夏といえば海!海といえばヘミングウェイ!というわけで、ヘミングウェイの短編小説を素材に英文法を学ぶ本『ヘミングウェイで学ぶ英文法』が出版されました。カクテルを味わいながら、英語を学ぶのもおつなもの。どんな本なのか、早速チェックしてみましょう!
- 作者: 倉林秀男、河田英介
- 出版社: アスク
- 発売日: 2019/05/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
軽くおさらい。ヘミングウェイとは?
アーネスト・ミラー・ヘミングウェイは、20世紀のアメリカを代表する小説家です。『日はまた昇る』『誰がために鐘は鳴る』『老人と海』など、多くの名作を残しました。釣りや闘牛、ボクシングを好むマッチョなライフスタイルで、ハードボイルド文学の原点とされる一方、猫好きという一面もあります。
平易な語彙やシンプルな文体で知られていますが、その表現技法にはかなりの工夫がなされており、本書によれば、それを支えているものが文法 なのだとか。
「随所にヘミングウェイが仕組んだ文法的な手掛かりをもとにして、物語の謎を一緒に解いていきましょう!」というのが本書の狙い。ではその3つのポイントを見ていきましょう。
【ポイント1】ヘミングウェイの短編を読み切れる!
本書には、ヘミングウェイの短編小説が6編掲載されています。短いものは1500語程度、長いものでも2500語程度なので、無理なく読み切ることができ、気分はすっきり。「読み切れた!」という喜びを味わえるので、モチベーションも上がります。
また、英文を朗読した音声ファイルを、無料でダウンロードできるのもうれしいところ。耳から楽しみたい人、英語の発音を確認した人は、ぜひ活用してください。
安心 ">【ポイント2】和訳があるから初心者も 安心
掲載されている6つの作品は、それぞれ和訳付き。本書では、 「和訳先渡し方式」として、 先に 和訳を読み、物語の内容を 把握 してから英文を読むことを勧めています 。あらすじが分かっていれば、多少英語が難しくても読み進めることができそう。これもうれしい配慮ですね。
もちろん、先入観なく英語を味わいたいという中・上級者は、英文から読み始めてもいいでしょう。和訳は、そのあとで答え合わせとして使ってください。
【ポイント3】すっきり腑に落ちる文法解説
ヘミングウェイの小説は、英文としては簡単なものが多く、ついさらっと読み進めてしまいますが、その裏には文法上見逃せないポイントがあります。
そして、この文法上のポイントをとても分かりやすく解説しているのが、本書のもう一つの特徴です。
The Sea Change (天変地異)という作品を例に見てみましょう。
舞台は、夏の終わりのパリ。カフェの片隅で、一組の男女が話しています。よく日焼けし楽しいバカンスを過ごしたあとのようですが、会話は怪しい雲行きに。
どうやら女性には、新たに好きな人ができたようです。
“All right ,” said the man. “What about it?”中学生にも分かる簡単な英文です。でも、can’t と won’t の違いを明確に理解していれば、この文章をもっと深く味わうことができます。本書では次のように解説しています。“ No ,” said the girl, “I can’t.”
“You mean you won’t.”
“I can’t,” said the girl.
女性が用いている can’t は「能力的にできない」「やりたくない」と思っていることを表しているのに対し、男性の won’t は「(本当はできるはずなのに)自分の意志でやるつもりがないんだ」という意味を表しています。この会話は小説の冒頭なので、ここまで読んだだけでは二人が何について話しているのかは分かりません。しかし、「できない」という女性に対し、「やればできるのにそのつもりがないんだ」という男性。二人の気持ちが完全にすれ違っていることが分かりますね。
本書では、かなり細かいところまで文法を解説してくれ、それがヘミングウェイの表現を支えていることがよく分かります。
英語が得意ですらすら読めるという人も、文法解説を読んでからもう一度読んでみると、新たな発見があるかもしれません 。
まとめ
英語を習得するには文法の知識が欠かせません。しかし、暗記や穴埋め問題のイメージが強い文法学習は、つい後回しにしがちです。大人になってまで、受験勉強みたいなことをしたくないという人も多いかもしれません。
その点、本書なら、ヘミングウェイの短編を味わいながら、英文法を自然に復習することができます。リラックスして、作品の世界を楽しんでみてください。
- 作者: 倉林秀男、河田英介
- 出版社: アスク
- 発売日: 2019/05/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
文:尾野七青子
都内某所で働く初老の元OLにしてフリーライター。ヘミングウェイが好んだカクテル、ダイキリを飲むと出世するらしいですよ。お試しあれ。
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。