小学校での「英語必修化」とともに必ず発生するであろう、お子さんからの素朴な疑問。「どうして英語は……なの?」に、あなたは答えられますか?昔習ったはずの英文法、その内容を「子どもにも説明しやすいようにわかりやすく」大竹先生と一緒に復習しましょう!
形容詞って何だっけ?
「バッグ」や「財布」など身の回りには多くの「名詞」がありますが、「バッグ」ひとつをとってもその数はあまりにも多く、ときに他の人の持ち物と区別しなくてはなりません。例えば、忘れ物を駅やデパートの窓口に取りに行くときです。こういう場面では、自分が忘れた物がどんな色や形をしているのか説明しなくてはなりません。
「黒い、大きめの革のバッグで、ショルダータイプです」
このようにバッグの特徴を説明するときに活躍するのが、「形容詞」です。「黒い」「大きい」「革の」といった語があることで、他のバッグと区別することができるようになりますね。 「形容詞」は「名詞」がどんな姿かたちをしているのか、どんな状態にあるのかを伝えてくれる語 なのです。
bigってどれくらい大きいの?
人や物の大きさを表す形容詞はたくさんありますが、big(大きい)とsmall(小さい)はみなさん知っているでしょう。形容詞は名詞の前に付いて a big house(大きな家)となることもあれば、That house is big!(あの家、大きい!)のように be 動詞と一緒に使うこともありました。どちらも house がどのくらいの大きさなのかを説明してくれていますね。
big ってどれくらい大きいの?
「どれくらい」と聞かれても、「とにかく大きいときに使うんだ」としか答えようがありません。当たり前のことですが、a big house が普通の家より大きいことはよくわかります。しかし、それはどの程度大きいことを表しているのでしょうか。一体どの大きさから big を使うのか。一度気になるとどうしてもその境界線が知りたくなってくるものです。
今回は、動物を使って考えてみることにしましょう。
① a big mouse
② a small elephant
ここで重要なのは「個人の印象」です。つまり、 具体的に 何メートル以上が big で、何キログラム以上が heavy だという決まりはなく、 形容詞はあくまでも私たちの感覚によって使い分けられている ということです。こう聞くと当然のことのように感じますが、こういった「曖昧さ」が英語学習のストレスになることもあるので注意が必要ですね。
英語を学習していると似たような意味の語や表現によく出合います。そういうとき、わたしたちはどうしても違いや境界線にこだわってしまいがちですが、あまり気にすることはありません。なぜなら、この形容詞の例にも現れているとおり、 言語は曖昧 だからです。
I have many books.(本、たくさん持ってるんだよ)と小学生が言えば、数十冊くらいかなと想像しますが、大学の教授が同じことを言えばきっと部屋の壁を埋め尽くすような蔵書を考えるのではないでしょうか。場合によっては、I have only a few books.(本はほんの少ししかないんですよ)と言っておきながら、家に大きな書庫があるなんてこともあり得ます。
誰かから事情聴取されているわけではありませんので、 大きさや数量の表現は自由に使ってかまわない のです。
お子さんにはこんな風に答えてみてはどうでしょうか。
big はたしかに「大きい」っていう意味なんだけど、何メートル以上とかはっきり決まっていないんだ。日本語と同じで、自分が思っているよりも「大きい」と感じたら big を使えばいいんだよ。どんなに「大きいアリ」でもせいぜい数センチしかないでしょ?
じゃあ、数字を使えばちゃんと大きさが伝わるってこと?
big や a little などの形容詞が、使う人の「印象」で 判断 されることはわかりました。ところが日常生活では、自分の印象だけでざっくりとした大きさや量を伝えているだけでは困ることがあります。例えば、おつかいをお願いするときです。「玉ねぎをたくさん買って来て」と曖昧に言ったが最後、必要以上に大量の玉ねぎを買ってきてしまうかもしれません。こういう伝達ミスを避けるために、わたしたちは「数字」を使うことになります。
「数字」は正確です。I want you to buy three onions. と言えば、「玉ねぎを3つ買ってきて欲しい」と必要な量を伝えることができます。a や an も数字と同じで「1つ」の意味を持っていますから、Do you have a pen? を聞けば、「どれでもいいんだけど、ペンを1本貸して欲しい」というメッセージが伝わるはずです。many や big のように曖昧な形容詞とは大きな違いですね。
じゃあ、数字を使えばちゃんと大きさが伝わるってこと?
そのとおりです。数字は私たちを裏切りません。Tokyo Tower is 333 meters high. と言えば、間違いなく東京タワーが333メートルであることが伝わりますし、How much is this?(いくらですか)と値段を聞けば、It's 5,000 yen.(5,000円です)と正確な値段を教えてくれます。It’s not so expensive.(そんなに高くないですよ)と曖昧に答える店員さんはそういないでしょう。
しかし、本当に数字はいつも正確な数量を伝えてくれるのでしょうか。先ほども言いましたが、言語は曖昧です。実は数字にも曖昧な使い方がたくさんあるのです。
① Wait a minute, please.
② Thanks a million!
繰り返しになりますが、言語はとても曖昧です。 数字は正確な大きさや量を示すこともあれば、あえて極端な数字を使うことで物事を「誇張」することもできる のです。日本語の「万が一」という表現も同じで、本当に1万分の1の確率で何かが起こるというわけではないですし、「ハリセンボン」という魚のトゲの数は数えてみないとわかりません。
正確に数字で伝えようとすると、かえってややこしくなることもあります。みなさんは more than ~(?以上)という表現を知っていますか。日本語で「10以上」と言えば当然10を含むことになりますが、英語の more than ten は厳密には「11以上」を表します。自分の英語学習歴が「10年以上であること」を正確に伝えたいあまりに、I have been studying English for more than nine years and 364 days. と言うことが、いかに滑稽に聞こえるかは容易に想像できるでしょう。日本語でも英語でも、大体の数を示しているのであれば厳密さは無視するのが普通です。単純に more than ten years と言って問題はありません。
もちろん、どうしても誤解されたくないときには次のような表現もあります。
ten or more years:10年 以上必要だと感じたときがチャンスだと思って、伝えたいことが正確に伝わる表現を辞書などで探して自分のものにしていきましょう。
at least ten years: 少なくとも 10年
お子さんには、こう答えてみるのはいかがでしょうか。
数字を使えば正確に伝わるよ。でも、わざと大きな数や小さな数を言ったりして出来事を大げさにしてみることもあるから、正確さにこだわりすぎなくていいんだよ。
形容詞クイズに挑戦!
曖昧な意味を持つ形容詞は big や many など数量を表すものだけではありません。今回は「見た目」だけでは 判断 できない形容詞の使い方についてクイズで学びましょう。
Q1.カレー(curry)が食べづらい理由は?
お昼ご飯をみんなで食べていますが、 同僚 は自分が頼んだカレー(curry)が食べづらそうです。一体どうしてでしょうか。セリフから読み取ってみましょう。
Q2.これは何色?
色に関する問題です。次の①?③はそれぞれ何色でしょうか。
【Q1の答え】カレーが熱すぎる、または辛すぎる 可能性 が考えられます。
hot という語を聞くと、どうしても「熱い、暑い」のだと思いがちですが、実は「辛い」という意味もあります。辛いものを食べると口の中が熱く感じるのは英語も日本語も同じなのですね。そういえば、cool は「冷たい、涼しい」の他に「カッコいい」という意味を持つのでした。
hot がどちらの意味を表すかは、説明する名詞によって変わります。curryやsausage(ソーセージ)のように、もともと熱い食べ物にあえて hot がつけられているときは「辛い」であると思った方がよいでしょう。
【Q2の答え】「①温室」はgreen(緑)という語が使われていますが、ビニールで囲われているので透明ですね。「②黒板」はblack(黒)に近い色ですが、基本的には濃い緑色をしているのではないでしょうか。アメリカ合衆国の大統領が住む「③ホワイトハウス」はその名のごとくwhite(白)です。いずれの語もa green house、a black board 、the White Houseのように、色を表す語を強く読むのが特徴です。
a green house 、a black board 、a white house のように名詞を強く読むようにすると、「緑の家」、「黒い板」、「白い家」という意味になり、「色」が文字のとおりに伝わることも知っておくといいですね。
green や black が「色」を表さないのはとても不思議に感じてしまいますが、これは日本語でも同じです。最近は「ブラック企業」という言葉があまりにも有名になりましたが、こういった企業がすべて、黒塗りのビルにオフィスを構えているわけではありません。もしそうだとしたら、企業選びも少しは楽になるかもしれませんが……。
ホワイトハウス内にある接客間 Green Room は名前のとおりの色をしている
まとめ
いかがでしたか。今回は「形容詞」についておさらいをしました。形容詞に限ったことではありませんが、 語の意味は「個人の印象」や「話の流れ」によって大きく変化 します。正確に、できれば完璧に学習したい気持ちも大切ですが、言語には「曖昧さ」が付き物です。細かいことはあまり気にせず、楽しく学習を続けていきましょう。
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文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立厚木高等学校教諭。1984年横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーブン・キング。
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