います。そこで大学時代に、自身のバックグラウンドである日本を体験するために1年間、東京の一橋大学に留学しました。留学生活ではカルチャーショックの連続。特に、留学最後の3カ月に所属したバスケットボール部で経験した「先輩と後輩」の関係は、とても印象に残っていることの一つだそうです。
“I didn’t know how to interact with these younger kids. Because here in the United States, it doesn’t matter if you’re older, younger. You treat everybody pretty much the same.”
[年上の生徒とのやり取りはあまり問題なかったのですが年下の子たちとどのように接したらよいのか分かりませんでした。というのも、アメリカでは、年上か年下かは関係ありません。どんな人とも大体同じように接しますから。
国際交流員として日本の田舎で学んだこと
留学期間を終え、日本のことをもっと知りたいと思ったセニサックさんは、カリフォルニアの大学を卒業した後に再来日します。JETプログラムの国際交流員として派遣されたのは、それまで名前を聞いたこともなかった石川県の内灘町。田んぼに囲まれビルもコンビニもない静かな小さな町には、大都市とは全く異なる視点や生き方が色濃く残っていました。
“You know, when you live in LA, or when you live in Tokyo, it’s about becoming successful and making a lot of money and, you know, living a busy life. In a small town like Uchinada, your outlook in life, or your perspective is completely different.”
東京に住んだり、ロサンゼルスに住んでいると、それは成功や、お金を稼ぐことを意味したり、忙しい生活を送ることを意味します。ですが、そのような小さな町では、人の人生観、人の物の見方が全く異なります。
セニサックさんを家族の一員のように迎えてくれる内灘町はセニサックさんの第二の故郷となり、そこでの経験と出会った人々とのつながりは、新たな人生観への気付きになったといいます。
“I am forever grateful to the people of Uchinada. I always talk about the town of Uchinada in my YouTube videos and podcasts, but it really holds a special place in my heart. And it really shaped the way I view life and think when I do everyday things.”
内灘の人たちには心から感謝しています。YouTube 動画やポッドキャストで、私はいつも内灘の町について話すのですが、内灘は私の心の中の特別な場所を占めています。人生の見方や日常的なことの考え方を形作ったとも言えます。
「生徒のため」から始まったウェブサイト
セニサックさんは2011年に、両親が運営していた英会話学校の姉妹校を開設しました。35 年以上にわたり英会話スクールを経営していた両親を見て育ったセニサックさんは、「自身で英会話スクールを持つことは自然な流れだった」と語りますが、開設当初は生徒集めにとても苦労していたそうです。
そんな中、自身のスクールの生徒たちに復習教材として使ってもらうため、空き時間に投稿し始めたブログ「Hapa 英会話」(現在は英語学習サイト)が、徐々に日本に暮らす英語学習者たちの目にも留まるようになりました。
“From there, just naturally, the Hapa Eikaiwa blog started growing. So I got lucky. I think that’s all I can say. I was just doing the right thing at the right time.”
そしてそこから自然と、Hapa 英会話のブログは成長し始めました。私は幸運だったのです。言えるのはそれだけだと思います。適切なタイミングで適切なことを行っていたということです。
今や累計ダウンロード5000万回以上という実績と人気を誇るポッドキャストも、元々はアメリカ人同士のカジュアルな会話に付いていけないという生徒からのリクエストに応じて制作した音声教材でした。同僚との自然な会話を録音してレッスンで使っていましたが、授業外でも学習できるようにとポッドキャストとして公開したところ、ブログと同様に人気が出たといいます。
“All I did was to create something to help my students at my school learn. And luckily, the blog, the podcast and the YouTube all attracted people outside of my school.”
私は、自分の生徒たちが学ぶ手助けとなるものを作っただけなのです。幸運なことにブログも、ポッドキャストやYouTube動画のすべてが、学校の外の人たちに人気となりました。
大事なのは「相手を理解する」こと
「日本人は英語に関して多くの知識を持ち合わせている一方で、英語を話すことに苦手意識を持ち、それが会話よりも勉強にばかり注力するループに繋がっているように見える」と言うセニサックさん。日本人学習者に最も必要なことは、自分のコンフォートゾーンから飛び出して、他の人、初めて会う人に英語で話しかけてみること。完璧な英語を話そうとする必要はなく、相手とのコミュニケーションを大事にするべきだと強調します。
“When you’re talking to someone, the focus should never be on yourself. The focus should always be on the other person. You should spend all of your energy listening to what that other person is saying. And don’t even worry about yourself because communicating is not about you. It’s about understanding the other person.
誰かと話すとき、フォーカスは決してあなた自身に当たるべきではありません。常に相手に当てられるべきなのです。その人の言うことを聞くことに、あなたはエネルギーのすべてを費やすべきです。自分自身のことを心配するのはやめましょう、というのもコミュニケーションとはあなたのことではないからです。それは相手を理解することなのです。
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取材・構成:知夏七未